急性膵炎|症状・検査/診断・治療
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目次
急性膵炎の診断基準
- 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
- 血中または尿中に膵酵素の上昇がある(※1)
- 超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある。(※2)
上記、3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。
ただし慢性膵炎の急性増悪も急性膵炎に含める。(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班 2008年)
(※1)血中リパーゼの測定が推奨 される(強い推奨)。リパーゼの測定が困難な場合は血中アミラーゼを測定する。正常上限の3倍をカットオフとしたメタ解析では感度はリパーゼ79%、アミラーゼ72%で、上昇がなくても否定はできない。
(※2)膵臓の腫大・浮腫・周囲炎症など。
急性膵炎の原因
男性はアルコール性、女性は胆石性膵炎が多い(2016年の全国調査では、男性はアルコール性42.8%、女性は胆石性37.7%が最多)。
成因は診断後3時間以内に病歴・血液検査・画像検査で鑑別する。特に胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例や胆道通過障害の遷延を疑う例では早期のERCP+ESTを検討するため、成因(胆石性かどうか)の診断を優先する。さらに、重症度判定のために腎機能障害やヨードアレルギーなどがなければ造影CTを行うこと。
急性膵炎の重症度判定
判定のタイミング
厚労省予後因子スコアが以前から頻用されるが、重症化診断の特異度は高いが、入院時の感度は低く(4~6割)、繰り返して評価が必要。
急性膵炎は経時的に悪化することも多く、診断時、24時間以内、24~48時間に繰り返し判定を行う。必要な時はさらに頻繁に行い、48時間後に増悪している例ではそれ以降も繰り返す。
厚労省予後因子スコア(2008年)
A.予後因子が3点以上、またはB.造影CT Grade 2以上の場合は重症とする。
重症と判定され自院で重症の治療が難しい場合は、診断後3時間以内を目安に治療可能施設への転送を検討する。
A.予後因子(各1点)
- Base Excess ≦−3mEq/L、またはショック(収縮期血圧≦80mmHg)
- PaO2≦60mmHg(room air)、または呼吸不全(人工呼吸管理が必要)
- BUN≧40mg/dL(or Cr≧2mg/dL)、または乏尿(輸液後も1日尿量が400mL以下)
- LDH≧基準値上限の2倍
- 血小板数≦10万/mm3
- 総Ca≦7.5mg/dL
- CRP≧15mg/dL
- SIRS診断基準(※3)における陽性項目数≧3
- 年齢≧70歳
(※3)SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃、(2)脈拍>90回/分、(3)呼吸数>20回/分またはPaCO2<32Torr、(4)白血球数>12,000/mm3か<4,000/mm3または10%幼若球出現
B.造影CT Grade
以下①+②の合計スコアで判定。
1点以下:Grade 1
2点:Grade 2
3点以上:Grade 3
- ①炎症の膵外進展度
0点:前腎傍腔
1点:結腸間膜根部
2点:腎下極以遠 - ②膵の造影不良域
膵頭部、膵体部、膵尾部の3区域にわけて判定。
0点:各区域に限局している場合、または膵の周辺のみの場合
1点:2つの区域にかかる場合
2点:2つの区域全体を占める、またはそれ以上の場合
インターロイキンー6(ILー6)
入院時の血中IL−6は重症化予測に有用とされ、メタ解析での感度は8~9割(IL−6>50pg/mL で中等症・重症の予測感度87%、特異度88%)と報告されている。入院時の感度が低い予後因子スコアや造影CT Gradeの弱点を補う可能性があり、測定することが提案されている(弱い推奨)。
急性膵炎の致命率
上記の予後因子スコアと造影CTグレードを合わせた致命率が報告されている(2016年全国調査)。
| 造影CTグレード\予後因子スコア | 軽症 | 重症 | 計 |
|---|---|---|---|
| 軽症 | 0.5%(11/2,288) | 9.0%(17/188) | 1.1%(28/2,476) |
| 重症 | 2.1%(9/429) | 19.1%(17/89) | 5.0%(26/518) |
| 計 | 0.7%(20/2,717) | 12.3%(34/277) |
Masamune A, et al; Japan Pancreas Society. Clinical practice of acute pancreatitis in Japan: An analysis of nationwide epidemiological survey in 2016. Pancreatology 2020; 20: 629-636.
