認知症を疑った時の流れ
①長谷川式認知症スケールやMMSEで認知機能低下を確認
②認知機能低下の原因を鑑別
③認知症であれば抗認知症薬使用や社会的資源の利用を検討
長谷川式認知症スケールやMMSEで認知機能低下を確認
長谷川式認知症スケール(HDSーR)
※30点満点。20点以下は認知症疑い(感度93%、特異度86%)。
※点数はある程度重症度に相関する。非認知症(24.27±3.91)、軽度(19.10±5.04)、中等度(15.43±3.63)、やや高度(10.73±5.40)、高度(4.04±2.62)
※各認知症の失点しやすい問題:アルツハイマー→見当識(2)、計算(5)、遅延再生(6)。脳血管性→バラバラ。レビー小体型:遅延再生(7)、前頭側頭型→言語の流暢性(9)
(老年精神医学雑誌; 1991, 1339-1347)
MMSE
30点満点。
23点以下で認知症疑い(感度81%、特異度89%)。
24~27点は軽度認知機能障害(MCI)疑い(感度45~60%、特異度65~90%)。
重症度判定にも使用できる。
21点~→軽度、11~20点→中等度、0~10点→重度
認知機能低下を認めた場合の検査
病歴 | 基礎疾患 発症の期間(急な変化はせん妄を疑う) どの認知機能が低下しているか 幻覚の有無 頭部外傷歴 抑うつ傾向の有無 など |
身体所見 | Parkinsonism(安静時振戦、固縮、強剛、無動) |
血液検査 | 血算、生化学一般HbA1c TSH、FT4 ビタミンB1・B12、葉酸 RPR、抗TP抗体 アンモニア |
画像検査 | 頭部CT/MRI(正常圧水頭症・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫の有無、脳の萎縮部位の有無) 脳血流SPECT(脳機能低下部位の判定) MIBG心筋シンチ(レビー小体型認知症/パーキンソン病で取込み低下) |
抗認知症薬の使い方
一般名 | 商品名 | 用量用法 | 特徴 | |
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コリンエステラーぜ阻害剤 (ChEI) | ドネペジル | アリセプト | 3mg1T1×で開始。2週後に5mgに。重度では5mgを4週以上投与後、10mgに増量可。 | 重度でも使用可。副作用は嘔気・嘔吐・下痢、興奮が多い。易怒性など出現したら減量、もしくは他薬剤へ変更を考慮。 |
ガランタミン | レミニール | 4mg 2T2×から開始。4週後に8mg 2T2×に増量。症状に応じて12mg2T2×まで増量可。 | 軽度〜中等度のみ。OD錠や液剤がある。副作用は嘔気・嘔吐・下痢が多い。 | |
リバスチグミン | イクセロンパッチ リバスタッチパッチ | 4.5mg/日で開始。4週毎に4.5mgずつ増量。18mg/で維持。 | 調布剤。内服薬多い時に。上記2剤より消化器系副作用は少な目。皮膚かぶれに注意。 | |
NMDA受容体 アンタゴニスト | メマンチン | メマリー | 5mg1T1×で開始、5mg/週ずつ増量。20mg/日で維持。 | 中等度以上で使用可。抑制系であり易怒性強い時などに有用。ChEIと併用可。 |
病期に応じて、各薬剤の特徴をふまえて薬剤を選択。
①軽度→ChEIを1剤投与。
②中等度→ChEI1剤 or/and メマンチン
③重度→ドネペジル or/and メマンチン
認知症の周辺症状(BPSD)への対応
※BPSDへの投薬を行う前に、BPSDの原因となりうる身体症状や環境因子の改善が可能か検討すること。
中核症状(認知機能低下)の改善(抗認知症薬の投与)も合わせて行った方が効果的である。
薬剤 | 特徴 | ||
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陽性症状 | 幻覚、妄想、徘徊、易怒性、興奮など | 抑肝散 2.5〜7.5g3× | 使いやすい。偽性アルドステロン症に注意。 |
チアプリド(グラマリール®︎) 25mg1T1×〜3T3×で開始し調整。最大150mg/日。 | 効果・副作用共にマイルド。 抗精神病薬でありパーキンソニズムに注意。 |
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クエチピアン(セロクエル®︎) 25mg 1T1×就寝前。傾眠出やすく少しずつ増量し調整。 | 抗精神病薬でありパーキンソニズムに注意。催眠作用強く、転倒注意。 糖尿病または糖尿病の既往があれば禁忌。 適応病名は統合失調症。 |
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リスペリドン(リスパダール®︎) 0.5mg1×就寝前で開始。適宜増量。 | 抗精神病薬でありパーキンソニズムに注意。 適応病名は統合失調症。 |
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陰性症状 | 抑うつ、活動性低下 | うつ病との鑑別 抗精神病薬の副作用やレビー小体型認知症などによるパーキンソニズムなど鑑別 |