腹痛の鑑別
部位 | 疾患 | 特徴 |
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1:心窩部痛 | 心筋梗塞・狭心症 | リスクを有する患者で必ず心電図を。 |
胃・十二指腸潰瘍穿孔 | 繰り返していた腹痛が突然増悪。腹膜刺激徴候を伴う。CTでフリーエアーを確認。 | |
胃・十二指腸炎・潰瘍 AGML(急性胃粘膜障害) 胃アニサキス症 | 胃カメラで診断。 | |
急性膵炎 | アミラーゼ等膵酵素の上昇、エコーやCTを。アルコールや胆石を確認。 | |
総胆管結石・胆管炎 | 総胆管結石が乳頭に嵌頓したときに心窩部やや右側に疼痛。胆管炎で発熱。肝胆道系酵素上昇。 | |
上腸管膜動脈塞栓症 | 突然発症の持続痛。造影CTで診断。虚血時間が長いと壊死が広がるので迅速に診断(ゴールデンタイム10〜12時間)。 | |
急性虫垂炎 | 右下腹部に痛みが移動する前の初期。右下腹部の圧痛を確認。 | |
2:右季肋部痛 | 胆石発作・急性胆嚢炎 | 胆石が胆嚢管にはまり疼痛。胆嚢炎で発熱。Murphy徴候(右季肋部を圧迫したまま深呼吸させると痛みで呼吸ができない)。エコーやCTで胆嚢腫大・壁肥厚など。 |
総胆管結石・胆管炎 | 総胆管結石が乳頭に嵌頓したときに心窩部やや右側に疼痛。胆管炎で発熱。肝胆道系酵素上昇。 | |
急性膵炎 | アミラーゼ等膵酵素の上昇、エコーやCTを。アルコールや胆石を確認。 | |
Fitz-Hugh-Curtis症候群 | 女性の骨盤内腹膜炎(PID)が肝周囲に波及。CTで肝周囲の炎症。クラミジアや淋菌が多い。 | |
肝膿瘍・肝炎 | 右季肋部叩打痛。痛みははっきりしないことも多い。 | |
尿管結石 | 背部痛が多い。血尿。CVA叩打痛。エコーで腎盂拡張。 | |
3:左季肋部痛 | 急性膵炎 | アミラーゼ等膵酵素の上昇、エコーやCTを。アルコールや胆石を確認。 |
脾梗塞 | 突然発症の持続痛。造影CTで診断。 | |
脾湾曲部症候群 | 軽症の間欠痛。大腸の脾湾曲部で曲がりが強く、便が通るときに痛みが出る。 | |
尿管結石 | 背部痛が多い。血尿。CVA叩打痛。エコーで腎盂拡張。 | |
4:右下腹部痛 | 急性虫垂炎 | 腹痛が心窩部から右下腹部へ移動し、嘔気・嘔吐が出現(嘔気より腹痛の方が先)。虫垂の走行は人によるため注意(特に妊婦)。発熱を伴う。積極的に疑い血液検査・エコー・CTを。 |
憩室炎 | 発熱と右側腹部(上行結腸)の圧痛。CTで診断。虫垂炎と鑑別。 | |
腸炎 | 下痢を伴う間欠痛。発熱することも。 | |
ヘルニア | 臍・腹壁瘢痕・鼠径部にヘルニアがないか診察。 | |
卵巣出血 | 排卵期(月経から約2週後)、性交後に多い突然発症の痛み。骨盤内腹水を確認。 | |
卵巣茎捻転 | 突然発症の痛み。腫大した卵巣を認める。 | |
異所性妊娠 | 妊娠可能年齢の女性の下腹部痛では妊娠反応検査を行うこと。 | |
骨盤内炎症性疾患 | PID。下腹部痛、性交時痛、帯下増加、不正出血、発熱などきたす。 | |
尿管結石 | 背部痛が多い。血尿。CVA叩打痛。エコーで腎盂拡張。 | |
5:左下腹部痛 | 虚血性腸炎 | 便秘後の排便のあとや下痢のあとの腹痛と血便。 |
憩室炎 | 発熱と右側腹部(上行結腸)の圧痛。CTで診断。虫垂炎と鑑別。 | |
腸炎 | 下痢を伴う間欠痛。発熱することも。 | |
便秘 | 排便はあると患者が言っても便秘が原因のことはあり、Xpで便秘を認めた場合は浣腸を試すと著効することがある。 | |
ヘルニア | 臍・腹壁瘢痕・鼠径部にヘルニアがないか診察。 | |
卵巣出血 | 排卵期(月経から約2週後)、性交後に多い突然発症の痛み。骨盤内腹水を確認。 | |
卵巣茎捻転 | 突然発症の痛み。腫大した卵巣を認める。 | |
異所性妊娠 | 妊娠可能年齢の女性の下腹部痛では妊娠反応検査を行うこと。 | |
骨盤内炎症性疾患 | PID。下腹部痛、性交時痛、帯下増加、不正出血、発熱などきたす。 | |
尿管結石 | 背部痛が多い。血尿。CVA叩打痛。エコーで腎盂拡張。 | |
そのほか | 腸閉塞 | 間欠痛だが、絞扼すると持続痛に。嘔気を伴うことも。手術歴やヘルニアがあるとリスクが上昇。 |
炎症性腸疾患 | 潰瘍性大腸炎、クローン病。腹痛や下血をきたす。発熱がみられる場合も。下部消化管内視鏡検査を行う。 | |
帯状疱疹 | 半側性の皮疹を認める。初期は皮疹を認めない場合があり注意。 |