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肝・胆・膵

脂肪性肝疾患(脂肪肝)|NASH/MASLDの鑑別,フォロー・治療

脂肪性肝疾患 診療ダイジェスト

  1. 血液検査等で脂肪肝以外の肝障害を除外
  2. NAFLとNASHを鑑別(血小板、FIB-4 index、線維化マーカー、肝生検など)
  3. 減量や基礎疾患の治療などをおこなう

脂肪性肝疾患の用語

脂肪性肝疾患はもともと脂肪肝と言われていたが、2023年6月に欧州肝臓学会、米国肝臓学会、ラテンアメリカ肝疾患研究協会が合同で声明を出して名称を変更した。以下、元の名称と一緒に記載する。

SLD(NAFLD)=MAFLD(NAFL)+MASH(NASH)

SLD(Steatotic Liver Disease):脂肪性肝疾患
 脂肪性肝疾患。MASLD + MASH。
MASLD(Metabolic Dysfunction Associated Liver Disease): 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
 病態がほとんど進行しない
MASH(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis): 代謝機能障害関連脂肪肝炎
 進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる

NAFLD(Non-alcoholic fatty liver disease):非アルコール性脂肪性肝疾患
NAFL(Non-alcoholic fatty liver disease): 非アルコール性脂肪肝
NASH(Non-alcoholic steatohepatitis):非アルコール性脂肪肝炎

アルコール性の肝炎も記載しておく。

ALD(Alcohol Associated Liver Disease) : アルコール関連肝疾患
MetALD(MASLD and increased alcohol intake): 代謝機能障アルコール関連肝疾患

脂肪性肝疾患の診断

①慢性肝障害を起こす他の原因を除外:

鑑別疾患:
アルコール、ウイルス(HBV、HCV)、AIH、PBC、Wilson病、ヘマクロマトーシス、成人型Still病、薬剤性、悪性疾患など

血液検査:
HBs抗原、HCV抗体、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、銅、フェリチンなど

画像検査:
腹部エコーなど

②MAFLDとMASHの鑑別

MAFLD/MASH鑑別のgold standardは肝生検だが脂肪肝ぜんぶに行うのは現実的でないので、

F3以上の高度線維化例や、線維化が進行する場合に肝生検を考慮する。

線維化の評価は血小板数FIB-4 indexなどが簡便

複数くみあわせて総合的に判断すること。

線維化の評価は一回だけではなく、進行していないか時系列で評価する。

血小板での評価

慢性C型肝炎における血小板数と線維化の相関は以下のとおりだが、

脂肪肝では血小板数15万未満だと8割が肝硬変になっていると国内多施設研究で報告されている(Yoneda M, et al:J Gastroenterol. 2011;46(11): 1300-6.)


血小板数年間肝癌発癌率
F0 線維化なし20万以上0%
F1 軽度線維化15~18万0.5%
F2 中等度線維化13~15万1.5%
F3 高度線維化10~13万5%
F4 肝硬変10万以下8%

FIB-4 indexでの線維化評価

AST,ALT,血小板数,年齢で計算し肝臓の線維化を予測する指標。

FIB-4 indexの計算はコチラ
→肝臓検査.com( https://kanzo-kensa.com/examination/calc/)

低値:1.3以下、中間値:1.3〜2.67、高値:2.67以上

NAFIC scoreでNASH(MASH)の可能性で判断

NAFIC scoreを使用するとNASH(MASH)の可能性を判断できる。

1点:フェリチン≧200(女性)or≧300(男性)
1点:空腹時インスリン≧10μU/mL
2点:4型コラーゲン7S≧5.0ng/mL

合計点数が2点以上はNASHの感度60-97%、特異度87-94%とNASHの可能性高く肝生検を検討する。

線維化マーカーについて

ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン7s、M2BPGi(Mac-2 binding protein糖鎖修飾異性体)など。

ヒアルロン酸は炎症、年齢、食事などで上昇し不安定。

Ⅳ型コラーゲン7s、M2BPGiのどちらかを。1つずしか保険算定できない。

Ⅳ型コラーゲン7s(148点):
F1以下の線維化カットオフ値6ng/mL(脂肪肝、慢性B・C型肝炎共通)

M2BPGi(194点):
NASH肝硬変のカットオフ値1.460COI(C型肝硬変では3.0COI)

NAFLD/NASH進行のリスク因子

  • 45歳以上
  • 肥満
  • AST/ALT比>1
  • 血小板低値
  • インスリン抵抗性
  • 高中性脂肪血症
  • 血清フェリチン高値
  • ヒアルロン酸および4型コラーゲン高値

脂肪性肝疾患のフォローアップ

繊維化の進行度に応じてフォロー間隔を検討する。

F3以上の高度線維化群→半年おきの画像検査と肝機能検査・腫瘍マーカー

F2以下→1年ごとの画像検査と肝機能検査

脂肪性肝疾患の治療

①肥満あり

食事・運動療法により7%減量をめざす。

目標体重
標準体重×25~30kcal/kg/日が目安。
脂質、果糖類、アルコールを減らす。

運動療法
30-60分、週3ー4回の有酸素運動が推奨。レジスタンス運動も有効。

②2型糖尿病あり(インスリン抵抗性)

チアゾリジン系:
肝線維化の改善あるが、心不全、体重増加あり。

ビグアナイド系:
発癌抑制効果はあるが、NAFLD/NASHの肝機能や組織像の改善はない。

SGLT2-i、GLP1アナログ:
有効性あり。

インスリンやSU剤:
HCC発癌リスクが増加させることがある。

③脂質異常症

 スタチン:心血管系イベントを抑制、肝機能改善。

 例)ロスバスタチン2.5mg1T1×夕食後

④高血圧

 ARB:肝機能、肝組織の改善。

 例)オルメサルタン10mg1T1×朝食後

⑤抗酸化療法:ビタミンE

 保険適応はないが、400IU投与で肝組織学的改善、生命予後の改善効果あり、基礎疾患の治療に加えて適宜追加する。

 例)トコフェロール酢酸エステル(ユベラ®︎) 6T3×毎食後

  (保険適応:1.ビタミンE欠乏症の予防及び治療 2.末梢循環障害(間歇性跛行症、動脈硬化症、静脈血栓症、血栓性静脈炎、糖尿病性網膜症、凍瘡、四肢冷感症) 3.過酸化脂質の増加防止 )

⑥ウルソ:

 日本の投与量では効果なし(倍以上投与で効果アリの可能性)。

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