呼吸器

COPD(慢性閉塞性肺疾患)|症状・検査/診断・治療

COPDの症状・身体所見

疑う症状:
40歳以上の喫煙者で、慢性の咳・痰を認め、労災時の呼吸困難を認める人など

胸部聴診:
呼吸音減弱、呼気延長、crackleや wheezeの聴取

ほか身体所見:
樽状胸郭、頻呼吸、口すぼめ呼吸、チアノーゼなど

COPDの診断基準

 気管支拡張薬吸入15分後の呼吸機能検査でFEV1%(1秒率)<70%と低下していて、他疾患を除外できるとCOPDと診断される。

※FEV1%は高齢者で下がりやすく(過剰診断)、若年者で増えやすい(過少診断)ので注意。

COPDの他の検査

胸部Xp:
透過性亢進、滴状心、横隔膜平坦化

胸部CT:
気腫型COPDでは上肺野優位の気腫性変化などを認める。(対照は非気腫型COPD)

血液ガス:
呼吸不全(PaO2やPaCO2など)の状態把握のため定期的に測定

心エコー:
COPDが進行すると右心不全をきたす

COPDの重症度分類 

病期FEV1.0(対標準1秒率)
80%~
50~79.9%
30~49.9%
~30%

COPDの治療法

①禁煙

禁煙は必須。

病期進行の抑制、症状緩和、増悪頻度の低下、死亡率の抑制ができる。

禁煙外来を適宜利用。

②重症度別の治療

※SAMA(短時間作用型抗コリン薬)、LAMA(長時間作用型抗コリン薬)、 SABA(短時間作用性β2刺激薬)、 LABA(長時間作用性β2刺激薬)、ICS(吸入ステロイド薬)

※SAMAは緑内障、前立腺肥大症に禁忌

※LAMAは緑内障に禁忌、排尿困難のつよい前立腺肥大症には注意

③CAT(COPDアセスメントテスト)

低得点ほどコントロール良好。COPDの影響が、
 9点以下→低い
 10~20点→中等度
 21~30点→高い
 31点以上→非常に高い。

mMRC(modified MRC)

grade 0負荷のかかる運動の時のみ呼吸苦がある
grade 1高所へのぼるときや平地を急ぐときに呼吸苦がある
grade 2呼吸苦のため同年代の人よりゆっくり歩いている。または自分のペースで歩いていても呼吸のために休憩しないといけない
grade 3100mあるいは数分の歩行で休憩しないといけない
grade 4外出や着替えだけで呼吸苦がある

COPDの吸入薬

①SAMA(短時間作用型抗コリン薬)

 例)アトロベントエロゾル20μg:1回1~2吸入 1日3~4回吸入

※SAMAは緑内障、前立腺肥大症に禁忌

②LAMA(長時間作用型抗コリン薬)

 例)スピリーバ2.5μgレスピマット:1回2吸入 1日1回吸入

※LAMAは緑内障に禁忌、排尿困難のつよい前立腺肥大症には注意

③SABA(短時間作用性β2刺激薬)

 例)メプチンエアー10μg:1回2吸入、1日4回吸入まで

 例)サルタノールインヘラー100μg:同上

④ LABA(長時間作用性β2刺激薬)

 例)オンブレス吸入用カプセル150μg:1回1Cp  1日1回吸入

 例)セレベントディスカス50μg:1回1吸入 1日2回(朝、就寝前)

⑤LAMA+LABA配合剤

 例)ウルティブロ吸入カプセル:1回1Cp 1日1回吸入

 例)アノーロエリプタ:1回1吸入 1日1回吸入

 例)スピオルトレスピマット:1回2吸入 1日1回吸入

⑥ ICS(吸入ステロイド薬)+ LABA

 例)アドエア250250ディスカス:1回1吸入 1日2回吸入

 例)シムビコートタービュヘイラー:1回2吸入 1日2回吸入

 例)レルベア100エリプタ:1回1吸入 1日1回吸入

⑦COPDの他の治療法

 ・フレイル予防

 ・呼吸リハビリテーション

 ・予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)

 ・痰の多い患者に去痰剤の併用

COPD急性増悪時の対応

①状態の把握

意識状態、SpO2、体温、呼吸数、浮腫(右心不全)、胸部聴診(肺炎合併など)、呼吸不全(PaO2、PaCO2など動脈血液ガス)、胸部Xpなど各種検査。

急性増悪の原因は感染症が多く、チェックする。

他に、心不全の合併などにも注意。気腫肺なのでリスクあり、気胸もチェック。

②酸素投与

PaO2 90~95%程度を目標に酸素投与する。CO2ナルコーシスに注意

酸素は漸増とするが、できるだけ早く低酸素状態を脱するようにする。

CO2ナルコーシスのサイン(呼吸抑制、意識障など)が出現した場合は速やかにNPPV(非侵襲的陽圧換気)を考慮する。

③吸入気管支拡張薬

 ネブライザーや SABA・SAMAを使用。

④ステロイド薬

 例)プレドニゾロン5mg6~8T/日 5~7日間

 経口困難時は

 例)メチルプレドニゾロン40mg~80mg/日 5~7日間

 

⑤ほか

 感染や心不全があればそれに応じた治療を同時に行う

 訪問診療でみている患者やHOT利用の患者はリスク高く、キノロン系などを積極的に使用

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