概要
髄膜炎は、脳や脊髄を覆う髄膜の炎症を指し、細菌、ウイルス、結核菌、真菌、自己免疫、悪性腫瘍など多様な原因によって引き起こされる。発症の経過は急性から亜急性まで幅広く、病原体によって重症度や治療法が大きく異なる。
細菌性髄膜炎 は致死率が高く、迅速な診断と治療が生命予後を左右する。一方、ウイルス性髄膜炎 は自然治癒することが多いが、髄膜脳炎へ進行する場合もある。結核性髄膜炎 は慢性経過をとり、診断が遅れやすいため注意が必要である。
分類
髄膜炎の種類 | 主な原因 |
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細菌性髄膜炎 | 肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、B群溶連菌、大腸菌、リステリア菌 |
ウイルス性髄膜炎 | エンテロウイルス(エコーウイルス、コクサッキーウイルス)、ムンプスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV-2) |
結核性髄膜炎 | 結核菌(Mycobacterium tuberculosis) |
真菌性髄膜炎 | クリプトコッカス、カンジダ |
非感染性髄膜炎 | 自己免疫疾患(SLE、ベーチェット病)、癌性髄膜炎、薬剤性 |
疫学
- 細菌性髄膜炎 は年間約1,500例発生し、死亡率・後遺症率が高い
- ウイルス性髄膜炎 は無菌性髄膜炎の大部分を占め、比較的予後良好
- 結核性髄膜炎 は免疫不全者に多く、診断が遅れやすい
- 真菌性髄膜炎 はHIV感染者や免疫抑制状態の患者で発症しやすい
身体所見・症状
- 発熱、頭痛、意識障害、項部硬直が主要症状
- 髄膜刺激徴候(Kernig徴候、Brudzinski徴候)が陽性となることが多い
- ウイルス性髄膜炎 では倦怠感、筋肉痛、皮疹を伴うことがある
- 結核性髄膜炎 では亜急性経過をとり、視力・聴力障害、脳神経麻痺を合併しやすい
検査・診断
髄液検査
所見 | 細菌性髄膜炎 | ウイルス性髄膜炎 | 結核性髄膜炎 |
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初圧 | 上昇 | 正常〜軽度上昇 | 上昇 |
細胞数 | 100~10,000/μL(多形核球優位) | 30~300/μL(単核球優位) | 10~1,000/μL(単核球優位) |
蛋白 | 高値(100~500mg/dL) | 正常〜軽度上昇 | 高値(50~300mg/dL) |
糖 | 低値(血糖比≦0.4) | 正常範囲 | 低値(血糖比≦0.5) |
特徴 | グラム染色陽性 | 髄液PCR陽性 | ADA高値(15U/L以上) |
合併症
治療法
細菌性髄膜炎 の治療
- セフトリアキソン(ロセフィン®) 2g 12時間ごと 静注
- バンコマイシン(バンコマイシン®) 500~750mg 6時間ごと 静注
- 副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン®) 0.15mg/kg 6時間ごと 静注(4日間継続)
ウイルス性髄膜炎 の治療
- 支持療法(安静、水分補給、解熱鎮痛薬)
- 抗ウイルス薬(アシクロビル®) 10mg/kg 8時間ごと 静注(HSV-2、VZVの場合)
結核性髄膜炎 の治療
- イソニアジド(イスコチン®)、リファンピシン(リファジン®)、ピラジナミド(ピラマイド®)、エタンブトール(エサンブトール®)の4剤併用(2か月)
- その後、イソニアジド+リファンピシンを9~12か月継続
- 副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン®)を6週間かけて漸減