閉塞性動脈硬化症(ASO)診療の流れ
- ABI<0.9、1.4<ABIなら②へ
- CTアンギオや造影MRA
- 薬物療法、運動療法、血行再建術を検討
下肢末梢閉塞性動脈疾患(PAD)の重症度分類(Fontaine分類)
Ⅰ度:無症状
Ⅱ度:間欠性跛行
Ⅲ度:安静時疼痛
Ⅳ度:潰瘍・壊死
下肢PADの鑑別
閉塞性動脈硬化症(ASO)
50歳以上で動脈硬化疾患リスクのある患者に発症。
Burger病(TAO)
30代・ヘビースモーカー・男性に好発。足趾末端の潰瘍が多い。上肢も罹患。
膠原病関連の血管病変
Raynoaud現象で発症。潰瘍・壊死が多い。
PADの検査
ABI
ABI=足関節収縮期血圧/左右のうち高い方の上腕収縮期血圧
0.90以下:主幹動脈の狭窄・閉塞を示唆
0.9~1.0:ボーダーライン
1.0~1.2:正常
1.4~:高度の動脈石灰化を示唆
※ABI0.90未満をASOと定義する研究が多い。
SPP(皮膚還流圧)
重症下肢虚血の重症度評価に用いる。SPP30~40mmHg未満は創傷治癒の可能性低い。
PADの画像診断
MDCTによるCTアンギオや造影MRAで行う。
腎機能低下患者では非造影MRAなどを考慮。
エコーではプラークの性状や血流などが把握できる。
ASOのリスクファクター管理
高血圧
降圧目標は140/90mmHg未満(可能なら130/80mmHg未満)。
薬剤は患者に応じて選択で可。
例)テルミサルタン(ミカルディス®︎)40mg1T1×朝食後
例)アムロジピン(アムロジン®︎)5mg1T1×朝食後
例)ビソプロロールフマル酸塩(メインテート®︎)2.5mg1T1×朝食後
脂質異常症
LDLーC<120mg/dLをめざして、スタチン投与を行う(1,2)。
HDLーC<40mg/dL、TG≧150mg/dLではフィブラート(3)やEPA(4,5)投与を考慮。
例1)プラバスタチン(メバロチン®︎)10mg1T1×夕食後
例2)ロスバスタチン(クレストール®︎)2.5mg1T1×夕食後
例3)フェノフィブラート80mg2T1×夕食後
例4)ロトリガ2g1×夕食後(先発品のみ)
例5)イコサペント酸エチル600mg3P3×毎食直後
※ロトリガとイコサペント酸エチルは抗血栓作用があるので出血に注意。(内視鏡や手術など)
糖尿病
糖尿病患者は末梢神経障害により間欠性跛行の痛みを感じにくいので注意を要する。
例)メトホルミン(メトグルコ®︎)250mg2T2×朝夕食後
例)シダグリプチン(ジャヌビア®︎)50mg1T1×朝食後
例)ダパグリフロジン(フォシーガ®︎)5mg1T1×朝食後
抗血小板薬
症候生ASO患者にはシロスタゾールを投与。
ただし、心不全がある場合はアスピリンやクロピドグレルを投与する。
例)シロスタゾール(プレタール®︎)100mg2T2×朝夕食後
例)アスピリン(バイアスピリン®︎)100mg1T1×朝食後
例)クロピドグレル(プラビックス®︎)75mg1T1×朝食後
禁煙
禁煙でASOの発症リスク低下する。
運動
痛みがでる程度まで歩行し、痛みが中等度になれば休憩、繰り返し行う運動が最も効果的。
血行再建術
症候性ASOで運動療法や薬物療法で症状が改善しない場合や、すでに症状が強い場合などは血行再建術を行う。
血管内治療(EVT)やバイパス術などの外科的治療が行われるが、病変の部位や形状(TASC分類)などで判断される。