偽膜性腸炎(CD腸炎・CDI)の診断と治療|CDトキシン・重症度別の抗菌薬・再発時の対応
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目次
Clostridioides difficile(C. difficile)
クロストリディオイデス・ディフィシル(旧名 Clostridium difficile)。
芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌。無症状で保菌している人もいる(医療機関の受診歴のない人では2%未満、急性期病院の入院患者では20%前後)。保菌者やトキシン非産生株は治療対象にならない。
C. difficileにはトキシン産生株と非産生株があり、C. difficile 感染症(CDI)はトキシン産生株による。
偽膜を形成したものは偽膜性腸炎と呼ばれる(偽膜を形成しないCDIもある)。
抗菌薬の使用歴(入院歴)がある患者の下痢はCDIを疑う。
CDIのリスク
CDI高リスクの抗菌薬:
フルオロキノロン、クリンダマイシン、セファロスポリン、β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン、カルバペネム、など
CDI発症のリスク:
高齢、抗菌薬の使用、過去の入院歴、消化管手術歴、慢性腎臓病や炎症性腸疾患などの基礎疾患、経鼻経管栄養、制酸薬(PPI・H2RA)の使用
CDIの診断
CDI診療ガイドライン2022の検査フローチャート(図1)の流れは次のとおり。Bristol score 5以上の下痢便で検査する。
- GDH・トキシン検査から始める場合
- GDH陰性・トキシン陰性 → CDIは否定的
- GDH陽性・トキシン陽性 → CDI
- GDH陽性・トキシン陰性 → NAATを追加する。陽性なら臨床評価(CDIまたは保菌もあり得る)、陰性ならCDIは否定的。NAATができない施設では、培養して分離株のトキシン検査を行う
- 最初からNAATを行う場合(2022年版で追加)
- 陽性 → 臨床評価(CDIまたは保菌もあり得る)
- 陰性 → CDIは否定的
- 培養検査から始める場合
- 培養陰性 → CDIは否定的
- 培養陽性 → 分離株のトキシン検査。陽性ならCDI、陰性ならCDIは否定的
CDトキシン:
トキシン陽性が病原性。特異度は高いが、感度は低い。
GDH:
トキシン産生株・非産生株どちらのC. difficileも検出する。感度が高くスクリーニングに向くが、GDH陽性だけではCDIと判断できない(GDH陽性・トキシン陰性では、トキシン産生株か非産生株かを区別できない)。
NAAT(核酸増幅法):
トキシン遺伝子を検出する。抗原検査より感度が高い。最初から単独で行うことも、GDH陽性・トキシン陰性のときに追加することもできる。CDI診療ガイドライン2022でも実施を弱く推奨している。ただし無症候性の保菌でも陽性になりうるため、下痢などの臨床症状とあわせて判断する。
便培養:
C. difficile用の培地を使用。 C. difficileが発育したらトキシン検査を行う(分離株のトキシン検査)。感度は高いが、判定に数日を要する。
CDIの治療
薬剤の中止
可能であれば現在投与中の抗菌薬を中止する。
また、PPIなどの原因となりうる薬剤も可能であれば中止する。
CDIは約20%が再発するので、可能な限り再発リスクを減らす意味もあり薬剤を見直す。
重症度を評価
国内外で統一された重症度分類はない。IDSA/SHEA基準では『白血球≧15,000/μL または 血清Cr>1.5 mg/dL』のいずれかがあれば重症
他に、高齢、高熱、低アルブミンなども重症の指標となり、総合的に判断。
ショック・低血圧、中毒性巨大結腸症、麻痺性イレウスなどがあれば劇症型(重症複雑性)。
初発CDIの治療
治療薬は、重症度に加えて再発リスクで選ぶ。ガイドライン2022が挙げる再発リスク因子は、65歳以上、CDI診断後の抗菌薬使用、腎不全などの重篤な基礎疾患、CDIの既往、PPIの使用、医療関連CDI(発症前3か月以内の入院歴)。
非重症例
メトロニダゾール(フラジール®)
