新型コロナウイルス感染症(COVID−19)診療のガイドライン
厚労省主導で作成している「新型コロナウイルス感染症(COVID−19)診療の手引き 第6.1版」(2021年12月28日改定)に詳細に現段階の情報をまとめてあるため、そちらを参照してほしい。
第6.1版ではオミクロン株について、中和抗体薬や経口抗ウイルス薬のモルヌプラビルなどについて追加されている。
この記事は基本的に上記を参考に記載しています。
SARS-CoV-2
用語:
SARS-CoV-2による感染症をCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)という。
SARS-CoV-2の感染経路:
飛沫やエアロゾルを吸入することが主要感染経路。エアロゾルはあ空気中にとどまるため、1m以内でも感染リスクあり、換気が重要。
SARS-CoV-2はプラスチック表面で最大72時間、ボール紙で24時間生存する。
血液・尿・便から感染性のあるSARS-CoV-2が検出されることはまれ。
潜伏期・感染性:
1~14日間。暴露から5日程度で発症することが多いが、発症前から感染性はある。感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度。
COVID-19の症状
日本国内2020年1月25日~2021年5月6日までに入院した770例のデータ
症状 | 頻度 |
発熱 | 52% |
呼吸器症状 | 29% |
倦怠感 | 14% |
頭痛 | 8% |
消化器症状 | 6% |
鼻汁 | 4% |
味覚異常 | 3% |
嗅覚異常 | 3% |
関節痛 | 3% |
筋肉痛 | 1% |
変異株による差は明確になっていない。
重症化リスク
- 65歳以上
- 悪性腫瘍
- COPD
- 慢性腎臓病
- 2型糖尿病・高血圧・脂質異常症
- 肥満(BMI≧30)
- 喫煙
- 固形臓器移植後の免疫不全
- 妊娠後期
- ステロイドや生物学的製剤の使用(評価中)
- HIV感染症(特にCD4<200μL)(評価中)
- ・ワクチン接種は重症化リスクを下げる。
入院患者の予後予測スコアとして、COVIREGIーJPの解析があり、合計スコアから酸素療法が必要となるリスクが大きい患者を予測できる(「新型コロナウイルス感染症(COVID−19)診療の手引き 第6.1版」(2021年12月28日改定)のp15にスコア詳細あり)。
COVID-19の画像所見
様々なタイプの間質性肺炎の所見を呈する。胸部CTで所見を認める症例のうち、1/3は胸部Xpで所見を認めないというデータもあり、CTを有効活用したい。
COVID-19の合併症
呼吸器:
ARDSなど
心血管系:
不整脈、心筋炎など
血栓塞栓症:
入院患者の1.86%にみられる。多い順に、深部静脈血栓、肺血栓塞栓症、症脳梗塞、心筋梗塞など。
ほかに、炎症性合併症、二次性細菌・真菌感染症がある。
COVID-19の後遺症
呼吸器症状:
咳、喀痰、息切れ、胸痛
全身症状:
倦怠感、関節痛、筋肉痛
精神・神経症状:
記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ
その他の症状:
味覚障害、嗅覚障害、動悸、下痢、腹痛
発症または診断から6ヶ月後で2~3割、12ヶ月で1割程度になんらかの後遺症を認める。
後遺症は、高齢、肥満、女性で遷延しやすく、ワクチン接種後の罹患では減少する。
COVID-19の検査
検査の対象者 | 核酸検出検査 | 抗原検査(定量) | 抗原検査(定性) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
検体 | 鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | 鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | 鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | |
有症状者(症状消退者含む) | 発症から9日目以内 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × (※1) |
発症から10日目以降 | ○ | ○ | ー (※3) | ○ | ○ | ー (※3) | △ (※2) | △ (※2) | × (※1) | |
無症状者 | ○ | ー (※3) | ○ | ○ | ー (※3) | ○ | ー (※4) | ー (※4) | × (※1) |
(※1)有症状者への使用は研究中。無症状への使用は研究を予定。
(※2)陰性の場合で、臨床増から必要な場合は他検査を使用すること。
(※3)推奨されない。
(※4)確定診断としての使用は推奨されないが、感染拡大地域の医療機関や高齢者施設において幅広く検査を実施する際にスクリーニングに使用することは可能。ただし、結果が陰性でも感染予防策を継続すること。また、結果が陽性の場合、医師が必要と認めれば拡散検出検査などにより確認すること。
※鼻腔検体は引き続き検討が必要だが有用な検体である。
COVID-19の重症度分類
重症度 | SpO2 | 臨床状態 | 治療方針 |
軽症 | ≧96% | 咳のみ or 呼吸器症状なし いずれでも肺炎所見なし | 基本は対症療法で経過観察。急速な病状悪化に注意。 重症化リスク因子のある患者は中和抗体薬とモルヌピラビルの適応あり。 |
中等症Ⅰ (呼吸不全なし) | 93~96% | 呼吸困難 肺炎所見 | 1日3回SpO2測定。必要に応じて血液検査(予後予測スコアなど参考)。 細菌感染の併発が疑われる場合は抗菌薬投与。 レムデシビル投与を考慮。 |
中等症Ⅱ (呼吸不全あり) | ≦93% | 酸素投与が必要 | ステロイドを早期に使用すべき。 レムデシビル投与を考慮。 D-ダイマー測定し抗凝固療法を検討。 細菌感染や他合併症にも注意。 |
重症 | ICU 人工呼吸器 | 中等症Ⅱの治療に加えて人工呼吸器管理やECMOの導入など高度医療が必要。 D-ダイマー測定し抗凝固療法を検討。 血液浄化療法なども検討される。 |
治療法の各論についてはガイドラインを参照していただきたい。