肝・胆・膵

慢性B型肝炎|症状・検査/診断・治療

HBs抗原が陽性のときの対応ダイジェスト

①肝胆道系酵素、血算などを評価

②HBe抗原・抗体、HBV  DNAを測定しステージング

③治療適応を検討

④肝機能、HBV、HCCのチェックを定期的に行う

HBVキャリアの経過

HBe抗原HBe抗体HBs抗原DNA(LC/mL)
無症候性キャリア++-+++8~
慢性B型肝炎+-++6~10
-++~++3~8
非活動性キャリア-++~4
回復期-+--

※HBVキャリア:
HBs抗原が6ヵ月以上の間持続陽性(持続感染)

※無症候性キャリアから回復期へ自然経過するが、HBs抗原消失は全キャリアで年間1%程度と少ない。

※セロコンバージョン:
HBe抗原(+)HBe抗体(ー)→HBe(ー)HBe抗体(+)になること。

※非活動性キャリア:
1年以上の観察期間のうち3回以上HBe抗原陰性、ALT30以下、HBV DNA3.3LC/mL未満(2,000IU/mL未満)の3条件を全て満たすこと。線維化は進行しないが、免疫抑制剤の使用で再活性化リスクあり。

※回復期でもcccDNAが幹細胞核内に残るため再発リスクはゼロではない。

慢性B型肝炎の治療適応と治療法

基本的に、治療開始と終了時は肝臓専門医に紹介すべき。

治療開始前に一度genotypeも測定しておく。

ASTHBVーDNA初回治療再治療
慢性B型肝炎31U/L以上3.3LC/mL以上
(2,000IU/mL以上)
Peg-IFNIFNへの反応性(+)の再燃時
①Peg-IFN(IFN)
②ETV,TDF,TAF
IFNへの反応性(ー)
ETV,TDF,TAF
ETV,TDF,TAFETV,TDF,TAF中止後の再燃時
①ETV,TDF,TAF
②PegーIFN(IFN)
肝硬変陽性ETV,TDF,TAF

Peg-IFN:ペグインターフェロン, ETV: エンテカビル(バラクルード®︎), TDF: テノホビルジソプロキシル(テノゼット®︎), TAF: テノホビルアラフェナミド(ベムリディ®︎)

※HBe抗原陽性の慢性肝炎は年10%ほどセロコンバージョンが起こるので、線維化がなく、劇症化の可能性がない場合は1年程自然経過をみてもよい(その後も上記基準を満たす場合は治療を検討する)。

※Peg-IFNは週1回来院して注射を24週間行う。長期目標であるHBs抗原陰性化も得られ、治療が終了できるが成功率は低く、副作用も多い。

※ETV,TDF,TAFは核酸アナログ製剤で経口内服で治療できる。短期的にHBV  DNAも陰性化できるがHBs抗原陰性化はほぼできず、継続して内服が必要。中止基準を満たせば中止も検討できるが再燃に注意が必要。

肝機能、HBV、HCCの定期チェック

肝機能、HBV DNA定量、AFPやPIVKA2、エコーを以下の間隔でチェック。

・無症候性・非活動性キャリア(肝線維化なし):6~12ヶ月

・無症候性・非活動性キャリア(肝線維化あり):6ヶ月

・慢性肝炎:6ヵ月

・肝硬変:3ヵ月+dynamic CT/MRI 6~12ヶ月

免疫抑制・化学療法を開始する際のB型肝炎対策

HBs抗原陽性例

HBe抗原/抗体、HBV-DNA測定し、核酸アナログ投与開始。

HBs抗原陰性例

①HBs抗体・HBc抗体

どちらも陰性→終了
1つ以上陽性→②へ
※HBs抗体のみ陽性で、ワクチン接種歴が明らかな場合は終了で可。

②HBV  DNA定量

20IU/mL(1.3LogIU/mL)以上→核酸アナログ投与
上記未満→③へ

③1~3ヶ月ごとにHBV  DNA定量、AST・ALTをフォロー

HBV  DNA定量20IU/mL(1.3LogIU/mL)以上→核酸アナログ投与
上記未満→フォロー継続

核酸アナログ

 HBs抗原陽性例は肝臓専門医に開始時、終了時ともに相談。

 HBs抗原陰性で核酸アナログ投与が必要な症例は、ETV,TDF,TAFのいずれかを開始(肝臓専門医への紹介が望ましい)。

 化学療法等終了後、少なくとも12ヶ月間は継続すること。この期間中に、HBVによると思われるALT上昇が正常化していることと、DNA陰性が持続していることを確認されれば、中止できる(肝臓専門医へ相談)。

B型肝炎ウイルスの母子感染について

妊婦がHBVキャリアで出生児に予防投与をしないと約25%がキャリアに(HBe抗原陽性妊婦→85%、陰性10%)。

高抗体価HBs抗体含有免疫グロブリン(HBIG)やHBワクチンを出生児に複数回投与することでほとんど予防できる(保険診療)。

キャリアからの母乳感染はしない。

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