循環器

肺血栓塞栓症(PTE)・深部静脈血栓症(DVT)|症状・検査/診断・治療

肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症

深部静脈血栓症(DVT)が主に下肢静脈に発生し、肺に飛んで塞栓すると肺血栓塞栓症(PTE)となる。

DVTでは、患側肢の疼痛・腫脹などを認め、PTEIJINでは呼吸困難・胸痛・失神・発熱・咳嗽・冷汗・動悸などを認める。

DVTのリスクは複数あり、予防が重要。

・年齢 ≥ 60歳

・DVTまたはPTEの既往

・肥満

・妊娠・産後

・長期臥床

・手術、外傷・骨折

・悪性腫瘍

・敗血症

・喫煙

・中心静脈カテーテル留置、カテーテル検査

・他、血液凝固能亢進状態など

急性肺血栓塞栓症の診断

①Wellsスコア(PTE用)とDダイマー

Wellsスコア(PTE用)を用いて検査前確率を検討し、対応する。

臨床的特徴点数
PTEあるいはDVTの既往1
最近の手術あるいは長期臥床1
1
DVTの臨床的徴候1
心拍数>1001
PTE以外の可能性が低い1
血痰1
<0~1点>確率低い→Dダイマー測定し、正常であれば除外、上昇あれば画像検査行う
<2点以上>確率高い→画像検査

②スクリーニング

胸部Xp:心拡大、肺野透過性亢進

心電図:洞性頻脈、S1Q3T3、愛客ブロック、ST低下、肺性Pなど

動脈血液ガス:低酸素血症、低二酸化炭素血症、呼吸性アルカローシス

③画像検査

造影CTが第一選択だが、造影剤が使えないなどの場合は肺血流シンチグラフィを行う。

④重症度判断:簡易PESIスコア

治療方針の判定に使用するためスコアをとる。


点数
年齢>80歳1
1
慢性心不全・慢性肺疾患1
脈拍数>110回/分1
収縮期血圧<100mmHg1
SpO2<90%1
30日間死亡リスク 0点:1.0% 1点以上:10.9%

急性肺血栓塞栓症の治療

①共通ー抗凝固療法

急性PTEと診断され次第、抗凝固療法を開始。

出血リスクが高いなどの場合は下大静脈フィルター留置を考慮する。


ワルファリンリバーロキサバンエドキサバンアピキサバン
商品名ワーファリンイグザレルトリクシアナエリキュース
開始方法PT-INR1.5~2.5になるまで、ヘパリンNaを投与(80単位/kg静注後、18単位/kg/時程度で持続静注。APTTを6時間ごとに測定し対象値1.5~2.5倍にコントロール)。15mg 2T2×を3週間。ヘパリンNaを5~12日間先に投与(80単位/kg静注後、18単位/kg/時程度で持続静注。APTTを6時間ごとに測定し対象値1.5~2.5倍にコントロール)。10mg2T2×を1週間。
維持期PT-INR 1.5~2.5で調整。15mg1T1×。ヘパリン中止後4±1時間から内服開始。 60mg1T1×。 体重60kg以下、CCr15~50、P糖蛋白阻害作用を有する薬剤を併用している場合は 30mg1T1×。5mg2T2×
腎機能
CCr<30mL/分で禁忌CCr<15mL/分で禁忌CCr<30mL/分で禁忌

②ショックあり

抗凝固療法+血栓溶解療法を行う。

また、外科的またはカテーテル的血栓除去術を検討する。

③ショックなし

(i)簡易PESI ≧1点で、トロポニンやBNPの上昇(A)と右室機能障害(B)の両方あり
 →抗凝固療法を開始し、悪化に備える。

(ii)簡易PESI ≧ 1点で、上記A/Bどちらかのみ陽性かいずれも陰性
簡易PESI=0点
 →抗凝固療法を開始し経過をみる。

深部静脈血栓症の診断

①Wellsスコア(DVT用)とDダイマー

Wellsスコア(DVT用)を用いて検査前確率を検討し、対応する。

臨床的特徴点数
活動性の癌(6ヶ月以内治療や緩和的治療含む)1
完全麻痺、ふかんぜn麻痺あるいは最近のギプス装着による固定1
臥床安静3日以上または12週以内の全身あるいは部分麻酔を伴う手術1
下肢深部静脈分布に沿った圧痛1
下肢全体の腫脹1
腓腹部(脛骨粗面の10cm下方)の左右差>3cm1
症状のある歌詞の圧痕性浮腫1
表在静脈の側副血行路の発達(静脈瘤ではない)1
DVTの既往1
DVTと同じくらい可能性のある他の診断がある-2
<0~2点>低・中確率 → Dダイマー測定し正常であればDVT除外。上昇あれば画像検査。
<3点以上>高確率→画像検査

②画像検査

エコー検査が第一選択。

臨床的な疑いが高いのにエコーで血栓を認めない場合は造影CTや MRV検査で確認する。

③急性DVTの場合

家族性・再発性・若年性ではプロテインCやプロテインS、アンチトロンビンなどの凝固制御蛋白の異常がないか確認すること。

深部静脈血栓症の治療

①中枢型DVT

膝下静脈から中枢側に発生している場合は排血栓塞栓症に準じた抗凝固療法を行う。

DVTの発生誘因に応じて抗凝固療法を以下の期間行う。

・可逆的な誘因がある:3ヶ月間
・可逆的な誘因がない:少なくとも3ヶ月間
・再発例:より長期間

②末梢型DVT

膝下静脈より抹消側に発生している場合は、画一的な抗凝固療法を行わない。

以下いずれかの場合に開始する。

1.PTE高リスク症例には抗凝固療法を行う。

2.抗凝固療法を行わずに7~14日後にエコーで中枢伸展がある場合は中枢型のアプローチを行う。

③DVTの理学療法

抗凝固療法をおこなっていれば、早期に歩行をおこなってもPTE発症は増加せず、DVTの伸展減少・疼痛改善がみられる。

また、弾性ストッキングも歌詞症状の改善に有効である。圧迫圧が高いとコンプライアンスが低下するので、足関節部で18mmHgから開始し、30mmHg以上をめざす。

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