肝・胆・膵

脂肪肝|NASH/NAFLDの鑑別,フォロー・治療

脂肪肝診療ダイジェスト

①血液検査等で脂肪肝以外の肝障害を除外

②NAFLとNASHを鑑別(血小板、FIB-4 index、線維化マーカー、肝生検など)

③減量や基礎疾患の治療などをおこなう

脂肪肝の用語

NAFLD=NAFL+NASH

NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患

NAFL:病態がほとんど進行しない

NASH:進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる

脂肪肝の診断

①慢性肝障害を起こす他の原因を除外:

鑑別疾患:
アルコール、ウイルス(HBV、HCV)、AIH、PBC、Wilson病、ヘマクロマトーシス、成人型Still病、薬剤性、悪性疾患など

血液検査:
HBs抗原、HCV抗体、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、銅、フェリチンなど

画像検査:
腹部エコーなど

②NAFLとNASHの鑑別

NAFL/NASH鑑別のgold standardは肝生検だが脂肪肝ぜんぶに行うのは現実的でないので、

F3以上の高度線維化例や、線維化が進行する場合に肝生検を考慮する。

線維化の評価は血小板数FIB-4 indexなどが簡便

複数くみあわせて総合的に判断すること。

線維化の評価は一回だけではなく、進行していないか時系列で評価する。

血小板での評価

慢性C型肝炎における血小板数と線維化の相関は以下のとおりだが、

脂肪肝では血小板数15万未満だと8割が肝硬変になっていると国内多施設研究で報告されている(Yoneda M, et al:J Gastroenterol. 2011;46(11): 1300-6.)


血小板数年間肝癌発癌率
F0 線維化なし20万以上0%
F1 軽度線維化15~18万0.5%
F2 中等度線維化13~15万1.5%
F3 高度線維化10~13万5%
F4 肝硬変10万以下8%

FIB-4 indexでの線維化評価

AST,ALT,血小板数,年齢で計算し肝臓の線維化を予測する指標。

FIB-4 indexの計算はコチラ
→肝臓検査.com( https://kanzo-kensa.com/examination/calc/)

→低値:1.3以下、中間値:1.3〜2.67、高値:2.67以上

NAFIC scoreでNASHの可能性で判断

1点:フェリチン≧200(女性)or≧300(男性)
1点:空腹時インスリン≧10μU/mL
2点:4型コラーゲン7S≧5.0ng/mL

合計点数が2点以上はNASHの感度60-97%、特異度87-94%とNASHの可能性高く肝生検を検討する。

線維化マーカーについて

ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン7s、M2BPGi(Mac-2 binding protein糖鎖修飾異性体)など。

ヒアルロン酸は炎症、年齢、食事などで上昇し不安定。

Ⅳ型コラーゲン7s、M2BPGiのどちらかを。1つずしか保険算定できない。

Ⅳ型コラーゲン7s(148点):
F1以下の線維化カットオフ値6ng/mL(脂肪肝、慢性B・C型肝炎共通)

M2BPGi(194点):
NASH肝硬変のカットオフ値1.460COI(C型肝硬変では3.0COI)

NAFLD/NASH進行のリスク因子

  • 45歳以上
  • 肥満
  • AST/ALT比>1
  • 血小板低値
  • インスリン抵抗性
  • 高中性脂肪血症
  • 血清フェリチン高値
  • ヒアルロン酸および4型コラーゲン高値

脂肪肝のフォローアップ

F3以上の高度線維化群:半年おきの画像検査と腫瘍マーカー

F2以下:1年ごと

脂肪肝の治療

①肥満あり

食事・運動療法により7%減量をめざす。

目標体重:
標準体重×25~30kcal/kg/日が目安。
脂質、果糖類、アルコールを減らす。

運動療法:
30-60分、週3ー4回の有酸素運動が推奨。レジスタンス運動も有効。

②2型糖尿病あり(インスリン抵抗性)

チアゾリジン系:
肝線維化の改善あるが、心不全、体重増加あり。

ビグアナイド系:
発癌抑制効果はあるが、NAFLD/NASHの肝機能や組織像の改善はない。

SGLT2-i、GLP1アナログ:
有効性あり。

インスリンやSU剤:
HCC発癌リスクが増加させることがある。

③脂質異常症

 スタチン:心血管系イベントを抑制、肝機能改善。

 例)ロスバスタチン2.5mg1T1×夕食後

④高血圧

 ARB:肝機能、肝組織の改善。

 例)オルメサルタン10mg1T1×朝食後

⑤抗酸化療法:ビタミンE

 保険適応はないが、400IU投与で肝組織学的改善、生命予後の改善効果あり、基礎疾患の治療に加えて適宜追加する。

 例)トコフェロール酢酸エステル(ユベラ®︎) 6T3×毎食後

  (保険適応:1.ビタミンE欠乏症の予防及び治療 2.末梢循環障害(間歇性跛行症、動脈硬化症、静脈血栓症、血栓性静脈炎、糖尿病性網膜症、凍瘡、四肢冷感症) 3.過酸化脂質の増加防止 )

⑥ウルソ:

 日本の投与量では効果なし(倍以上投与で効果アリの可能性)。

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