急性膵炎の治療
積極的輸液療法
急性膵炎初期には脱水・循環不全を伴うため、積極的輸液療法を行うことが提案されている(弱い推奨)。ただし過剰輸液とならないようモニタリングを行い、特に高齢者・心不全患者・腎不全患者では綿密にモニタリングすること(急性膵炎診療ガイドライン2021)。
約1,000例の観察研究では、来院から診断後4時間までに1L超の初期輸液 を行った群で、その後の侵襲的治療介入の必要性が低かった(United European Gastroenterol J 2017; 5:491-498)。ガイドライン2021はこの研究を、24時間以上(4.3L以上)積極的に初期輸液を続けると局所合併症のリスクが高くなる、とも紹介している。
また、初期輸液には晶質液(細胞外液)を用い、緩衝液 (ソルラクト®︎、ラクテック®︎、ヴィーンF®︎、ビカーボン®︎など)を使用することが提案されている(急性膵炎診療ガイドライン2021)。
具体的な輸液量の根拠は乏しいが、ガイドライン2021では検討したRCTの積極的輸液群の約4.8L/日(200mL/時)が一つの目安になる可能性があるとしている。ただしその後、下記のWATERFALL試験で積極的輸液の害が示されている。
2022年発表のWATERFALL試験も”適量輸液”の参考になる。
乳酸リンゲル液による積極的輸液群(20mL/kgボーラス後、3mL/kg/h)と適量輸液群(血液量減少例は10mL/kgボーラス、血液量正常例はボーラスなしで、全例1.5mL/kg/h)を比較したところ、中等症~重症膵炎への進展に有意差はなく(22.1% vs 17.3%)、積極的輸液群で輸液過剰が多かった(20.5% vs 6.3%)ため、中間解析の時点で試験中止となった(N Engl J Med 2022; 387:989-1000)。
鎮痛薬
急性膵炎では迅速に鎮痛薬を使用する。アセトアミノフェン、NSAIDs、ペンタゾシンなどの非オピオイドを投与し、疼痛の程度に応じてオピオイドの使用も考慮する。
アセトアミノフェン(アセリオ®︎)
300~1000mg15分かけて
4~6時間以上あけて、4000mg/日まで
体重50kg未満:15mg/kg/回を上限に4~6時間以上あけて、60mg/kg/日まで
ペンタゾシン(ソセゴン®︎、ペンタジン®︎)
15mg筋注・皮下注、必要に応じて3~4時間毎に反復
添付文書上、胆道疾患のある患者では大量投与でOddi筋を収縮するとされ注意が必要
蛋白分解酵素阻害薬
軽症~重症いずれの症例でも致命率や膵合併症発生率を改善せず、在院日数も短縮させず、重症例のみの検討でも有用性は示されていない。ガイドライン2021では生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていないとして「推奨なし」とされている。
他の薬剤
・抗菌薬:
胆石性膵炎で胆管炎を併発しているなど感染を有する場合は治療として投与する。(胆管炎を参照)
軽症に対する予防的抗菌薬投与に有効性はなく、投与しない(強い推奨)。
重症や壊死性の場合も予防的抗菌薬投与による生命予後や感染性膵合併症の明らかな改善効果は証明されていない(推奨なし)。
・胃酸分泌抑制薬(PPI・H2受容体拮抗薬):
有用性を示すエビデンスはなく、投与しないことが提案されている(弱い推奨)。ただし、急性胃粘膜病変や胃十二指腸潰瘍などの上部消化管出血を合併する例では投与を考慮する。
栄養療法
重症膵炎の栄養療法
早期から経腸栄養を開始すると合併症発生率を低下させ生存率の向上に寄与するため、高度の腸閉塞・消化管穿孔・腸管壊死などの禁忌がなければ入院後48時間以内に少量からでも経腸栄養を開始 する(強い推奨)。腹痛、膵酵素上昇、腸蠕動音消失があっても経腸栄養は可能とされている。
投与経路も以前はチューブで空腸から投与していたが、胃管で胃からの投与も同等とされている(ただし誤嚥に注意し少量から慎重に開始する)。
栄養剤の形態(消化態・半消化態・成分栄養剤)は下痢の有無などの病態に応じて選択する。
従来は20~30mL/hで開始し、数日かけて100mL/h(25~35kcal/kg/日)を目標に増量することが多かった。
重症膵炎では安静時エネルギー消費量が基礎代謝量の1.5倍の代謝亢進状態にあることも考えつつ、静脈栄養は補助として補う。
軽症膵炎の栄養療法
腸蠕動が回復すれば経口摂取を再開することができる(弱い推奨)。必ずしも流動食から段階的に増やす必要はないとの報告もあり、できるだけ早めに食事を開始する。
参考文献
- 急性膵炎診療ガイドライン2021改訂出版委員会 編. 急性膵炎診療ガイドライン2021(第5版). 金原出版, 2021.(PDF)
- 武田和憲, 他. 急性膵炎の診断基準・重症度判定基準最終改訂案. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究 平成17年度報告書. 2006: 27-34.
- Masamune A, et al. Clinical practice of acute pancreatitis in Japan: An analysis of nationwide epidemiological survey in 2016. Pancreatology 2020;20:629-636.(PubMed)
- Singh VK, et al. An international multicenter study of early intravenous fluid administration and outcome in acute pancreatitis. United European Gastroenterol J 2017;5:491-498.(PubMed)
- de-Madaria E, et al. Aggressive or Moderate Fluid Resuscitation in Acute Pancreatitis (WATERFALL). N Engl J Med 2022;387:989-1000.(PubMed)
- アセリオ静注液1000mgバッグ 添付文書(KEGG)
- ソセゴン注射液15mg 添付文書(KEGG)
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