甲状腺機能亢進症の症状・身体所見
症状:体重減少、動悸、発汗、不眠など
身体所見:眼球突出、手指振戦、頻脈、びまん性甲状腺腫大など
甲状腺機能亢進症の検査所見・診断
TSH↓、FT4↑であれば、TRAb(TSH受容体抗体)を測定し、陽性であればバセドウ病(Basedow病)。
TRAb陰性の時でも、以下を認めるとバセドウ病の確率があがる。
・FT3/FT4>0.3
・甲状腺エコーで血流亢進
・経過観察しても機能亢進が続く
・甲状腺シンチグラフィで取込み亢進(低下→無痛性・亜急性甲状腺炎)
バセドウ病以外に機能亢進するもの:薬剤性や無痛性・亜急性甲状腺炎(一過性)などあり、甲状腺機能亢進を認めたときは甲状腺エコーも行うこと。
甲状腺機能亢進症・バセドウ病の治療
・薬剤性は原因薬剤の中止や減量を。
・無痛性・亜急性甲状腺炎は甲状腺機能を測定しつつ経過観察。
バセドウ病(Basedow病)の治療
抗甲状腺薬の選択
抗甲状腺薬にはチアマゾール(メルカゾール®︎:MMI)とプロピルチオウラシル(チウラジール®︎:PTU)がある。
それぞれの注意点は以下。
MMI:妊娠初期で催奇形性の報告
PTU:無顆粒球症
共通(用量依存):嘔気、嘔吐、蕁麻疹、筋肉痛など
例)メルカゾール5mg 3~6T1×朝食後
例)チウラジール50mg 6T3×毎食後
抗甲状腺薬開始後の調整方法
①治療開始後数ヶ月間は2~4週ごとにFT3,FT4,血球,肝胆道系酵素を測定。
(FT4が正常化したらTSHを追加)
②FT4が正常に近づいたら6→3T/日、3→2T/日に減量。
③TSHを基準値内で保つようにコントロールする。
④TSHが数ヶ月維持できていれば徐々に抗甲状腺薬を減量する。
(例:偶数日 2T奇数日1Tや日曜日のみ1Tなど患者に応じて)
⑤TSHが基準値下限に近づく場合は一つ前の投与量に戻して数ヶ月様子をみてから、さらにゆっくり減量する。
⑥1日1Tで6ヶ月以上TSH値が保たれれば隔日投与にする。
⑦隔日1Tで6~12ヶ月以上保たれていて、TRAbが陰性であれば内服中止を検討する(内服期間が長い方が寛解率は高い)。
⑧中止後再発する例も多く、中止後も甲状腺機能をフォローすること。
※実際にはコントロールが難しい症例も多く、観察期間も長いので難しい場合はムリをせずに専門医へ紹介すること。
バセドウ病の随伴症状
動悸や振戦:
本態性振戦に適応のあるβブロッカーを使用する。
例)アロチノロール(アルマール®︎)10mg1T1×朝食後
眼球突出:
治療を要する場合は、ステロイドパルスなどが行われるため眼科へ紹介する。
精神症状:
ホルモンが不安定のために不眠症やうつ傾向がみられる。不眠症には睡眠導入剤を一時的にどうにゅうしても良いが、うつ病かどうかの判断は難しく、また抗うつ薬の投与も慎重にすべきである。
食欲亢進・体重減少・下痢など:
下痢に対しては感染性が否定的であれば整腸剤や止痢剤を一時的に使用してもよい。バセドウ病自体が落ち着けば症状も落ち着いてくる。