非閉塞性腸管虚血症(NOMI)検査・診断・治療
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目次
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)とは
非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)は、腸間膜血管に器質的な閉塞を認めないにもかかわらず、その支配領域の腸管に虚血性病変を発症する疾患である。急性腸間膜虚血(AMI)の約15%を占め、死亡率は約60%と推定されている(ESVS 2025)。
NOMIの主な機序は、有効循環血液量の減少に反応して起こる腸間膜血管の収縮(攣縮)である。心不全による低心拍出、循環血液量減少、ショック、血管収縮薬の使用、腹腔内圧上昇(腹部コンパートメント症候群)などが誘因となる。ショック時の腸間膜血管の選択的な収縮には、主にレニン・アンジオテンシン系が、また一部はバソプレシンが関与するとされる。
リスクの高い状況として、強心薬・昇圧薬や大動脈内バルーンパンピングを要する心原性ショック、心臓手術後、透析(腎代替療法)中・後の循環血液量減少、重症敗血症・ショック、腹腔内圧上昇などが挙げられる。
腸管が虚血状態になり壊死をおこす可能性があり、迅速な治療が必要である。
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の症状・身体所見
NOMIは上記のような重症患者に起こることが多い。腹痛は、塞栓症のような突然の激痛とは限らず、びまん性・間欠的であったり、緩徐に進行したりする。
右側腹部痛に暗赤色〜鮮紅色の血便を伴う場合はNOMIを強く疑う所見とされる。一方、原因不明の腹部膨満や消化管出血が唯一の徴候であることもあり、鎮静下のICU患者では約25%で症状がとらえられないとされる。昇圧薬を要し多臓器障害を伴う重症患者で、腹痛や腹部膨満がみられたらNOMIを疑う。
虚血が進行すると腹膜刺激徴候を認める。
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の検査・診断
血液検査
白血球増多、乳酸値上昇、D-ダイマー上昇などは診断の補助になりうるが、単一の検査で腸管虚血を確定・除外できるものはない。乳酸やD-ダイマーの単回測定で診断を確定・除外することは推奨されない(ESVS 2025)。
乳酸値上昇や代謝性アシドーシスは腸管虚血に特異的な所見ではなく、全身の低灌流と重症度を反映する。CKやトランスアミナーゼ(AST)などの逸脱酵素の上昇も参考になる。
血管造影検査
血管造影検査は、NOMIの診断の歴史的なゴールドスタンダードとされてきた。ただし現在の臨床では、ショック患者にはまず造影CTが行われることが多い(ESVS 2025)。
上腸間膜動脈の複数の分枝起始部の狭小化、腸管枝の拡張と狭小化の交互像(string of sausages sign)、アーケードの攣縮、腸管壁内血管の造影不良、といった所見を認める。上腸間膜動脈造影時の大動脈への造影剤の逆流もNOMIの所見とされ、死亡と相関したとの報告がある。
腹部造影CT
動脈相と門脈相の2相(1mm以下のスライス)で撮影する。ショック患者で、上腸間膜動脈に有意な狭窄や血栓・塞栓がないにもかかわらず、腸管壁の造影不良、小腸壁の肥厚、腸管気腫、門脈ガスを認める場合はNOMIを疑う(ESVS 2025)。
NOMIは主に上腸間膜動脈領域に生じ(大腸では右側結腸が侵されやすい)、腸管の造影効果は不均一な分布を示すことがある。
上腸間膜動脈の狭小化を評価した報告として、NOMI 4例のMPR画像では上腸間膜動脈の平均径が3.4±1.1mmと、対照13例の6.0±1.5mmに比べて有意に細く、MDCTが血管造影と同等に有用である可能性が示された(文献1)。ただし少数例の後ろ向き研究であり、以前のCTと比較できない場合は血管の狭小化を判断しにくい(ESVS 2025)。
また、血管の支配領域にある腸管では、造影効果は低下・欠如から増強まで様々である。
腸管壁の菲薄化(paper thin)は腸管壊死を強く示唆する。
再灌流がある場合は、逆に腸管壁は肥厚してくる。
腸管壊死が進行してくると、腸管壁内ガス、門脈ガスや、腹水、腹腔内フリーエアーなどを認める場合がある。ただし腸管気腫や門脈ガスも壊死の確定的な所見ではない。
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の治療
治療の基本は、原因となる病態の是正である。輸液・心拍出量の最適化によりショックと臓器低灌流を是正する(ESVS 2025、WSES 2022)。可能であれば血管収縮薬を減量・中止し、輸液後も昇圧薬が必要な場合は内臓循環への影響が少ない薬剤を選ぶ(WSES 2022、ESTES 2016)。
NOMIを疑った時点で、可能であれば血管造影検査や動注療法、手術療法がおこなえる病院に搬送が望ましい。
血管拡張薬
血管造影検査・動注療法(IVR)が迅速におこなえる病院では、上腸間膜動脈への血管拡張薬の持続動注療法が考慮される(ESVS 2025:推奨クラスIIb、エビデンスレベルC。ヘパリン化のもとで行う)。薬剤・用量・投与法を比較した研究はなく、確立したレジメンはない。
持続動注療法の例)
塩酸パパベリン
80mgを上腸間膜動脈内にボーラス投与後、30~60mg/時で24~72時間持続動注
