消化管 診断・治療法

上腸間膜動脈閉塞症

上腸間膜動脈閉塞症について

上腸間膜動脈閉塞症は上腸間膜動脈塞栓症と上腸間膜血栓症をあわせた疾患である。

上腸間膜動脈は大動脈からの分岐角が鋭角なため他の血管よりも閉塞しやすいとされている。

リスクとして、動脈硬化が強い症例や心房細動を有する高齢者に多い。

広範囲の腸管で虚血となり、急速に腸管壊死を起こし、致死率が高く、早期診断・早期治療が必要である。

上腸間膜動脈閉塞症の症状・身体所見

上腸間膜動脈が閉塞することで起きるため、「突然」の激しい腹痛で発症する。

悪心・嘔吐を伴うこともある。

発症初期はまだ腸管が壊死していないため、腹部身体所見に乏しく、腹膜刺激聴講を認めないことも多いため、注意が必要である。

上腸間膜動脈閉塞症の検査・診断

血液検査

発症初期は白血球増多など炎症反応上昇を認める。

腸管の壊死が進んでくると、逸脱酵素であるCK、AST、LDHやの上昇や、血液ガスで代謝性アシドーシスや乳酸値増多が出現してくるが、頻回の嘔吐でアルカローシスになることもある。

腹部造影CT

血管内評価を行うためには単純ではなく造影が必要。

上腸間膜動脈の起始部付近に造影剤の欠損を認め、腸管虚血が進行してくると腸管壁の肥厚や造影不良を認める。

さらに腸管壊死が進行してくると、腹腔内フリーエアーや門脈ガス、腸管気腫なども出現する。

血管造影検査

血管造影で血管の閉塞や狭小化が認められ、診断ができる。

また、発症早期であれば、血管内治療をそのまま行える可能性がある。

上腸間膜動脈閉塞症の治療

上腸間膜動脈閉塞症は予後不良であり、IVRや緊急手術など早急の対応が必要。

発症早期で明らかな壊死所見が無い場合はカテーテル下に血栓除去や血栓溶解療法、バルーン拡張やステント留置術などの血管内治療(IVR)を検討できる。

具体的なIVRの適応時間は、閉塞部位によって異なるとされているが、定まった基準はなく、以下の報告を参考にする。

ただし、時間に関わらず、すでに腸管壊死が疑われる場合などは迷わず緊急手術を行うこと。

【IVRの適応時間】

茂木克彦ら:急性上腸間膜動脈閉塞症-閉塞部易と臨床経過について.日腹部救急医会誌1996;16:427-432主幹部~中結腸動脈分岐:5時間以内 中結腸動脈部分岐~回結腸動脈分岐:24~48時間以内 回結腸動脈分岐より末梢:数日以内
宗岡克樹ら:急性上腸間膜動脈閉塞症に対するウロキナーゼ動注療法:2症例の報告.日消外会誌2001;34:495-499主幹部~右結腸動脈分岐部:5時間以内 右結腸動脈分岐部より末梢:12時間以内

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