Clostridium difficile(C. difficile)
クロストリジウム・ディフィシル。
芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌。腸管常在菌。
C. difficileにはトキシン産生株と非産生株があり、C. difficile 感染症(CDI)はトキシン産生株による。
偽膜を形成することから偽膜性腸炎と呼ばれる。
抗菌薬終了後1ヶ月以内の下痢はCDIを疑う。
CDIのリスク
CDI高リスクの抗菌薬:
フルオロキノロン、クリンダマイシン、広域セファロスポリン、広域ペニシリン、カルバペネム、など
CDI低リスクの抗菌薬:
バンコマイシン、メトロニダゾール、アミノグリコシドなど
CDI発症のリスク:
高齢者、長期入院、消化管手術、PPI、抗癌剤、炎症性腸疾患など
CDIの診断
CDトキシン:
トキシン陽性が病原性。CDIの感度は60-83% と低いが特異度が高い93-99%。
GDH:
病原性・非病原性どちらのC. difficileも検出するためCDIの感度は85-95%と高いが特異度は約60%。
便培養:
C. difficile用の培地を使用。 C. difficileが発育したらトキシン検査を行う。感度も特異度も95%以上だが判定に数日要する。
CDIの治療
薬剤の中止
可能であれば現在投与中の抗菌薬を中止。中止だけで改善することもある。
また、PPIなどの原因となりうる薬剤も可能であれば中止する。
CDIは約20%が再初するので、可能な限り再発リスクを減らす意味もあり薬剤を見直す。
重症度を評価
『白血球>15,000/μL または Cr≧ 1.5 mg/dL』のいずれかあれば重症
他に、高齢、高熱、低アルブミンなども重症の指標となり、総合的に判断。
ショックバイタルやイレウスがあれば超重症。
初発CDIの治療
非重症例
例)メトロニダゾール(フラジール®) 250mg6T3× 10~14日間
改善乏しい時は以下へ変更
例)バンコマイシン散500mg4×
重症例
例)バンコマイシン散 500mg/4× 10~14日間
超重症例
全身管理を行いつつ、以下2剤を併用。
例)
バンコマイシン散2,000mg4×
メトロニダゾール点滴(アネメトロ®) 500mg 8時間ごと
さらに、バンコマイシンの経口門的に注腸投与の併用を検討
例)バンコマイシン散500mg+生食100mL/1時間× 6時間ごと
再発時の治療
約20%におきる。
初回治療がメトロニダゾールの場合バンコマイシンで治療。
初回バンコマイシンの場合、バンコマイシ ンのtapered and pulsed therapyを行う(以下)。
500mg4× 2週間→250mg2×1週間→125mg1×1週間→数日おきに125mg1×2~8週間
※フィダキソマイシン(ダフクリア®︎)が2018年に承認。C. difficileに対して有効な狭域スペクトラムで、芽胞にも効きCDIに有効で再発率も他薬剤よりも低いが、1日薬価が約8033円と高価(MTZ1500mg/日:約197円、VCM500mg/日:約910円)。
※C. difficile トキシンBに対するヒトモノクロール抗体のbezlotoxumab(ジーンプラバ®︎)も再発予防効果がある。単回投与で再発率が27→17%。薬価は約335,839円。
治療効果判定
CDトキシンは治療後も陽性陽性となりやすく、効果判定に使用せず、症状の改善で判定する。
プロバイオティクスの予防投与、併用投与
再発予防も効果は明確でないが、CDIは再発率が約20%あるにもかかわらず他に方法がないので投与を検討する。とくに、CDI改善後に抗菌薬を使用する場合は併用する。
抗C. difficile薬での治療中に併用してもよい。
例)ビオスリー6T3×毎食後
C. difficileの感染対策
C. difficileは接触感染。
芽胞はアルコール消毒が無効なので、石鹸・流水で手を洗うことが最も大事。
環境整備・医療機器の清潔保持には次亜塩素酸を使用。
可能な限り隔離が望ましい。
症状が消失しても2日は対策継続をした方が無難。