メッケル憩室とは?
メッケル憩室は小腸の先天性の真性憩室で、主に卵黄管(妊娠初期に卵黄嚢と小腸をつなぐ管。妊娠7週頃に閉鎖。)の遺残によって形成される。
通常は回盲弁から約40~100cmの回腸の腸間膜付着対側に位置し、真性憩室のため壁は粘膜、筋層、漿膜の3層で構成される。
メッケル憩室には異所性組織として胃粘膜や膵組織が迷入することがあり、これが合併症を引き起こす要因となる。
メッケル憩室は若年者の原因不明の消化管出血や腸閉塞、または繰り返す腸重積が見られる際に疑うべき疾患である。
メッケル憩室の疫学
- 発生頻度:全人口の約2%
- 男女差:男性の有病率は女性の3〜5倍
- 有症状率:多くは無症状。有症状率は約4〜6%(2歳までに出現することが多いが若年成人でもありえる)
メッケル憩室の症状と合併症
メッケル憩室は無症状であることが多いが、以下の合併症を起こすと症状が出現する。
消化管出血
原因: 憩室内の異所性胃粘膜や膵臓粘膜が胃酸や膵液を分泌し、隣接する小腸粘膜に潰瘍ができて出血する。
症状: 黒色便・血便、腹痛、脱力感、貧血など。
腸閉塞
原因: 憩室の捻転や腸重積、嵌頓ヘルニア(Littréヘルニア)など。
症状: 嘔吐、腹痛、便秘。
憩室炎
原因: 憩室の炎症や潰瘍、異物閉塞、腫瘍などによる。
症状: 腹痛、発熱。
穿孔
原因: 小腸潰瘍により穿孔する。
症状: 腹痛、発熱。
新生物
種類: 良性腫瘍(平滑筋腫、脂肪腫など)、悪性腫瘍(神経内分泌腫瘍、腺癌など)
症状: 出血、腸閉塞、穿孔などによる症状。
メッケル憩室の検査・診断
画像診断
CTや消化管造影検査がメッケル憩室の存在やその炎症・合併症の確認に有効。
小腸内視鏡検査は、消化管内を直接観察できるため、出血や腫瘍が疑われる場合に有効。
核医学検査
99mTcシンチグラフィ(メッケルシンチ)は、異所性胃粘膜の存在が疑われる場合に特に有効。
99mTcO4-(過テクネチウム酸塩)は胃粘膜細胞に集積するため、メッケル憩室内に胃粘膜細胞がある場合にメッケル憩室を診断することができる。
小児でのメッケル憩室検出の感度は85%、特異性は95%と良好だが、成人では感度62%、特異度9%と大きく低下する。
血管造影・出血シンチグラフィ
メッケル憩室を含む消化管出血で、出血源がはっきりしない場合に行うと出血源を特定できる可能性がある。
血管造影の場合はそのまま塞栓術を行うこともできる。
メッケル憩室の治療
腸閉塞、潰瘍、出血、炎症、穿孔などの合併症が発生した場合は治療が必要となる。
治療法としては外科的切除が基本となる。
出血であればPPI等の制酸薬投与で様子を見ることもあるが、動脈性出血であることも多く、内視鏡的止血術や血管塞栓術も選択肢に入る。