循環器

高血圧|二次性高血圧の鑑別や生活指導、降圧薬の選択

血圧の目標値

血圧の目標は以下の通り。(高血圧診療ガイド2020より一部改変して引用)

~74歳診察室血圧 (mmHg)家庭血圧 (mmHg)
目標<130/80<125/75
ただし、以下の病態では右の値を目標とする。
・脳血管障害 (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)
・慢性腎臓病(糖尿病・タンパク尿なし)
<140/90(*)<135/85(*)
(*)130/80や125/75mmHg未満への降圧は個別に判断。

75歳~診察室血圧 (mmHg)家庭血圧 (mmHg)
目標<140/90<135/85
ただし、以下の病態では右の値を目標とする。 ・脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) ・冠動脈疾患 ・慢性腎臓病(タンパク尿あり) ・糖尿病 ・抗血栓薬内服忍容性あれば 130/80未満忍容性あれば 125/75未満

二次性高血圧の除外

二次性高血圧は全高血圧患者の10%以上に認められ、特に原発性アルドステロン症は全高血圧の5~10%と言われている。

難治性、若年発症や、以下所見を認める場合などは二次性高血圧の除外を行う。

二次性高血圧症状・所見検査
甲状腺機能亢進頻脈、体重減少、体重減少、発汗などTSH、FT4
原発性アルドステロン症低K血症、夜間多尿、副腎腫瘍レニン、アルドステロン(※1)
腎血管性全身性の動脈硬化、RAS系降圧薬で腎機能悪化腎動脈エコー、造影CT
褐色細胞腫頻脈、血圧の変動、発汗、高血糖随時尿中メタネフリン・ノルメタネフリンの合計>0.5mg/gCreで紹介
Cuhing症候群中心性肥満、満月様顔貌、糖尿病、早期発症の骨粗鬆症早朝血中ACTH・コルチゾール
睡眠時無呼吸症候群いびき、傾眠、肥満、早朝高血圧終夜SpO2

(※1)PAC(血中アルドステロン濃度)、PRA(血中レニン活性)を早朝5分以上座位で安静にしてから測定し、APR(PAC(pg/mL)/PAR(ng/mL/h)比)を測定。APR>200がスクリーニング陽性の基準。

生活習慣指導

食事療法

  • 減塩:6g/日未満を目標。塩分早見表なども使用して指導。
  • カリウム:降圧作用が期待できる。K制限の必要なCKD患者以外では野菜・果物を勧める。果物は糖質に注意。

運動療法

  • 有酸素運動:ややきついが会話しながらできる程度の強度で週3日以上行う。
  • レジスタンス運動:有酸素運動に組み合わせると効果的。

ほか生活指導

  • 減量:肥満患者では体重1kgで1mmHgほど下がるとされている。
  • 節酒:飲酒は一時的に血圧が下がるが、長期的には高血圧をきたし、早朝高血圧などの要因となる。
  • 禁煙:喫煙は動脈硬化のリスクとなり、高血圧をきたす。

降圧薬

高度な高血圧では降圧目標に数ヶ月で到達するくらいのスピードで調整する。

降圧薬の選択

疾患に応じて、以下の表に従い薬を使用する。

降圧薬開始時点で、少量から降圧薬を開始するので、適切な血圧にするために降圧薬は増やしていくこと、数種類を組み合わせる可能性が高いこと、などを話しておくとその後の調整がしやすい。


Ca拮抗薬ARB/ACE阻害薬サイアザイド系利尿薬β遮断薬
左室肥大

LVEFの低下した心不全
●(※1)
頻脈●(非DHPP系)

狭心症

●(※2)
心筋梗塞後

蛋白尿・微量アルブミン尿を有するCKD


上記以外

カルシウム拮抗薬

使いやすい薬剤で頻用される。

例)アムロジピン(アムロジン®︎ノルバスク®︎)2.5mg1T1×朝食後

ARB

糸球体血圧を下げるので蛋白尿症例で蛋白尿減少や、CKD患者で腎保護に働くが、効きすぎて糸球体血圧が下がりすぎると逆に腎機能を悪化させる可能性もあるので、そういう患者では少量で開始しCre値の変動を見ながら増量すること。

妊婦や授乳婦では禁忌

例)テルミサルタン(ミカルディス®︎)20mg1T1×朝食後

ACE阻害薬

ARBに類似。

副作用に空咳が有名。空咳を利用して誤嚥性肺炎の防止目的に使用することもある。

例)エナラプリル(レニベース®︎)5mg1T1×朝食後

利尿薬

Na再吸収を抑制、利尿して降圧。腎機能に応じて以下を使い分ける。

減塩が困難な症例や、浮腫などをきたした症例に有用。

夏場の脱水には注意。

eGFR30mL/分/1.73m2以上:サイアザイド系

eGFR30mL/分/1.73m2未満:ループ利尿薬

サイアザイド系例)トリクロルメチアジド(フルイトラン®︎)1mg1T1×朝食後

ループ利尿薬例)アゾセミド(ダイアート®︎)30mg1T1×朝食後

β遮断薬

心収縮力と心拍数をへらして降圧。

突然中止すると狭心症や高血圧発作が生じることがあるので中止の際は徐々に行う。

開始する時も徐々に増量する。特に慢性心不全患者では極少量から開始すること。

例)ビソプロロールフマル酸塩(メインテート®︎)2.5mg1T1×朝食後
※慢性心不全では0.625mgで開始。

降圧薬の調整

降圧薬は同じ薬を増量するよりも他の薬を併用する方が降圧効果は高い。

患者は薬の数が増えることに抵抗感があることが多く、合剤を積極的に使用する。

また、血圧が冬に上がり、夏に下がる傾向の患者もおり、季節に応じて調整することもある。

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