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肝・胆・膵

肝膿瘍の診断・治療

肝膿瘍の概要

肝膿瘍は、肝臓内に細菌、真菌、赤痢アメーバなどが侵入し、肝組織が融解壊死を起こして形成された膿瘍のこと。

細菌性肝膿瘍とアメーバ性肝膿瘍に分類される。

経皮経肝ドレナージと抗菌薬投与が基本治療。

細菌性肝膿瘍の原因菌と感染経路

主な起因菌: 肺炎桿菌、大腸菌、嫌気性菌、腸球菌、アメーバ赤痢

経胆道性: 胆管炎や胆嚢炎の波及
経門脈性: 虫垂炎、炎症性腸疾患、腹膜炎、膵炎、憩室炎などからの波及
経動脈性: 心膜炎、齲歯、菌血症などからの血行性
医原性・外傷性: 肝手術後や外科手術後

アメーバ性肝膿瘍の感染経路

赤痢アメーバの感染。

経口感染(汚染された食物・飲料水)や性感染(anal-oral sex)など。

HIV感染症の合併を疑う。

肝膿瘍の身体所見

  • 発熱・全身倦怠感
  • 右季肋部痛(肝叩打痛)
  • 肝腫大・触知

肝膿瘍の検査

血液検査

炎症所見: 白血球増加、CRP高値、血沈亢進。

肝胆道系酵素: ALP、γ-GTP、AST、ALTの上昇(アメーバ性では上昇しないこともある)。

血液培養: 細菌性肝膿瘍では半数以上で陽性。

血清抗赤痢アメーバ抗体検査: 2017年末に検査キットが製造中止。

画像検査

腹部超音波検査 (腹部エコー)

膿瘍形成初期には、内部に点状の高エコーを伴う低エコー腫瘤として描出され、進行すると腫瘤内部が融解壊死して液状化するため、低エコー域が広がり、膿瘍腔が不規則な形で描出される。

腹部CT

単純CTでは腫瘤は内部不均一な低濃度域として描出される。

造影CTでは、膿瘍腔周囲が濃染し、内部は造影されずに低濃度域として描出される。さらにその周囲は肝実質の反応性浮腫により動脈相で低濃度域を示し、平衡相では濃染するため、「double-target sign」を呈する。

膿瘍腔内にガス像を認める場合、起因菌がガス産生菌、もしくは消化管と膿瘍腔が交通していることが疑われる。

細菌性とアメーバ性の画像上の違い

細菌性肝膿瘍では多発性、多房性の病変が多いのに対し、アメーバ性肝膿瘍は右葉に単発性の大きい(直径5~10cm以上)膿瘍になることが多。

穿刺液検査

細菌性肝膿瘍:
腐敗臭を伴う膿が特徴。
原因菌として、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、バクテロイデス(Bacteroides spp.)、腸球菌(Enterococcus spp.)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、連鎖球菌(Streptococcus spp.)、ブドウ球菌(Staphylococcus spp.)がある。

アメーバ性肝膿瘍
チョコレート状の膿で、腐敗臭はなし。原虫検出率は30~50%前後。

Klebsiella pneumoniaeが起因菌の場合、糖尿病患者に多く血行性散布するため,眼内炎や敗血症性肺塞栓、脳膿瘍・腸腰筋膿瘍などの血行性転移を起こしやすいので注意が必要。

肝膿瘍の治療

抗菌薬投与開始前に血液培養を行い、膿瘍穿刺液の細菌学的検査を積極的に行うことで起因菌の同定を試みることが重要。

empiricに抗菌薬投与を開始しつつ、起因菌が特定された段階でde-escalationを行う。

経皮経肝膿瘍ドレナージも可能なら行う。

難治例では外科的切除を検討。

細菌性肝膿瘍の治療

抗菌薬

empiricに抗菌薬投与を開始する。

グラム陰性桿菌や嫌気性菌をカバーするため、下記のいずれかを投与。

例1)アンピシリン・スルバクタム(ユナシン-S ®)1回3g×2〜4回/日

例2)タゾバクタム・ピペラシリン(タゾピペ ® or ゾシン® )1回4.5g×3〜4回/日

培養結果が出しだい、de-escalationする。

治療開始後2~3日しても改善が乏しい場合は、カルバペネム系等の他剤への変更を検討する。

抗菌薬治療は2〜3週間は点滴で行い、落ち着いていればさらに2〜3週間内服で投与することが多い。

経皮経肝膿瘍ドレナージ

経皮経肝膿瘍ドレナージも治療の基本として併用する。

排液がほとんどなくなるまで留置する(約1週間ほどが多い)。

留置後1週間しても改善が乏しい場合は外科的切除を検討すること。

単発で小さい(5cm以下)膿瘍の場合は経皮的持続ドレナージと単回の穿刺吸引の効果は変わりないとも言われている。

アメーバ性肝膿瘍の治療

アメーバ性肝膿瘍治療の第一選択薬はメトロニダゾールで、ドレナージなしでも良好な経過を得ることが多い。

メトロニダゾール(フラジール®)500mg 3T3×毎食後 10〜14日間

経皮経肝膿瘍ドレナージは、アメーバ性肝膿瘍が破裂しやすいため穿刺しないという意見と、ドレナージをすることで破裂のリスク軽減できるという意見がある。

アメーバ性と細菌性の鑑別が難しい場合に穿刺培養も兼ねてドレナージを行うか、膿瘍の穿孔や破裂の危険性がすでにある場合はドレナージを考慮する。

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