問診・身体診察のポイント
・下痢の性状、回数、血便の有無
・1週間以内の生モノの摂取
・周囲に同様の症状の人がいるか
・抗菌薬の使用歴(1ヶ月以内)
・旅行歴
・性行為歴(アメーバ赤痢など念頭に)
・脱水の程度の評価(皮膚・口腔内・腋窩などの乾燥、排尿量、外頸静脈虚脱など)
・腹部所見
原因菌・ウイルスの特徴
①冬中心
カキなどの2枚貝、発熱、嘔吐→ノロウイルス
酸っぱい匂い、小児→ロタウイルス
②夏中心
生の鶏肉→カンピロバクター
鶏卵→サルモネラ
牛肉→O-157
感染性腸炎の検査
・ノロウイルス迅速検査:
3歳未満と65歳以上で保険適応あり。
・便中ロタウイルス抗原検査:
全年齢で保険適応あり。
・CD toxin:
抗菌薬使用歴のある患者
・便培養:
陽性率は50%前後。全例で必要ではない。抗菌薬投与を検討するような症例では積極的に提出しておく。
感染性腸炎の治療
①脱水の補正
例)細胞外液や開始液(1号液)を点滴
嘔気・嘔吐が強いときは
例)メトクロプラミド10mg 静注
例)ナウゼリン(ドンペリドン®︎)OD10mg1T 1×嘔気時(1日3回まで)
例)ナウゼリン(ドンペリドン®︎)坐剤30mg1ケ 1×嘔気時(1日3回まで)
②抗菌薬
細菌性腸炎疑いでも基本的に必要ない。以下の場合は使用する。
a)症状が強いカンピロバクター
例)クラリスロマイシン200mg2T2×朝夕食後
例)レボフロキサシン500mg1T 1×朝食後
b)アメーバ
例)メトロニダゾール(フラジール®︎)250mg 9T3×毎食後
c)偽膜性腸炎
例)軽症ではメトロニダゾール(フラジール®︎)250mg 4T4×毎食後・就寝前
③止痢剤
急性腸炎では原則使用しない。
どうしても使用する場合は短期間で以下。もしくは頓用で使用。
例)アドソルビン3g3×食間
④整腸剤
例)ミヤBM3g3×毎食後
例)ビオスリー6T3×毎食後
帰宅時の指導
・経口摂取が可能であれば、食事は炭水化物など消化にいいものを食べるように指導。
・下痢が出るぶん多めに飲水(冷水はさける)をすすめる。
・経口摂取があまりできなければ外来で点滴フォロー。
・腹痛が強い場合は数日以内に外来フォロー。
・食品関連の仕事には下痢がおさまるまでは仕事を休むように指示。