フリーランス(バイト)医になろうと思うけど、社会保険なくなるんだよね?
でも何が問題なの?
医師も自分の働き方を考えて、いろんな形態で働くことがふえています。
常勤ではなく、非常勤バイトだけで働くことを考える医師もいます。
ここで注意が必要なのが、常勤(正職員)から非常勤やバイトになると社会保険の適応から外れてしまうということ。
でもそもそも社会保険ってなに?入ってた方がいいの?と疑問になりますよね。
この記事を読むとこんなことがわかります。
- 社会保険とは
- 社会保険の加入要件
- 健康保険・国民健康保険
- 国民年金・厚生年金
- 雇用保険
- 労災保険
この記事を読み終えると、自分には社会保険が必要かがわかります。
結構内容は難しいですが、できるだけかみくだいて解説していますのでぜひ最後まで読んでみてください。
医師における社会保険のメリット・デメリット
まず最初に、社会保険のメリットとデメリットを挙げます。
メリット
- 社会保険料は病院が折半してくれている
- 健康保険は傷病手当や出産育児一時金がもらえたりする
- 健康保険は扶養家族分はタダ
- 厚生年金に入れる
- 扶養の配偶者はタダで国民年金をもらえる
- 雇用保険(失業保険)に入れる
デメリット
- 年収や世帯人数などによっては健康保険の方が高い
- 厚生年金・雇用保険に加入(支払い)
このように、社会保険にはたくさんのメリットはありますが、デメリットは支払いが増えることです。
医者も社会保険に入った方がいいのか?
結論から言うと、社会保険は加入できるならしておいた方がもちろんいいです。
ただし、医師はバイトの方が給料が多いことがよくあります。
簡単に2つに分けてみましょう。
常勤:安い給料だけど社会保険あり
非常勤:高い給料だけど社会保険なし
給料の差にもよりますが、社会保険の必要度も転職のときは気にした方がいいでしょう。
社会保険加入の条件:バイトでも入れる場合がある
非常勤医(バイト医)は社会保険に加入できないと思われがちですが、要件次第では加入できます。
社会保険加入要件(令和4年度10月~)
働く場所(病院):
・被保険者の総数が常時100人を超える
短時間労働者(フリーランス医):
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・月額88,000円以上
・継続して2ヶ月を超えて使用される見込み
・学生でないこと
→働く場所と労働者の要件がどちらも満たされたら、社会保険に加入可
令和6年10月からは働く場所(病院)の要件が被保険者が常時50人超にへり、入りやすくなります。
また、病院側が人数の要件を満たさなくても、労使合意に基づき短時間労働者を適用対象者とする申し出をした場合も加入できます。
このため、病院にもよりますが、1日7時間×週3日の勤務でも社会保険に加入することができます。
ただし、これは同一病院での勤務で、複数の職場の合算はもちろんできません。
また、2カ所の病院で要件を満たした場合は主たる病院でのみ加入します。
社会保険は健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険
社会保険は5つの保険が合わさったもの。
健康保険:いわゆる医療保険
介護保険:40歳以上から支払い開始。65歳以上で要介護になったら支給
厚生年金:公的年金の2階部分
雇用保険:いわゆる失業保険
労災保険:業務中・通勤時の怪我や病気に対する保険
労災保険は、週1日のバイトでも全員入りますが、ほかは前述の基準をクリアした人だけが加入します。
また、労災保険以外は事業主と労働者がそれぞれ負担しますが、労災保険は事業主が全額負担するという違いがあります。
それでは、それぞれの保険について詳しく見ていきましょう。
健康保険と国民健康保険(国保)と医師国保
公共の医療保険には健康保険と国民健康保険があります。
健康保険:社会保険で加入
医師国保:社保適応外で、医師会に所属している人が加入できる
国民健康保険:それ以外の人が加入
医師で言うと、健康保険は常勤、国民健康保険はほとんどのバイト医が加入します。
国保では傷病手当金・出産手当がない
2つの保険に医療費の病院窓口負担割合(3割負担など)などには差はありません。
保障で差があるのは以下の点です。
国保では、、
- 傷病手当金・出産手当がもらえない
- 出産育児一時金がもらえない場合もある(市区町村による)
妊娠・出産の可能性がある人は出産手当がないのは痛いかもしれません。市区町村によるのでご自身の市区町村で調べてみてください。
傷病手当金は病気やケガで3日間連続で休んだ場合、4日目以降の休んだ分に対して、自分の標準報酬月額の2/3が支給される制度なので、市販の医療保険に近い感覚です。