250mg6T3× 10日間
メトロニダゾールが使えない場合(アレルギー・副作用、妊婦・授乳婦)
バンコマイシン散
500mg4×(1回125mgを1日4回) 10日間
再発リスクがある場合は、初めからフィダキソマイシンを考慮する
フィダキソマイシン(ダフクリア®)
200mg2T2× 10日間
改善乏しい時は、バンコマイシンかフィダキソマイシンへ変更する。
重症例
バンコマイシン散
500mg/4×(1回125mgを1日4回) 10日間
または、
フィダキソマイシン
200mg2T2× 10日間
再発リスクがある場合はこちらを優先
劇症型(重症複雑性)
全身管理を行いつつ、高用量のバンコマイシンを投与し、メトロニダゾール点滴の併用を考慮する。
バンコマイシン散
2,000mg4×(1回500mgを1日4回) 10日間
メトロニダゾール点滴(アネメトロ®)
500mg 8時間ごと
経口投与が難しい場合(麻痺性イレウスなど)は、経鼻胃管から投与するか、経腸(注腸)投与する。
バンコマイシン散
1回500mg+生食100mLを1日4回 経腸投与(10日間)
再発時の治療
約20%におきる。
フィダキソマイシンが第一選択(CDI診療ガイドライン2022)。
フィダキソマイシン
200mg2T2× 10日間
または、
バンコマイシン散
500mg4×(1回125mgを1日4回) 10~14日間
再発が何度も続く場合は、バンコマイシンのtapered and pulsed therapy(漸減・パルス療法)を考慮する(以下)。
500mg4×(1回125mgを1日4回)10~14日間→250mg2×(1回125mgを1日2回)1週間→125mg1×1週間→125mgを2~3日に1回 2~8週間
※フィダキソマイシン(ダフクリア®︎)はC. difficileに対する狭域スペクトラムの薬で、芽胞形成と発芽後の生育を抑えること、糞便中の芽胞を減らすことが報告されている。治癒率はバンコマイシンと同等だが、再発率が有意に低い。ただし薬価が高い。
※C. difficile トキシンBに対するヒトモノクローナル抗体のbezlotoxumab(ジーンプラバ®︎)は、単回投与で再発率を下げる(27→17%)。ガイドライン2022では、再発リスクの高い患者(CDIの既往、65歳以上、免疫不全、重症CDI)に限って併用を弱く推奨している。ただし保険上は、65歳以上であること、または過去2回以下の既往だけでは「重症化または再発のリスクが高い」とは認められない。なお、海外では2025年に販売が終了し、国内でも販売終了となっているため、現在は選択肢として使えない。
治療効果判定
治療効果は、主に下痢の回数と症状・所見の変化で判定する。
プロバイオティクスの予防投与、併用投与
CDI診療ガイドライン2022での位置づけは以下のとおり。
- 抗菌薬投与中のCDI発症予防: ルーチン投与は積極的には推奨しないが、症例により総合的に投与を検討する。
- CDI治療中の併用: 有効とする十分なエビデンスはなく、推奨しない(併用を否定するものではない)。
- 再発予防: 十分なエビデンスはなく、推奨しない。ただし再発予防の選択肢が限られるため、投与を検討することはできる。
使う場合の例)ビオスリー6T3×毎食後
プロバイオティクスだけでCDIを治療してはいけない。
C. difficileの感染対策
C. difficileは接触感染。
手指衛生は最も重要な対策の一つ。芽胞にはアルコールが効きにくいため、石鹸と流水による手洗いがより効果的。
芽胞にはエタノールや塩化ベンザルコニウムは無効で、次亜塩素酸ナトリウムなどが有効。CDI患者の病室の定期的な消毒には、1,000ppm以上の塩素含有の洗浄剤などの殺芽胞製剤を使う。
可能な限り隔離が望ましい。
下痢・泥状便が続く間は接触予防策を継続し、可能であれば下痢が治まってから少なくとも48時間は継続することが望ましい。
参考文献
- 日本化学療法学会・日本感染症学会 Clostridioides difficile 感染症診療ガイドライン2022(PDF)
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