糖尿病の診断基準
診断基準のフローチャート
血糖値・HbA1c:糖尿病型の基準値
血糖値(以下のいずれか)
空腹時≧126mg/dL
75gOGTT 2時間値≧200mg/dL
随時血糖値≧200mg/dL
HbA1c ≧ 6.5%
↓
1型糖尿病
若年発症、非肥満が多い。抗GAD抗体が陽性(約70%)。膵β細胞が破壊されインスリン分泌が枯渇しているのでインスリン投与が必要。
劇症型、急性発症型、緩徐進行型の発症形式がある。
1型が疑われる高度なDMや、急激な発症では専門科へ紹介すること。
2型糖尿病
中高年発症、肥満が多い。進行するとやせることも。
詳細は以下解説。
糖尿病の合併症・定期検査
小血管合併症
糖尿病性網膜症
→糖尿病を診断したら眼科へ紹介。特に血糖高値の方で血糖値を急激に下げると失明リスクあるため、早期に受診を。
糖尿病性神経障害
→四肢末端から徐々に両側性に進行(グローブ&ストッキング)。フットケア
糖尿病性腎症
→血清クレアチニン、尿中アルブミンを定期的に測定
大血管合併症
虚血性心疾患
→心電図や負荷心電図。糖尿病では胸部症状出にくいので積極的に冠動脈CTなども検討。
脳梗塞
→TIAなど疑わしいときも積極的に検査を行う。
PAD/ASO
HbA1cの目標
日本糖尿病学会の示す目標HbA1cは以下の通り。
HbA1c(%) | |
---|---|
血糖正常化を目指す際の目標 | 6.0未満 |
合併症予防のための目標 | 7.0未満 |
治療強化が困難な場合 | 8.0未満 |
高齢者については以下を使用↓
患者の特徴・健康状態 | カテゴリー1 ①認知機能正常 かつ ②ADL自立 | カテゴリー2 ①軽度認知障害〜軽度認知症 または ②手段的ADL低下、基本的ADL自立 | カテゴリー3 ①中等度以上の認知症 または ②基本的ADL低下 または ③多くの併存疾患や機能障害 |
||
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重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬など)の使用 | なし | 7.0%未満 | 7.0%未満 | 8.0%未満 | |
あり | 65~75歳 7.5%未満 (下限6.5%) | 75歳~ 8.0%未満 (下限7.0%) | 8.0%未満 (下限7.0%) | 8.5%未満 (下限7.5%) |
糖尿病・耐糖能異常への生活指導
食事療法
栄養指導:
可能なだけ管理栄養士による栄養指導を、本人(+調理する人)に受けてもらう。
体重:
自宅で簡単に測定できる指標なので毎日測定をすすめる。
目標体重は以下の通り。
- 65歳未満:身長(m)×身長(m)×22
- 65~74歳:身長(m)×身長(m)×22~25
- 75歳以上:身長(m)×身長(m)×22~25
※75歳以上は現体重に基づき、フレイル、(基本的)ADL低下、併発症、体組成、身長の短縮、摂食状況や代謝状態の評価を踏まえ、適宜判断する。
食事:
- 間食や甘い飲み物は極力摂取しない。
- ビールなども糖質多い。
- 炭水化物・動物性脂肪を減らす。減塩。
- 食事全体の量を減らす(お茶碗や皿を小さくする)など。
運動療法
ややきつい程度の有酸素運動(会話可能なレベル)を週に3回以上おこない、150分以上/週を目標とする。
レジスタンス運動(筋トレ)を週に2~3回行う。
※網膜症のリスクがある場合は失明リスクになるため、先に眼科受診すること。
糖尿病の治療薬
治療薬の選択
インスリン分泌促進薬は低血糖リスクや膵臓機能の低下につながるので他の薬をまず考える。
ジェネリックあり、効果もあるのでビグアナイド系が第一選択。
肥満患者や心不全患者などは腎保護作用や心保護作用などあり、SGLTー2阻害剤を選択してもいい。
メトホルミン
ビグアナイド系。インスリン抵抗性改善薬。
第一選択薬。
ただし、重度腎障害(eGFR<30)や重度肝障害、高度の心肺機能低下などでは禁忌。
例)メトホルミン(メトグルコ®︎)250mg 2T2×朝夕食後で開始
副作用が出ないか見ながら少しずつ増量。最大2250mg3×。
飲み方は2×より3×の方が効果的。
SGLTー2阻害薬
糖を尿へ排出して高血糖を治療する。
心保護や腎保護など様々な効果も指摘されている。
注意点:
・膀胱炎など尿路感染症のリスク上昇(←尿糖)
・脱水(←尿浸透圧上昇)
これらを予防するためにも水分をこまめにとること。
例)イプラグリフロジン(スーグラ®︎)50mg1T1×朝食後
DPP-4阻害薬
低血糖リスクが少なく、使いやすい薬剤。
例)トラゼンタ5mg1T1×朝食後
αーGI
食後高血糖の治療に有用。
低血糖リスク少ない。
食前内服。消化器症状に
例)ミグリトール(セイブル®︎)50mg 3T3×毎食直前
SU剤、グリニド
インスリン分泌促進。低血糖リスク高く、注意が必要。
グリニドの方が即効性で持続時間も短い。
SU剤例)グリメピリド(アマリール®︎)0.5mg1T1×朝食後
グリニド例)レパグリニド(シュアポスト®︎)0.25mg 3T3×毎食直前
GLP−1受容体作動薬
上記薬剤を複数併用しても目標HbA1cに達しない場合に使用。
DPP-4阻害薬を使用している場合は同薬を中止して変更。
例)トルリシティアテオス注0.75mg 週1回 皮下注
例)ビクトーザ0.3→0.6→0.9mg 毎日朝食直前 皮下注
インスリン製剤
持続型や速攻型、超速攻型などがある。
低血糖リスクなどもあり、専門科に紹介の上開始が望ましい。
クリニックなどでどうしても外来で始める場合は、持続型の1回打ちなどで開始するが、必ず血糖の自己測定を行ってもらうこと。
糖尿病教育入院
糖尿病は生活習慣指導、合併症、治療など指導内容が多岐にわたる。
糖尿病の治療では患者教育が最も重要なので、最初に教育入院をした方が長期的に見るとよい。