腰部脊柱管狭窄症の症状
腰椎部の脊柱管が狭くなり,神経や血流障害を起こして症状を来す。
狭窄部によって症状が異なる。
- 下肢や臀部のしびれ、痛み
- 下肢筋力低下
- 間欠性跛行(歩行で悪化、前屈・座位で改善)
- 排尿障害 など
腰部脊柱管狭窄症の診断
腰部脊柱管狭窄症診断サポートツールでまず判断する。
カットオフ7点で腰部脊柱管狭窄症の感度92.8%、特異度72.0%。
病歴 | 年齢 | 60歳未満(0) |
60~70歳(1) | ||
71歳以上(2) | ||
問診 | 糖尿病の既往 | あり(0)、なし(1) |
間欠跛行 | あり(3)、なし(0) | |
立位で下肢症状が悪化 | あり(2)、なし(0) | |
前屈で下肢症状が軽快 | あり(3)、なし(0) | |
身体所見 | 前屈による症状出現 | あり(-1)、なし(0) |
後屈による症状出現 | あり(1)、なし(0) | |
ABI(*) 0.9 | 以上(3)、未満(0) | |
アキレス腱反射低下・消失 | あり(1)、正常(0) | |
SLRテスト(*) | 陽性(-2)、陰性(0) |
(*)ABI:足関節上腕血圧比
(**)SLRテスト(下肢伸展挙上テスト):臥位にして下肢を片方伸展したまま挙上させて、70~80°以下で下肢背側に痛み・しびれが出現した場合陽性。
確定診断にはMRIを行い、神経の圧迫所見を認める。
ただし、画像上所見を認めても必ずしも症状の原因とはいえず、総合的に判断すること。
また、ヘルニアや悪性腫瘍などが原因になっていないかを確認すること。
腰部脊柱管狭窄症の治療
生活指導
加齢に伴い発症・進行しやすいが、姿勢が悪い・運動不足などがリスクになるため、悪化を防ぐためにも姿勢の改善や運動・ストレッチを勧める。
間欠性跛行で歩けない場合は、座位を途中で入れて休憩するか、自転車にするなどすると行える可能性がある。
薬物療法
特効薬はないが、血管拡張作用などを狙いプロスタグランジンE1 誘導体製剤が投与されることが多い。
例)リマプロストアルファデクス(オパルモン®、プロレナール®)5μg3T3×毎食後
※易出血性に注意
神経痛・しびれが強い場合には以下を併用。
例)プレガバリン(リリカOD®)75mg 2T2×朝夕食後で開始
※ふらつきや眠気などの副作用多く、特に高齢者では25mg2T2×朝夕食後などで開始する。
※副作用・効果を見ながら増量する。
いわゆる腰痛を伴う場合はNSAIDsやアセトアミノフェン、湿布を併用する。
NSAIDs例)セレコキシブ(セレコックス®)100mg 2T2×朝夕食後
アセトアミノフェン例)アセトアミノフェン200mg 6T3×毎食後
湿布例)ロキソプロフェンテープ(ロキソニンテープ®)100mg 1日1枚
慢性腰痛症に対してSNRIが有効な場合もある。
例)デュロキセチン(サインバルタ®)20mg 1Cp1×朝食後
※1週間以上あけて20mgずつ増量、最大60mg
手術の適応
重症例(下肢麻痺・膀胱直腸障害など)は後遺症を残す可能性がきわめて高く、すぐに専門医へ紹介すること。
それ以外でも、有症状で長期化すると神経症状の改善が得られにくいので、1~2ケ月で症状改善が乏しい場合は専門医へ紹介すること。