循環器

心筋梗塞|症状・検査/診断・治療

急性冠症候群診断の流れ

・心電図でST上昇あり
→再潅流療法
(下壁梗塞では右室梗塞を疑いV4R誘導を記録する)

・心電図でST上昇なし
→AMIが疑われる場合は5~10分おきに心電図を再検する
→高感度心筋トロポニン等測
→上昇あれば再潅流療法、なければ1~3時間後に再検。

急性心筋梗塞の診断

心電図ST上昇

解剖学的に隣接する2つ以上の誘導で有意とされる上昇量を記す。
(J点で計測。左室肥大や左脚ブロックのない場合に適応)

V2−3誘導:
 40歳以上の男性→2.0mm以上のST上昇
 40歳未満の男性→2.5mm以上のST上昇
 女性→1.5mm以上のST上昇

V2−3誘導以外:
 1.0mm以上

心電図の経時的変化

直後~数時間:ST上昇・T波増高

数時間~12時間:異常Q波出現

2日~1週間:T波陰性化(冠性T波)

1~3ヶ月:STは正常化、冠性T波残存

3ヶ月~1年:異常Q波

バイオマーカー

CK(CKーMB):
STEMI発症後3~8時間で上昇し、10~24時間で最大となり、3~6日後に正常化する。

高感度心筋トロポニン:
発症後2時間以内でも陽性化し、心筋特異度も高い。ただし、心不全、腎不全、心筋炎、急性肺血栓塞栓症、敗血症など虚血以外の心筋障害でも上昇するため注意を要する。また、心筋トロポニン陰性でもACSを否定はできない。

ACS疑いの対応ーMONAー

①酸素投与

以前は酸素を全例投与していたが、低酸素のない患者には効果がなく、低酸素血症の患者に投与、となっている。

②硝酸薬投与

胸部症状を認める場合は硝酸薬を投与する。

例)ニトロペン舌下錠1T
例)ミオコールスプレー1回吸入

※収縮期血圧<90mmHg、通常より30mmHg以上低下、HR<50、HR>100、右室梗塞を合併した下壁梗塞では投与すべきでない。

③モルヒネ

硝酸薬投与でも胸痛持続する場合は、心筋酸素消費量を増加させるためモルヒネで鎮痛する。血管拡張作用もあるため血圧低下に注意。ほかに、呼吸抑制や嘔吐なども注意。

必要時は鎮静も併用するが、さらに血圧低下・呼吸抑制に注意。

例)塩酸モルヒネ2~4mg静注し、効果不十分であれば5~15分ごとに2~8mgずつ追加する。

④抗血小板薬

アスピリン喘息などなければアスピリンを早期に投与するほど死亡率が低下する。ステント留置も考え、チエノピリジン系を併用する。血中濃度を早急に有効域に上昇させるために両材ローディングする。

例)アスピリン(バイアスピリン®︎)100mg2~3T1×
例)プラスグレル(エフィエント®︎)20mg1T1×

⑤PPI

抗血小板薬2剤併用(DAPT)を行うため、消化管出血既往など出血リスクが高い場合はPPIを併用する。

例)タケキャブ20mg1T1×

再潅流療法

PCI可能施設への搬送に時間を要する場合は血栓溶解療法を検討するが、中心はPCIである。

PCIのdoor to balloon time(来院から再潅流までの時間)は90分以内が許容時間であり、できれば60分以内を目標とすべきである。

心筋梗塞後の合併症

不整脈

発症後に心室細動・心室頻拍・心房細動、房室ブロックなどの不整脈をきたすことがあるためモニター管理が必要。VF・VTでは速やかに電気的除細動を行う。それぞれの不整脈に対して抗凝固療法や抗不整脈薬の投与や、ペースメーカー留置などを行う。

心不全

血行動態・全身状態をある程度安定させたのち速やかに再潅流療法を行う。さらに急性心不全に準じて治療を行う。

そのほかの合併症

再梗塞、急性心膜炎、脳卒中、深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症などがあり状態変化に注意する。

二次予防

①抗血栓薬

DAPT(抗血小板薬2剤併用)の期間は以前よりも短縮されているが、病態等により期間を設定しているため、施行医にDAPT終了時期を確認すること。

また、抗凝固薬も併用し3剤内服する症例もあるが、より短期間にすべき、とされている。

②β遮断薬

低血圧や重篤な房室ブロックなどなければβ遮断薬を投与する(特にLVEF≦40%の症例)。

例)ビソプロロール(メインテート®︎)0.625mg1T1×朝食後
1~2週あけて0.625mgずつ増量。

③レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系阻害薬

LVEF≦40%、心不全徴候、糖尿病、高血圧などを有する症例にはACE阻害薬/ARBを投与する。

例)テルミサルタン(ミカルディス®︎)20mg1T1×朝食後

④脂質代謝異常改善薬

ストロングスタチンを忍容可能な最大用量で投与し、LDLーC<70mg/dLを目指す。スタチンで到達できない場合はエゼチミブ・PCSKー9阻害薬などの併用投与を考慮する。

例)ロスバスタチン5mg1T1×夕食後

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