クロール(Cl):血清について
クロール(Cl)は細胞外液中の主要な陰イオンであり、ナトリウム(Na)と共に体内の浸透圧と酸塩基平衡の調節に不可欠です。クロールの血清および尿中濃度の測定は、水分代謝異常や酸塩基平衡障害の診断に重要です。特に、クロールの変動はナトリウムの濃度変動と通常平行していますが、重炭酸イオンの変動によって異常が引き起こされることがあります。このため、クロール濃度の測定は、代謝性アシドーシスやアルカローシスの診断において重要な指標となり、適切な治療方針の策定に役立ちます。クロール測定は臨床上、心不全の予後評価や腎機能のモニタリングにも用いられます。
クロール(Cl):血清の基準値
基準値:98~108mEq/l
クロール(Cl):血清の増加
【消化管】下痢
【呼吸器】過換気症候群, 肺気腫
【脳神経】脳炎, 口渇中枢障害
【腎臓】尿細管性アシドーシス, 急性腎不全, 低アルドステロン症, ネフローゼ
【代謝・内分泌】原発性アルドステロン症, クッシング症候群, 11β-ヒドロキシラーゼ欠損症, Addison病, 低アルドステロン症
【その他】 呼吸性アルカローシス, 高張性脱水症, 食塩負荷, ACTH投与, ステロイド投与, AG正常高Cl血症性代謝性アシドーシス, 偽性高Cl血症
クロール(Cl):血清の減少
【呼吸器】呼吸筋障害, 呼吸性アシドーシス, 肺気腫, 肺炎
【腎臓】腎不全, 慢性腎炎, 尿細管性アシドーシス, Na喪失性腎症, 糖尿病性腎症
【代謝・内分泌】Addison病, SIADH, ACTH単独欠損症, 慢性副腎皮質機能低下症, 21-ヒドロキシラーゼ欠損症(塩喪失型), 代謝性アルカローシス, 低アルドステロン症
【循環器】重症心不全
【消化管】嘔吐, 胃液吸引
【肝臓】非代償性肝硬変
【その他】水分過剰投与, 低張性脱水症, 利尿剤投与, 悪性疾患末期