肺炎の分類
肺炎の分類により対応が異なる。
CAP | 市中肺炎 | 以下以外の市中での肺炎 |
HAP | 院内肺炎 | 入院48時間以上経過した患者におきた肺炎 |
NHCAP | 医療・介護関連肺炎 | ①~④のいずれかに起きた肺炎 ①療養病床入院・介護施設入所 ②90日以内に退院 ③介護を要する高齢者、身体障害者(*) ④通院で継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬など)を受けている |
CAP(市中肺炎)の対応
①A-DROPで重症度を判定し治療する場所を決定
A(Age) | 男性≧70歳、女性≧75歳 |
D(Dehydration) | BUN≧21mg/dLまたは脱水あり |
R(Respiration) | SpO2≦90%(PaO2≦60torr) |
O(Orientation) | 意識障害あり |
P(blood Pressure) | 収縮期血圧≦90mmHg |
<該当する項目数で判定>
軽症:0ヶ
中等症:1~2ヶ
重症:3ヶ
超重症:4~5ヶ。ただしショックがあれば1ヶでも超重症。
↓↓
軽症~中等症:外来
中等症~重症:一般病棟入院
重症~超重症・敗血症:ICUなど
②定型肺炎と非定型肺炎の鑑別
- 年齢<60歳
- 基礎疾患なしか軽微
- 頑固な咳がある
- 胸部聴診所見が乏しい
- 痰なし、あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない
- 末梢白血球数が10,000/μL未満
上記の該当数で鑑別(感度78%、特異度93%で非定型を鑑別)。
4項目以上→非定型肺炎
3項目以下→細菌性肺炎
③CAPの治療
可能な限り喀痰培養を提出すること。
抗菌薬に加え、去痰剤処方や、喘息患者では喘息悪化に備える。
適宜酸素投与なども行う。
(抗菌薬処方例)
外来 | 内服薬 | 1)オーグメンチン250mg3T3×とアモキシシリン(サワシリン®︎)250mg3T3×を併用 2)レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg1T1×(結核を否定してから) |
点滴 | 1)セフトリアキソン(ロセフィン®︎) 2g 1日1回 | |
非定型疑い | 1)アジスロマイシン(ジスロマック®︎)250mg 2T1×3日間 | |
一般病棟 | 点滴 | 1)セフトリアキソン(ロセフィン®︎) 2g 1日1回 2)スルバクタム・アンピシリン(ユナシンS®︎) 3g 1日2回 |
非定型疑い | 1)アジスロマイシン(ジスロマック®︎)500mg 1日1回点滴 2)レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg 1日1回点滴 |
|
ICU | 点滴 | 1)スルバクタム・アンピシリン(ユナシンS®︎) 3g 1日2回 2)メロペネム(メロペン®︎)1g 1日2、3回 3)タゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン®︎)4.5g 1日3、4回 状態に応じ、1)2)3)いずれかに以下の追加を検討。 4)アジスロマイシン(ジスロマック®︎)500mg 1日1回点滴 5)レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg 1日1回点滴 6)バンコマイシン1g 1日2回(TDMに応じる) |
HAP・NHCAPの対応
①重症度の評価
●NHCAP → AーDROPで判定
A(Age) | 男性≧70歳、女性≧75歳 |
D(Dehydration) | BUN≧21mg/dLまたは脱水あり |
R(Respiration) | SpO2≦90%(PaO2≦60torr) |
O(Orientation) | 意識障害あり |
P(blood Pressure) | 収縮期血圧≦90mmHg |
<該当する項目数で判定>軽症:0ヶ
中等症:1~2ヶ
重症:3ヶ
超重症:4~5ヶ。ただしショックがあれば1ヶでも超重症。
●HAP → IーROADで判定
I (Immunodeficiency) | 悪性腫瘍や免疫不全状態あり |
R(Respiration) | SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する |
O(Orientation) | 意識レベル低下 |
A (Age) | 男性≧70歳、女性≧75歳 |
D(Dehydration) | 乏尿や脱水 |
<該当する項目数で判定>
3~5項目該当→重症
0~2項目該当
→1)CRP≧20mg/dL、2)胸部Xpで肺炎像が片側肺の2/3以上
→いずれかあり:中等症、なし:軽症
②耐性菌リスクを検討
以下の2項目以上に該当で耐性菌の高リスク
1)過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴
2)過去90日以内に2日以上の入院歴
3)免疫抑制状態
4)活動性の低下(PS≧、バーセル指数<50、歩行不能、経管栄養または中心静脈栄養)
③HAP・NHCAPのエンピリック治療抗菌薬
重症度・耐性菌リスクから治療法を選ぶ。
ただし、繰り返す誤嚥性肺炎や、終末期の状態など患者状態も勘案すること。
軽症~中等症 かつ 耐性菌リスクなし | Escaalation治療 | <内服薬> 1)オーグメンチン250mg3T3× +アモキシシリン(サワシリン®︎)250mg3T3× +アジスロマイシン(ジスロマック®︎)250mg 2T1× 2)レボフロキサシンLVFX(クラビット®︎)500mg1T1× 3)シタフロキサシンSTFX(グレースビット®︎)100mg1T1× (STFXはLVFXより緑膿菌や嫌気性菌に有効) <点滴> 1)セフトリアキソン(ロセフィン®︎) 2g 1日1回 2)スルバクタム・アンピシリン(ユナシンS®︎) 3g 1日2回 |
中等症~重症 (または敗血症) または 耐性菌リスクあり | De-escalation治療 | <点滴> 1)タゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン®︎)4.5g 1日3、4回 2)メロペネム(メロペン®︎)1g 1日2、3回 3)セフェピム(マキシピーム®︎)1~2g1日2~3回 4)レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg1日1回 状態に応じ、1)2)3)いずれかに以下の追加を検討。 4)アジスロマイシン(ジスロマック®︎)500mg 1日1回点滴 5)レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg 1日1回点滴 6)バンコマイシン1g 1日2回(TDMに応じる) |
中等症~重症 (または敗血症) かつ 耐性菌リスクあり | De-escalation多剤治療 | <点滴> 以下を2剤併用(1~3から1つ+4 or 5) 1)タゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン®︎)4.5g 1日3、4回 2)メロペネム(メロペン®︎)1g 1日2、3回 3)セフェピム(マキシピーム®︎)1~2g1日2~3回 4)レボフロキサシン(クラビット®︎)500mg1日1回 5)アミカシン(アミカシン®︎)100~200mg1日2回 <MRSA感染疑いあり> 上記2剤に以下を追加。 6)バンコマイシン1g 1日2回(TDMに応じる) |