食道静脈瘤(Varix)|症状・検査/診断・治療
最終更新日:
食道・胃静脈瘤の所見

図は門脈圧亢進症取扱い規約 改訂第3版(2013)に基づく。2022年に第4版が刊行されているが、本記事では第4版の本文は未確認。図中の胃静脈瘤の注のうち、胃体部は「Lg-b」、幽門部は「Lg-a」と記載する(図の「Lc-b」「有門部」は誤記)。発赤所見のRWMは red wale marking(図の「making」は誤記)。
食道静脈瘤の治療
内視鏡的治療適応
出血例や出血既往のある待機例は絶対適応。
予防としてはF2以上、またはF因子に関係なく発赤所見陽性(RC2以上)が積極的な治療適応。
胃静脈瘤は出血予知が確立されておらず、予防的治療は食道静脈瘤より慎重に判断する。胃静脈瘤の予防的治療の適応と考えられているのは、①RC陽性、②静脈瘤上のびらん・潰瘍、③短期間に急速に増大するもの、④F2・F3の緊満したもの、⑤食道静脈瘤治療後に残存・新生した胃静脈瘤。
出血時の対応
肝硬変患者が吐血で来院した場合は、まず急速輸液・輸血、気道確保・酸素投与などでバイタルサインを維持し、循環・呼吸が安定してから緊急内視鏡を行う。Baveno VIIでは、循環動態の安定化を図ったうえで、来院から12時間以内(不安定例は安全に施行可能になり次第)の上部内視鏡が推奨され、意識障害や吐血が続く例では内視鏡前の気管挿管が推奨されている。
輸血は必要に応じて行うが、制限的に行う(Baveno VIIの目標Hbは7〜8 g/dL。心血管疾患、年齢、循環動態、出血の持続も考慮)。
SBチューブはルーチンに入れるものではない。大量出血で内視鏡の視野がとれない場合や、ショックで内視鏡ができない場合にSBチューブ(または胃バルーン)を挿入して一時止血し、12〜24時間以内に内視鏡を再検する。Baveno VIIでは、止血困難例でTIPSなどの確実な治療までのつなぎとしてバルーンタンポナーデまたは自己拡張型金属ステント(SEMS)を用いるとされている(本邦の保険診療・施設事情とは異なる)。
肝硬変患者の上部消化管出血では、入院時から抗菌薬の予防投与を行う(Baveno VII)。
セフトリアキソン(ロセフィン®)
1回1g×1日1回 静注
Baveno VIIでは進行肝硬変、キノロン耐性菌の多い施設、キノロン予防投与中の患者で考慮するとされ、地域の耐性状況に合わせて選ぶ。出血時の予防投与は添付文書の適応外(適応症は感染症の治療)。
血管作動性薬は、Baveno VIIでは静脈瘤出血が疑われた時点で開始し2〜5日間継続するとされ、肝硬変診療ガイドライン2020でも投与が提案されている(弱い推奨)。本邦で「食道静脈瘤出血の緊急処置」の適応をもつのはバソプレシンで、オクトレオチドは適応外。
バソプレシン(ピトレシン®注射液20)
20単位を5%ブドウ糖液など100〜200mLに混和し、0.1〜0.4単位/分で持続静注
添付文書の用法・用量。心電図・血圧・尿量などを頻回に確認する。肝血流量がさらに減少して不可逆性肝不全をきたすおそれがある(添付文書)。
PPIは、Baveno VIIでは内視鏡前に開始した場合、継続する明確な適応がなければ内視鏡後すぐに中止するとされている。静脈瘤治療後の潰瘍からの再出血予防としての短期間投与は、下記の保存的治療②を参照。
保存的治療
①薬物治療は、非選択的βブロッカー(プロプラノロールなど)やカルベジロールが門脈圧低下作用、1次・2次出血予防効果あり。ただし本邦では食道・胃静脈瘤への保険適用はない(適応外)。Baveno VIIでは、再出血予防(2次予防)の第一選択は非選択的βブロッカーまたはカルベジロールとEVLの併用とされている。
②静脈瘤の上にびらん・潰瘍ができると出血するので、静脈瘤治療(EVL・EIS)後の潰瘍からの再出血予防に、PPIなどの酸分泌抑制薬の短期間投与を検討する。肝硬変患者の消化管出血予防一般としての有効性を示すデータはなく、長期投与では特発性細菌性腹膜炎・肝性脳症・CKD悪化との関連が報告されているため漫然と続けない。
食道静脈瘤のフォロー
肝硬変では1年に1回を目安に胃カメラで静脈瘤をチェックすること(ガイドラインで示された間隔ではなく、実臨床での目安)。
Baveno VIIでは、非選択的βブロッカーで代償不全の予防治療を受けている代償性肝硬変ではスクリーニング内視鏡は不要とされ、βブロッカーを使えない代償性肝硬変では肝硬度(TE)20kPa以上または血小板15万/μL以下の場合にスクリーニング内視鏡を行い、内視鏡を省略した例は肝硬度と血小板数を年1回再評価するとされている。2026年8月公表のBaveno VIIIでは一部の診断・予後のカットオフ値が改訂されている(本記事では本文未確認)。
参考文献
- 小原勝敏,豊永 純,國分茂博.食道・胃静脈瘤内視鏡治療ガイドライン.日本消化器内視鏡学会監修.消化器内視鏡ガイドライン 第3版,2006.https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2007/15097/20071220_2sankou2_1.pdf
- 高木忠之,引地拓人,小原勝敏.食道・胃静脈瘤の内視鏡治療.日本消化器内視鏡学会雑誌 2024;66(1):5-15.https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/66/1/66_5/_html/-char/ja
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会編.肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版).南江堂,2020.https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020_re.pdf(追補 最終更新2023年1月17日:https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/AR_kankouhen202404.pdf。静脈瘤の項目に追補なし)
- de Franchis R, et al. Baveno VII – Renewing consensus in portal hypertension. J Hepatol 2022;76(4):959-974. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11090185/
- Baveno VIII Faculty. Baveno VIII – Advancing consensus in portal hypertension. J Hepatol 2026. https://doi.org/10.1016/j.jhep.2026.07.030(要旨のみ確認)
- 日本門脈圧亢進症学会編.門脈圧亢進症取扱い規約 改訂第3版,2013(図の出典)
- ピトレシン注射液20 添付文書(KEGG MEDICUS)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00055860
- サンドスタチン皮下注用 添付文書(KEGG MEDICUS)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00056598
- ロセフィン静注用 添付文書(KEGG MEDICUS)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049429
- インデラル錠 添付文書(KEGG MEDICUS)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062639
- アーチスト錠 添付文書(KEGG MEDICUS)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049146
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