大腸憩室炎|症状・検査/診断・治療
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大腸憩室炎の特徴(症状・身体所見)
「腹痛+発熱」で疑う。憩室部位に限局した圧痛のほか、嘔気・嘔吐を伴うこともある。
日本人では大腸憩室は右側結腸に多く、年齢とともに左側結腸(S状結腸など)の割合が増える。憩室炎も60歳未満では右側結腸、より高齢では左側結腸に多く、左側結腸憩室炎のほうが合併症を伴いやすく重症化しやすい。
右側結腸憩室炎では急性虫垂炎との鑑別が重要で、身体所見や血液検査だけでは鑑別が不十分なため、画像検査が必要になる。
穿孔することもあるため、腹膜刺激徴候の有無にも注意する。汎発性腹膜炎や膿瘍を合併すると、腹部症状が悪化し、筋性防御や腫瘤を認めることが多い。
※大腸憩室のほとんどは、固有筋層を欠く仮性憩室である。
大腸憩室炎の検査・診断
血液検査:白血球・CRP上昇(赤沈亢進も)。ただし血液検査や身体所見だけで膿瘍・穿孔の合併を完全に否定することは難しい。
画像検査:身体所見・血液検査に加えて、画像検査(CTまたは超音波)を行うことが推奨されている。初期診療では、膿瘍・穿孔・腹膜炎の合併の有無を評価する。
腹部CT:画像診断のゴールドスタンダード。他疾患を除外。憩室があることと、限局性の壁肥厚・周囲の脂肪織濃度上昇、膿瘍の有無と大きさ、腸管外ガス(free air)の有無などを評価する。
腹部エコー:憩室とその周囲の壁肥厚、周囲脂肪織の高エコー化。施設によっては第一選択になりうるが、施設間の格差や再現性に注意する。
大腸憩室炎の治療
①治療方針
膿瘍・穿孔のない憩室炎:抗菌薬の要否は全身状態とリスクで判断する(後述)。炎症反応や発熱などから入院が必要な場合は、食事制限と腸管安静(絶食)を行う。
膿瘍を伴うが腹膜炎が限局している憩室炎:
- 膿瘍がおおよそ3cm以下:抗菌薬投与+腸管安静
- 膿瘍がおおよそ5cm超:上記+超音波あるいはCTガイド下ドレナージ
- 3~5cmの境界サイズ:患者の病態や、ドレナージを実施できる体制を考えて個別に判断する
抗菌薬投与やドレナージで改善しない場合:大腸切除術
汎発性腹膜炎を呈する場合:緊急手術
瘻孔(結腸膀胱瘻など)や、治癒後に通過障害を伴う狭窄を合併した場合:大腸切除術
※膿瘍・穿孔のない憩室炎を繰り返すだけでは、必ずしも手術適応にはならない(免疫不全患者など一部では待機手術を考慮)。
②抗菌薬の考え方
膿瘍・穿孔のない憩室炎では、抗菌薬を投与しなくても合併症や再発率に差がないとするランダム化比較試験がある。WSES 2020は、免疫が正常で全身性炎症所見のない合併症のない憩室炎には抗菌薬を投与しないことを推奨し(1A)、全身性の感染徴候がある例や、免疫不全・高齢・併存疾患のある高リスク例ではグラム陰性桿菌と嫌気性菌をカバーする抗菌薬を提案している。国内の2017年版ガイドラインは「日本人のデータはなく不明であり,現状では抗菌薬投与は許容される」としていたが、改訂第2版(2026年)では膿瘍・穿孔を伴わない憩室炎に抗菌薬を「投与しない」ことが推奨されたと報じられている(推奨の強さや対象の条件は原本で確認を)。免疫低下状態の患者には抗菌薬投与が推奨される(2017年版)。妊婦では産科医に相談して決める。
抗菌薬は、グラム陰性桿菌と嫌気性菌をカバーするものを選ぶ。投与期間は確立していないが、必要最少量を最短期間で投与することが提案されている。
③抗菌薬(経口)
オーグメンチン配合錠250RS®︎ 1回1錠 1日3回(6~8時間毎)
+アモキシシリン250mg 3Cp3×毎食後
※オーグメンチン、アモキシシリンとも、添付文書の適応症に腹膜炎・腹腔内感染症の記載はない(適応外)。
レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg1T1×食後
+メトロニダゾール(フラジール®︎)1回500mg(250mg錠2錠)1日3回(6T3×)毎食後
※レボフロキサシン経口薬は、添付文書の適応症に腹膜炎の記載はない(適応外)。腎機能低下例では減量する。メトロニダゾールは嫌気性菌感染症(腹膜炎、腹腔内膿瘍)として1回500mg 1日3回または4回。
④抗菌薬(点滴)
セフメタゾール(セフメタゾン®︎)
1g1日2回点滴
スルバクタム/セフォペラゾン(スルペラゾン®︎)
1g1日2回点滴
難治性・重症例では1日4gまで増量可
タゾバクタム/ピペラシリン(ゾシン®︎)
4.5g1日3回点滴
メロペネム(メロペン®︎)
0.5~1g1日3回点滴
添付文書の通常量は1日0.5~1gを2~3回に分割。1日1.5~3g〈1回1gまで〉は重症・難治性感染症での増量にあたる
※タゾバクタム/ピペラシリンは重症例で考慮する。ESBL産生菌のリスク(抗菌薬の使用歴など)がある場合は、メロペネムなどカルバペネム系を考慮する(セフトリアキソン非感受性〈主にESBL産生〉の大腸菌・クレブシエラによる菌血症では、タゾバクタム/ピペラシリンはメロペネムに対する非劣性を示せなかった:MERINO試験)。
※CTで認めた壁肥厚が大腸癌である可能性もあるため、憩室炎治癒後に一度は下部消化管内視鏡検査を行うことが推奨されている。
大腸憩室炎の予防
再発を予防するエビデンスレベルの高い方法は、現時点ではない。
・禁煙(喫煙は憩室炎の合併症・重症化に関与している可能性が高い)
・肥満解消(肥満は憩室炎の発症・合併症との関連が強いと考えられている)
※食物繊維・飲酒・NSAIDsについては相反する報告があり、推奨できる根拠は乏しい。メサラジンは本邦では憩室炎の再発予防に保険適用がない。
参考文献
- 日本消化管学会編:大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン.日本消化管学会雑誌 1(Suppl):1-52,2017(PDF)
- 改訂第2版(大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026,南江堂)が2026年2月に刊行されている。
- Sartelli M, et al:2020 update of the WSES guidelines for the management of acute colonic diverticulitis in the emergency setting. World J Emerg Surg 15:32,2020(PMC)
- 各薬剤の添付文書(オーグメンチン配合錠、サワシリン、クラビット錠、フラジール内服錠、セフメタゾン静注用、スルペラゾン静注用、ゾシン静注用、メロペン点滴用)(KEGG MEDICUSほか)
- Harris PNA, et al. Effect of Piperacillin-Tazobactam vs Meropenem on 30-Day Mortality for Patients With E coli or Klebsiella pneumoniae Bloodstream Infection and Ceftriaxone Resistance (MERINO). JAMA 2018;320:984-994.(PubMed)
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