消化管 診断・治療法

腸結核|診断・治療法

腸結核とは

腸結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を飲み込んだり、血行性に伝播するなどして小腸や大腸に到達しておこる感染性腸炎。

肺結核とともに減少傾向だったが、最近増加傾向である。

回盲部を中心に多発潰瘍を形成し、その潰瘍が融合し輪状潰瘍や帯状潰瘍といった特徴的な所見を呈する。治癒瘢痕により狭窄することもある。

感染症法上の取り扱い

腸結核は他の結核菌感染症と同様に、感染症法で二類感染症に分類されるため、診断後ただちに医師は最寄りの保健所長に発生報告を届け出る義務がある。

腸結核の分類

腸結核は原発性と続発性に分類される。

  • 原発性:病変が腸だけ
  • 続発性:他臓器にも病変あり

以前は続発性が大部分だったが、今は原発性がやや多くなっている。

※肺結核を合併している可能性があるので、肺の精査も行うこと。

腸結核の症状

腹痛(特に右下腹部)、下痢、下血、発熱、体重減少、腹部膨満、食欲低下など。

無症状で、便潜血など契機の内視鏡検査で見つかることもある。

腸結核の身体所見

腹部圧痛(特に右下腹部)、眼瞼結膜貧血など。

腸結核の検査•診断

血液検査

炎症反応(CRP、赤沈など)の軽度上昇。

QFT-3GやT-スポット.TBで結核菌感染の補助診断を行う。結核菌感染後、陽性化するまでに8~10週かかるので感染初期と思われる症例では再検も検討する。また、一般的に感度、特異度ともに優れているが、免疫反応による検査なので、免疫抑制薬使用中や高齢者などで免疫能が低下している症例でも偽陰性になり得るので注意を要する。

内視鏡検査

腸結核の典型像は、回盲部や右側結腸の多発する輪状潰瘍や帯状潰瘍であるが、発赤びらんのみの場合や不整形潰瘍をきたすこともある。

潰瘍が治癒して瘢痕形成し、腸管の狭窄や短縮、バウヒン弁開大といった所見がみられる。

生検病理検査

病変部からの内視鏡生検組織で乾酪性肉芽腫が証明されれば確定診断となるが、陽性率は15%程度と低い。

細菌検査

病変部からの内視鏡生検組織の抗酸菌塗沫染色(Ziehl-Neelsen(チール-ニールセン)染色)や、結核菌培養•PCR法で結核菌の証明ができれば確定診断となるが、陽性率は10~48%と低い。

胸部検査

腸結核が肺結核の続発性である可能性があるため、胸部CTなどの画像検査や喀痰検査を行うこと。

腸結核の鑑別診断

回盲部に好発するクローン病、腸管ベーチェット病、NSAIDs起因性腸炎がよく鑑別にあがる。

特に、クローン病や腸管ベーチェット病と診断して治療で免疫抑制を行うと腸結核が悪化する可能性がある。

腸結核の診断

腸結核の確定診断は、病変部組織に乾酪性肉芽腫または結核菌を認めた場合となる。

ただし、確定診断がなかなかできず、他の疾患が除外される時は、診断的治療として治療を開始する場合もある。

腸結核は感染症法で二類感染症に分類されるため、診断後ただちに医師は最寄りの保健所長に発生報告を届け出る義務がある。

腸結核の治療

結核菌の治療経験のある施設での治療が望ましい。

肺結核と同様の標準治療として以下の4剤による多剤併用療法を2ヶ月間行う。

その後、INHとRFPの2剤を4ヶ月間投与する。

肝障害がある場合はPZAなしで9ヶ月間以上の治療を行う。

腸管狭窄や穿孔、腸閉塞穿孔などでは外科手術を検討する。

イソニアジド(INH)(イスコチン®)
主な副作用:肝障害・末梢神経炎・皮膚反応を伴う過敏症

リファンピシン(RFP)(リファジン®)
主な副作用:肝障害・胃腸障害・血小板減少による出血傾向

ピラジナミド(PZA)(ピラマイド®)
主な副作用:肝障害・関節痛・高尿酸血症

エタンブトール(EB)(エブトール®)
主な副作用:視力障害・末梢神経炎・皮疹

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