傷病手当については詳しくは協会けんぽのHPをご覧ください。
健康保険では扶養の概念がある
健康保険には扶養の概念があります。
国保の場合、保険料は自分の分以外に、子供などの扶養している人数分の保険料を払う必要があります。
しかし、健康保険の場合は、扶養している家族の保険料は免除されるので扶養人数が多い場合は保険料が大きく違ってくる可能性があります。
逆に国保の方が安くなる場合もあります。
健康保険も国民健康保険も上限額がある
ただ、どちらの保険でも上限額が決まっているので高収入になってくるとどっちでも大して変わりません。
健康保険
上限の報酬月額1,355,000円~の場合:
介護保険なし(40歳未満)68,388円(136,776円)→年間820,656円
介護保険あり(40歳以上)80,898円(161,796円)→年間971,976円
国民健康保険
- 年間上限102万(介護保険あり)
- 年間上限85万(介護保険なし)
※令和5年度に+2万され、104万円か87万円に増。
※単身世帯・全国平均だと収入が1150万円が目安。
医師国保
医師国保は各都道府県の医師会が運営する国民健康保険。
加入対象者は社会保険の適応外で、医師会に所属している医師とその世帯家族です。
保険料が年収に関わらず一定なのが魅力です。東京都医師国民健康保険組合の月額保険料を例にすると、医師27,500円、家族7,500円とかなり安いです。
もし医師会に入っているなら加入を検討しましょう。
国民健康保険(国保)になったときの保険料をシミュレーションしよう
健康保険の料金は、今の給与明細を見れば大体の金額がわかります。
国保だとどれくらいの料金か知りたい場合は、以下のサイトでシミュレーションしてみてください。
健康保険のまとめ
健康保険:扶養あり。傷病手当金・出産手当あり。
国民健康保険:扶養なし。傷病手当金・出産手当なし。
保険料はシミュレーションして比較を!
厚生年金と国民年金
公的年金もおおきくわけて2つあります。
国民年金:
年金の1階部分。20~60歳の全員が加入。
厚生年金:
年金の2階部分。社会保険加入者は国民年金に加えて加入。
国民年金は20~60歳の全員が加入義務あり
国民年金は20~60歳の全員が加入します。
収める金額は一律月額16,590円(2022年度)です。
収入の少ない人には負担が大きく、社会保険に入りたくない人たちも多いですが、医師にとっては将来の貯蓄としては少なく、心許ない金額です。
厚生年金保険料の半分は企業(病院)もち&扶養配偶者の国民年金保険料込み
厚生年金は社会保険加入者が加入する年金です。1階部分にあたる国民年金にくわえて加入します。
厚生年金の支払いは報酬月額によってかわります。教会けんぽのHPに一覧があるのでそちらをご覧ください。
厚生年金保険料の上限は、報酬月額635,000円以上の人の、月額118,950円です。
そのうち半分は企業(病院)が払ってくれるので、自己負担は59,475円です。
つまり、年間713,700円を、企業が医師のために積み立ててくれているともいえます。給与明細には見えないけど、立派な収入といえるでしょう。
また、配偶者を扶養に入れている場合は、配偶者の国民年金保険料(月額16,590円→年額199,080円)が免除となります。
合わせると、年間912,780円もお得!
社会保険ありとなしで給与の条件比較するときは、これらの額も頭に入れておきましょう。
厚生年金保険料は産前産後の納付が免除
育児休暇や産前産後の休職の期間は、その間の保険料納付が免除されます(本人も病院も)。
免除されても、保険料を納めた期間として扱われるので将来受け取る年金額が少なくなることはありません。
3歳までの時短勤務の場合は給料も保険料支払額もへりますが、時短になる前の支払額を納めているとみなしてくれる(みなし措置)ので、将来の年金額は減りません。
国が勝手に積み立ててくれてる感じです。
出産の可能性がある人は健康保険のメリットもありますし、社会保険に加入していた方がお得でしょう。
厚生年金まとめ
- 公的年金の2階部分。
- 収入によって保険料がかわる。
- 保険料は病院が折半。扶養配偶者の国民年金の支払い免除(合計最大912,780お得)。
- 出産前後は特にお得
雇用保険(失業保険)
雇用保険は失業保険とも言われ、失業した時に給付される保険です。
2022年10月の雇用保険料率は1.35%(病院0.85%、被保険者0.5%)です。
雇用保険の給付は4種類に分けれられます。
求職者給付:失業者が再就職するまでの生活を保証するための給付
就職促進給付:失業者の再就職や再就職後の仕事の継続を応援するための給付
教育訓練給付:業務能力を伸ばすことを応援するための給付
雇用継続給付:介護や育児で休業する労働者や高齢者の就職を応援するための給付
