呼吸器

気管支喘息|症状・検査/診断・治療

喘息を疑う症状

 ・夜〜明け方に多い咳

 ・アレルギー歴

 ・誘発因子がある(季節、運動、風邪など)

wheezeの重症度分類

 0度 聴取しない

 1度 強制呼吸時のみ聴取

 2度 平静呼気時にも聴取

 3度 平静呼吸で呼気・吸気どちらでも聴取

 4度 呼吸音の減弱(silent chest)

 ※カルテ記載しておくと改善したか身体所見上でわかりやすい。

喘息の診断

 スパイロメトリーで以下2つを認めるとき。

  ①FEV1%(1秒率)が 75〜80%以下(閉塞性障害)

  ②気道可逆性がある(以下)

他に、喀痰中の好酸球増加や呼気NO上昇、アレルギー性鼻炎、鼻茸などあれば喘息の疑いが増す。

②気道可逆性の証明について

サルブタモール(サルタノール®︎ベネトリン®︎)吸入の前後で1回ずつスパイロメトリーを行い、吸入前にくらべて吸入後で、「1秒量が200ml以上 かつ 12%以上改善」することを確認する。

※SABA(短時間作用型β2刺激薬)は検査前4時間、LABA(長時間型)は15時間以上中止しておくこと。
※慢性の喘息では気道のリモデリングがすすみ可逆性が喪失していることがある。

鑑別診断:

心不全、COPD、肺癌、気管支拡張症、肺炎・気管支炎、気道異物、パニック障害、過換気症候群など

喘息治療のステップ

治療は全例で「コントロール良好」をめざし、stepをアップダウンさせる。

 ※コントロール良好・・・喘息症状なし

コントロール良好の期間が3〜6ヶ月ほど持続したらstep downを検討するが、焦らない。

吸入ステロイド併用追加治療発作治療
step 1低用量(なしでも可)
かわりにLTRAやテオフィリン徐放製剤も可
なしLTRA以外の
抗アレルギー薬
吸入SABA
step 2低〜中等量左記で不十分なら1剤追加
LABA(合剤も可)
LTRA
テオフィリン徐放製剤
LAMA
LTRA以外の
抗アレルギー薬
吸入SABA
step3中〜高用量左記に1剤以上併用
LABA(合剤も可)
LTRA
テオフィリン徐放製剤
LAMA
LTRA以外の
抗アレルギー薬
吸入SABA
step4高用量以下を複数併用
step3の薬剤
抗IgE抗体
抗IL-5抗体
抗IL-5Rα抗体
経口ステロイド薬
気管支熱形成術
(step3以外の薬は適応等注意)
LTRA以外の
抗アレルギー薬
吸入SABA

※LABA(長時間作用性β2刺激薬)、SABA(短時間作用性β2刺激薬)、LTRA(ロイコトリエン受容体拮抗薬)、LAMA(長時間作用性抗コリン薬)、抗IL-5Rα抗体(抗IL-5受容体α鎖抗体)

(喘息予防・管理ガイドライン2018から引用、一部改変)

喘息治療薬

<<吸入ステロイド>>

ドライパウダー(DPI)低用量中用量高用量
フルタイドディスカス1001回1吸入 1日2回1回2吸入 1日2回1回4吸入 1日2回
フルタイドディスカス100×1回1吸入 1日2回1回2吸入 1日2回
加圧式(pMDI低用量中用量高用量
フルタイドエアゾール1001回1吸入 1日2回1回2吸入 1日2回1回4吸入 1日2回
キュバール100エアゾール1回1吸入 1日2回1回2吸入 1日2回1回4吸入 1日2回
オルベスコ1001回1~2吸入 1日1回1回4吸入 1日1回1回4吸入 1日2回
オルベスコ2001回1吸入 1日1回1回2吸入 1日1回1回2吸入 1日2回

