感染症

破傷風の症状・検査・診断・治療

破傷風とは

 破傷風はClostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素による神経疾患。

 破傷風菌は、偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌であり、芽胞の状態で世界中の土壌などに分布。破傷風菌は創部に侵入し、発芽→増殖→毒素産生を行い、末梢神経障害(抑制性神経伝達減少)をおこして症状をおこす。

  • 日本では年間約100人が発症し、5~9人は破傷風が原因で死亡。
  • 潜伏期間は3~21日(平均10日)。創部が中枢神経系に近いと潜伏期が短く、予後も不良。
  • 人ー人感染はない。

創傷処置としての破傷風予防

破傷風予防におけるTIG/TTの適応

創傷処置をするときの、TIG(抗破傷風ヒト免疫グロブリン)とTT(破傷風トキソイド=ワクチン)についてのフローチャートを示す。

国立感染症研究所のホームページ(https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/tetanis/tetanis-fig2.png)より引用

創傷処置の際の破傷風予防にTIGを使用する場合は、250 IU投与する。

※通常、破傷風のワクチンは定期接種第一期に4種混合ワクチンで4回、第二期(11~12歳)に2種混合ワクチンで1回接種している。

破傷風予防目的の抗菌薬投与

破傷風予防目的では抗菌薬の投与は不要。

創部の汚染が強い、時間が立っているなどで一般的な感染リスクが高い場合に検討する。

例)オーグメンチン250RS 3Cp+アモキシシリン250mg3Cp/3×毎食後

破傷風の症状

  • 有痛性の筋痙攣、強直
  • 開口障害
  • 痙笑(顔面が強直し笑ったような顔で固定)
  • 交感神経過活動(頻脈、高血圧、多汗など)

※意識は保持される

破傷風の診断

 検査方法はなく、臨床症状・経過から診断

(創部の培養は感度・特異度ともに低い)

 破傷風の抗体価はワクチンの効果判定に用いられる。

第5類感染症(全数把握)であり、7日以内に最寄りの保健所に届けること。

破傷風の治療

①創処置

 創部を十分に洗浄し、壊死組織等あればデブリードマンも行う。

②TIG(抗破傷風ヒト免疫グロブリン)

 毒素を中和する。すでに組織に結合した毒素は中和できないため、早期投与が重要

 TIG投与量は3000~6000単位を1回投与
(WHOなどは500単位でもよいとしている)

 製剤によるが、筋注する場合で、TTも投与する場合は左右の上腕二頭筋に別々に打つこと。

③TT(破傷風トキソイド=ワクチン)

破傷風トキソイド0.5mLを筋注

診断時に1回目。
1回目から2週間後に2回目。
2回目から4週間後に3回目。

※破傷風は極微量の毒素で発症するので発症しただけでは抗破傷風毒素抗体値は上昇しないため。

④抗菌薬

メトロニダゾールが第一選択。使用できない場合はペニシリンGを使用。

 例)メトロニダゾール500mg1日4回 7~14日間
 例)ペニシリンG200mg1日6回 7~14日間

⑤痙攣対策

 ジアゼパムや筋弛緩薬、マグネシウム等の投与を行う。

 喉頭痙攣などで呼吸困難を生じて人工呼吸器装着を要するが、硬直しており上記薬剤を積極的に使用する。

 痙攣の原因は末梢神経であり、 意識は清明なので鎮痛剤も併用する。

 また、感覚刺激が痙攣をさらに誘導するため、暗く、静かな部屋で刺激を減らす。

⑥自律神経異常

 血圧などが不安定となるため、状態に応じてカテコラミンや降圧薬などを使用する。

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