大腸憩室出血|症状・検査/診断・治療
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大腸憩室出血の特徴
腹痛を伴わない出血(無痛性の血便)であることが多い。
S状結腸や下行結腸の憩室出血では鮮血が多いが(時間がたつと暗赤色になるが)、上行結腸の憩室出血では大量出血でなければ暗赤色になることが多い。
大腸憩室出血の検査・対応
- 下痢有無や腹痛の有無など病歴を確認。
腹痛を伴わない急な血便では憩室出血を疑い検査を行う(下痢や腹痛を伴えば虚血性腸炎や炎症性腸疾患などの腸炎の可能性が高くなり、発熱があれば感染性腸炎などがより疑わしくなる)。
抗凝固薬・抗血小板薬・NSAIDsなどの薬剤使用歴も聴取する(再出血リスクや血栓塞栓症リスクの判断に必要)。 - バイタルサインが不安定であればまず輸液や輸血で安定化を図る
- 上部消化管出血の可能性を除外
上部消化管出血で鮮血に近い暗赤色の下血が出る時は大量出血の可能性がある。
多量の血便ではBUN/Cr比(30以上は上部消化管出血を示唆)を確認する。リスクがある場合や、エコーやCTで胃壁の肥厚を認めるなどあれば先に以下を検討。
・胃管を挿入し血液が引けないか確認(出血していても引けない時があり注意)
・上部消化管内視鏡検査 - 腹部CT
全例では必要ないが出血の原因を下部消化管内視鏡検査の前に絞れるため、有用。
憩室の有無や腸管の壁肥厚などが確認できる。
造影CTが可能であれば腸管の評価がしやすく特に有用。造影剤の血管外漏出(extravasation)は一部(15〜36%)で認められ、陽性例では大腸内視鏡で出血憩室を同定しやすい(最終血便から2時間以内では陽性率が高い傾向があると報告されている)。 - 下部消化管内視鏡検査
憩室出血の疑いであればバイタルサインに気をつけながら、通常の前処置(経口腸管洗浄剤)を行なって、早めに内視鏡検査を行う。
2017年版ガイドラインは24時間以内の施行を提案しているが、その後の検討では早期施行で出血源の同定率は上がるものの再出血は減らないとされ、ルーチンの24時間以内施行は推奨されなくなってきている。ショックバイタル(shock index≧1)や造影CTで血管外漏出を認める例では早期の施行を考える。
内視鏡先端フードやウォータージェットの使用が出血源(SRH)の同定に有用。
憩室出血の治療
憩室出血は70〜90%で自然止血するが、自然止血すると出血源を同定できなくなることが多い(初回大腸内視鏡での出血源〈SRH〉同定率は約31%)。
一方、退院後の再出血率は1年で20〜35%、2年で33〜42%と高い。
①活動性出血、②非出血性露出血管、③除去すると①または②を示す付着凝血塊(SRH:stigmata of recent hemorrhage)を認めた憩室は、無治療では30日以内の再出血率が53〜66%と高い(米国の報告。国内の多施設研究ではSRHを認めて保存的に治療した群の早期再出血は約27%)ため、内視鏡的止血術の適応となる。SRHを同定して内視鏡治療を行った群は、SRHを同定できず保存的に治療した群より早期・晩期の再出血が少なかったと報告されており、SRHを探して止血術を積極的に行う。
止血術は内視鏡的止血術が第一選択。
クリップ法(出血点の血管を直接把持する直達法と、憩室口を閉じる縫縮法がある。直達法のほうが再出血が少ない)や局注法(エピネフリン局注は効果が一時的で、単独では用いない。クリップとの併用でも早期再出血は減らず遅発性穿孔の報告もあり、最近の総説では推奨されていない)などがある。凝固法は筋層を欠く仮性憩室で穿孔の危険があり推奨されない。
近年は憩室をバンドで結紮するバンド結紮術(EBL)が、クリップ法と比べて初回止血率は同等だが早期・晩期の再出血が少なく、動脈塞栓術への移行も少ないとされ、有効性が高い(EBLは大腸憩室出血に対して保険適用あり)。ただし、ステロイド長期使用(膠原病)や維持透析の患者で遅発性穿孔の報告があり(多くは左側結腸)、創傷治癒が遅れる患者では注意する。
内視鏡的に止血困難な場合は血管造影による動脈塞栓術(侵襲が低く、まず考慮する。血管外漏出像を認めない例に塞栓すると腸管虚血の危険が高い)や、手術(動脈塞栓術が施行できない・不成功の場合)が検討される。
大腸憩室出血の予防
- 便秘対策(食物繊維の多い食事、運動、排便習慣、水分摂取など)
- 肥満解消(肥満は大腸憩室出血のリスク因子)
- 節酒
- 禁煙
※喫煙・飲酒と大腸憩室出血の関連は明らかではないとされている(2017年版ガイドライン)。 - 抗血栓薬の見直し
※アスピリンは出血・再出血のリスクを高める。一次予防の低用量アスピリンは中止を検討するが、それ以外の抗血栓薬は一律に中止せず、関連診療科と相談して個別に判断し、止血が確認できたら再開する。 - NSAIDsの減量(可能であれば中止。中止により再出血が減ったとの報告がある)
参考文献
- 日本消化管学会編:大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン.日本消化管学会雑誌 1(Suppl):1-52,2017(PDF)
- 改訂第2版(大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026,南江堂)が2026年2月に刊行されている(本記事では内容未確認)。
- Ichita C, Kishino T, Aoki T, et al:Updated evidence on epidemiology, diagnosis, and treatment for colonic diverticular bleeding. DEN Open 6:e70122,2026(PMC)
- Kobayashi K, Nagata N, et al:Effectiveness and adverse events of endoscopic clipping versus band ligation for colonic diverticular hemorrhage:a large-scale multicenter cohort study(CODE BLUE-J study). Endoscopy 54:735-744,2022(PubMed)
- Gobinet-Suguro M, Nagata N, et al:Treatment strategies for reducing early and late recurrence of colonic diverticular bleeding based on stigmata of recent hemorrhage:a large multicenter study. Gastrointest Endosc 95:1210-1222,2022(PubMed)
- Sato Y, Aoki T, et al:Long-term Risks of Recurrence After Hospital Discharge for Acute Lower Gastrointestinal Bleeding:A Large Nationwide Cohort Study. Clin Gastroenterol Hepatol 21:3258-3269,2023(PubMed)
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