<<吸入ステロイド+長時間作用性β2刺激薬>>

ドライパウダー(DPI)低用量中用量高用量
アドエア100ディスカス1回1吸入 1日2回××
アドエア200ディスカス×1回1吸入 1日2回×
アドエア500ディスカス××1回1吸入 1日2回
シムビコートタービュヘイラー1回1吸入 1日2回1回2吸入 1日2回1回4吸入 1日2回
レルベア100エリプタ1回1吸入 1日1回1回1吸入 1日1回×
レルベア200エリプタ×1回1吸入 1日1回1回1吸入 1日1回
加圧式(pMDI低用量中用量高用量
アドエア50エアゾール1回2吸入 1日2回××
アドエア125エアゾール×1回2吸入 1日2回×
アドエア250エアゾール××1回2吸入 1日2回
フルティフォーム50エアゾール1回2吸入 1日2回××
フルティフォーム125エアゾール×1回2吸入 1日2回1回4吸入 1日2回

<<SABA:短時間作用性β2刺激薬>>

 例)サルタノールインヘラー100μg:1回2吸入、1日4回吸入まで(1日合計8吸入まで)
 例)メプチンエアー10μg:同上

<<SMART療法:シムビコートについて>>

シムビコートをコントローラーとして使用する場合、作用時間が早いので発作治療として追加吸入してもよい。発作時には1回1吸入する。通常吸入と発作時の吸入の合計が8吸入まで使用できる(中用量だと4回まで)。

<< LAMA:長時間作用型抗コリン薬>>

 例)スピリーバ2.5μgレスピマット:1回2吸入、1日1回

 ※前立腺肥大症の強い人や、コントロール不良で眼圧上昇を有する緑内障の人では避ける。

<<ロイコトリエン拮抗薬>>

 例)プランルカスト(オノン®︎):112.5mg4Cp2×朝夕食後
 例)モンテルカスト(シングレア®︎キプレス®︎):10mg1T1×就寝前

<<テオフィリン徐放剤>>

 例)テオドール、テオロング、ユニフィルLAなど:400mg2T2×朝夕食後

 ※血中濃度を定期的に測定し、8〜12μg/mLを目安に。

喘息発作の対応

症状SpO2酸素投与吸入β2刺激薬ステロイド追加治療
喘鳴動くときつい96%以上手持ちのデバイスを使用
小発作苦しいが横になれる
中発作苦しくて横になれない91〜95%必要ネブライザー(※1)
20〜30分間隔
アミノフィリン点滴(※2)
ステロイド点滴(※3)
0.1%ボスミン0.1〜0.3mL皮下注射(※4)
抗コリン薬吸入
大発作動けない
会話困難
90%以下必要ネブライザー(※1)
20〜30分間隔
アミノフィリン持続点滴(※5)
ステロイド点滴(※3)
0.1%ボスミン0.1〜0.3mL皮下注射(※4)
抗コリン薬吸入

※1ネブライザー:メプチン®︎かベネトリン®︎を0.3〜0.5mLを生食2mLに混ぜて使用。頻脈等に注意。

※2アミノフィリン点滴:アミノフィリン6mg/kg+生食200mL。1/2を15分でおとし、残りを45分で滴下。

※2ステロイド点滴:メチルプレドニゾロン40〜125mg+生食50mL。以降は40〜80mgを6時間ごと。アスピリン喘息を否定できない場合は、ベタメタゾン4〜8mgかデキサメタゾン6.6〜9.9mgを使用。

※3ボスミン皮下注:虚血性心疾患、緑内障(開放隅角緑内障は可)、甲状腺機能亢進症には禁忌。

※4アミノフィリン持続点滴:※1の点滴後、125〜250mgを5〜7時間程度で点滴。血中テオフィリン濃度10〜20μg/mLを目安。頭痛・嘔気・動悸・期外収縮など出現したら中止。

喘息発作受診後の帰宅について

治療開始後2時間たっても改善が十分でない場合は入院が必要。

帰宅できる場合は、コントローラーのstep upの指示を出し、一時的に経口ステロイド薬の処方を行い、早めの外来フォローをしてもらう。

 例)プレドニゾロン5mg6T2×朝・夕食後(朝4、夕2)

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