消化管 診断・治療法

非閉塞性腸管虚血症(NOMI)検査・診断・治療

非閉塞性腸管虚血症(NOMI)とは

非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)は、腸間膜血管に気質的な閉塞を認めないにも関わらず、その支配領域の腸管に虚血性病変を発症する疾患とされている。

NOMIは、全身性の血圧低下や循環血漿量減少などの状況下で、血流維持のために分泌されるバソプレシンやアンギオテンシンや、血管収縮薬などによって血管攣縮が原因とされている。

腸管が虚血状態になり壊死をおこす可能性があり、迅速な治療が必要である。

非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の症状・身体所見

突然の腹痛、下痢、血便が典型的な症状であるが、20~30%の症例では腹痛を訴えないともされている。

虚血が進行すると腹膜刺激兆候を認める。

非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の検査・診断

血液検査

発症初期は白血球増多など炎症反応上昇を認める。

腸管の壊死が進んでくると、逸脱酵素であるCK、AST、LDHやの上昇や、血液ガスで代謝性アシドーシスや乳酸値増多が出現してくるが、頻回の嘔吐でアルカローシスになることもある。

血管造影検査

以前からNOMIの診断には血管造影検査がゴールドスタンダードとされている。

上腸間膜動脈の狭小化や不整像、アーケードの攣縮、腸管壁内血管の造影不良、上腸間膜動脈を造影すると大動脈への逆流、といった所見を認める。

腹部造影CT

NOMIは上腸間膜動脈領域に好発し、腸管の虚血や壊死が非連続的かつ分節状に広範囲に分布する。

NOMIでは上腸間膜動脈径が下膵十二指腸動脈分岐部が3.4mm前後、健常例の6.0mm前後と比較して有意に減少していたという報告1があり、最近のCT機器であれば血管造影検査に近い結果を得られるとされている。

また、血管の支配領域にある腸管では、虚血が強ければ造影効果が低下あるいは欠如するが、初期の炎症が強い時期は増強することもある。

再灌流がない場合は、腸管壁が菲薄化していき、腸管壊死を示唆する。

再灌流がある場合は、逆に炎症により腸管壁は肥厚してくる。

腸管壊死が進行してくると、腸管壁内ガス、門脈ガスや、腹水、腹腔内フリーエアーなどを認める場合がある。

非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の治療

NOMIを疑った時点で、可能であれば血管造影検査や動注療法、手術療法がおこなえる病院に搬送が望ましい。

血管拡張薬

血管造影検査・動注療法(IVR)が迅速におこなえる病院では、血管拡張薬の持続動注療法が選択される。

持続動注療法)
塩酸パパベリン30~60mg/時
※アルプロスタジルアルファデクス(プロスタグランジンE1製剤)5~10μgをボーラス投与してから塩酸パパベリンを開始してもいい

上記治療が困難で、搬送も難しい場合は以下の経静脈投与による治療も報告されている。

持続静脈投与療法)
アルプロスタジルアルファデクス 0.01~0.03μg/kg/分

手術療法

NOMIに対する腸切除の絶対適応は腸管壊死をきたした場合であるが、壊死を完全に否定することも難しいため、注意深く観察し、手術のタイミングを逸さないようにする必要がある。

  1. Woodhams R, et al:Usefulness of multi detector-row CT (MDCT) for the diagnosis of non-occlusive mesenteric ischemia (NOMI) : assessment of morphology and diameter of the superior mesenteric artery (SMA) on multi-planner reconstructed (MPR) images. Our J Radiol 2010; 76: 96-201. ↩︎

-消化管, 診断・治療法