ESVS 2017/2025
※パパベリン塩酸塩注の承認用法では、動脈内注射は急性動脈塞栓に対する1回50mgのみであり、NOMIへの持続動注は適応外使用となる。
※PGE1(アルプロスタジル)の動注も用いられる。ESTESガイドライン(2016)では、20μgボーラス後に60~80μg/24時間の持続動注が記載されている(適応外使用)。
血管拡張薬を腸間膜循環に投与すると、全身の低血圧により急変する危険がある。
上記治療が困難で、搬送も難しい場合は以下の経静脈投与による治療も報告されている。
持続静脈投与療法)
PGE1(アルプロスタジル)
0.01~0.03μg/kg/分の持続静注
9例中8例で急性期を乗り切ったとする国内の報告(文献2)。適応外使用
※アルプロスタジルは、プロスタンディン注射用20μgの添付文書では重篤な心不全・肺水腫のある患者と、消化管出血を含む出血中の患者には禁忌(製剤により禁忌の記載は異なるため、使用する製剤の添付文書を確認する)。NOMIではこれらに該当することが多いため、動注・静注とも適応を慎重に判断する。
国内の大規模観察研究では、パパベリンやPGE1による血管拡張療法が院内死亡率と腹部手術の低下と関連していた(文献3)。ただしWSES 2022は、比較的軽症の選ばれた患者集団での結果だと指摘している。
手術療法
腹膜炎、穿孔、全身状態の悪化がみられれば手術を考慮し、壊死腸管は速やかに切除する(WSES 2022)。腸管壊死を完全に否定することは難しいため、注意深く観察し、手術のタイミングを逸さないようにする必要がある。
腹部コンパートメント症候群を合併している場合は、緊急の減圧開腹術が推奨される(ESVS 2025:推奨クラスI)。
参考文献
- Woodhams R, et al. Usefulness of multidetector-row CT (MDCT) for the diagnosis of non-occlusive mesenteric ischemia (NOMI): assessment of morphology and diameter of the superior mesenteric artery (SMA) on multi-planar reconstructed (MPR) images. Eur J Radiol 2010; 76(1): 96-102.
- Mitsuyoshi A, et al. Survival in nonocclusive mesenteric ischemia: early diagnosis by multidetector row computed tomography and early treatment with continuous intravenous high-dose prostaglandin E1. Ann Surg 2007; 246(2): 229-235.
- Takiguchi T, et al. Vasodilator therapy and mortality in nonocclusive mesenteric ischemia: a nationwide observational study. Crit Care Med 2020; 48(5): e356-e361.
- Koelemay MJ, et al. European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2025 Clinical Practice Guidelines on the Management of Diseases of the Mesenteric and Renal Arteries and Veins. Eur J Vasc Endovasc Surg 2025; 70(2): 153-218.
- Björck M, et al. Management of the Diseases of Mesenteric Arteries and Veins: Clinical Practice Guidelines of the European Society of Vascular Surgery (ESVS). Eur J Vasc Endovasc Surg 2017; 53(4): 460-510.
- Bala M, et al. Acute mesenteric ischemia: updated guidelines of the World Society of Emergency Surgery. World J Emerg Surg 2022; 17(1): 54.
- Tilsed JV, et al. ESTES guidelines: acute mesenteric ischaemia. Eur J Trauma Emerg Surg 2016; 42(2): 253-270.
- Reilly PM, et al. The mesenteric hemodynamic response to circulatory shock: an overview. Shock 2001; 15(5): 329-343.
- パパベリン塩酸塩注40mg「日医工」 添付文書(KEGG)
- プロスタンディン注射用20μg 添付文書(KEGG)
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