雇用保険の失業手当給付条件
雇用保険で失業手当の給付をもらうためには2つの条件を満たす必要があります。
- ハローワークに求職申し込みをしていて、就職活動を積極的に行なっている
- 雇用保険加入期間が退職日以前の2年間に通算12カ月以上ある
ケガや病気、妊娠・出産・育児などでしばらく仕事に就けない場合は失業手当の給付対象外です。この場合は傷病手当を申請し、就活を始めたら失業手当の申請をしましょう。
雇用保険の失業手当給付でもらえる金額と期間
受給できる1日あたりの失業手当金は以下の計算式で計算します。
「退職前6カ月の賃金(除ボーナス)総額」÷180×0.5~0.8
ただ、上限額が年齢によって決まっており、大抵の医師は上限額だと思います。
30歳未満:6,760円
30歳以上45歳未満:7,510円
45歳以上60歳未満:8,265円
60歳以上65歳未満:7,096円
(2021年8月1日~)
また、給付期間は年齢や雇用保険加入期間によって異なります。
詳しくは、生命保険文化センター「生活基盤の安定を図る生活設計」のHPを参照してみてください。
たとえば、日額7,500円で300日間もらった場合、分割で225万円がもらえます。
日額は医師の給料からしたら少ないですが、長期間になると大きな金額です。
加入できるなら加入しておいてもちろん損はないです。
収入保険は保険会社のものもありますが、高度障害以上でもらえるものが多いので、別物と言えるでしょう。
雇用保険のまとめ
- いわゆる失業保険(手当)
- 日額は少ないが期間が長くなると大きい
労災保険「労働者災害補償保険」
いわゆる「労災」は、正社員・アルバイト・パートなどの雇用形態、働く日数にかかわらず全員が適用されるので今回の趣旨にはあまり関係ありませんがせっかくなので解説します。
保険料の支払いは病院側が支払い、従業員は払う必要がありません。
業務中や通勤中のケガや、業務による病気などが対象で、労災の保険給付には以下のものがあります。
療養給付:けがなどの医療費を支給
休業給付:傷病の療養で働けない場合に支給
障害年金:障害が残った場合に支給
遺族年金:死亡した場合に支給
労災保険のまとめ
- いわゆる労災
- 雇用形態に関わらず全員加入、負担は病院側
「社保あり常勤」→「社保無し非常勤」は収入が減っている可能性も
医師の場合、バイトの方が給料が高いことが多いので、給料でバイト医になることを考える医師もいるでしょう。
しかし、社会保険は保険なだけあってあると安心だし、隠れた収入もあります。
ちょっとだけ見た目の給料が上がる程度であれば、「社保ありの常勤」から「社保無しの非常勤」に変わると、実は収入が減っている可能性があります。
じゃあどのくらい上がっていれば損しないのでしょうか?
医師の給料における「社会保険の値段」をつけてみよう
雇用保険や傷病手当、産前産後の手当など、それぞれの保険に対する必要度は人によってことなります。
健康保険と国民健康保険の保険料は、世帯人数などによって変わるので、今の健康保険料と国保のシミュレーションでどっちがお得か比較してください。
ただ、年金については病院が払ってくれる分があるので間違いなくお得です!
自分の厚生年金保険料で年間713,700円を病院が払ってくれ、配偶者を扶養に入れている場合は配偶者の国民年金保険料で年間199,080円が免除となります。
年間912,780円もお得です。
これらの金額も念頭に入れて転職について考えてみてください。
医師の転職時は社会保険が必要かちゃんと考えよう
今回の記事をまとめてみましょう。
健康保険のまとめ
健康保険:扶養あり。傷病手当金・出産手当あり。
国民健康保険:扶養なし。傷病手当金・出産手当なし。
保険料はシミュレーションして比較を!
厚生年金まとめ
- 公的年金の2階部分。
- 収入によって保険料がかわる。
- 保険料は病院が折半。扶養配偶者の国民年金の支払い免除(合計最大912,780お得)。
- 出産前後は特にお得
雇用保険のまとめ
- いわゆる失業保険(手当)
- 日額は少ないが期間が長くなると大きい
労災保険のまとめ
- いわゆる労災
- 雇用形態に関わらず全員加入、負担は病院側
社会保険は、公的な保険で内容も充実しており、あった方がいいことはわかっていただけたと思います。
ただ、医師の給料は非常勤・バイトの方が高いことが多いです。
「社保ありの常勤」と「社保なしのフリーランス医」どっちがいいかしっかり考えてから転職活動を行いましょう♪
医師も転職するなら転職サイトを使おう!
同じ病院でも、転職時の契約で雇用条件はかなり違ってきます。
自分ひとりでは契約交渉は難しいのでぜひ転職の専門家に相談しましょう!
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