こんにちは!Dr.ゆうです。
今回は過敏性腸症候群について解説していきます。
過敏性腸症候群にはいろいろな症状があり、長期化しやすい状態で、困っている患者さんがかなり多いです。
この記事では、症状・診断・食事療法・治療法などについて解説していますので、おなかの調子が悪い人はぜひ読んでみてください♪
過敏性腸症候群とは何か?
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome, IBS)は、腸の機能に問題があることで起こる症候群のひとつです。
主に腹痛、腹部不快感、下痢、便秘、腸内ガス、腹部膨満感、吐き気などの症状が現れます。
過敏性腸症候群は、炎症や潰瘍などの特定の病気ではなく、症状が継続することが多いため、生活に大きな影響を与えることがあります。
過敏性腸症候群の原因はまだ完全に解明されていませんが、ストレス、腸内細菌のバランスの乱れ、食物不耐性などが関係していると考えられています。
また、女性に多く、20代から40代の若年層に発症することが多いとされています。
過敏性腸症候群の診断方法・検査
過敏性腸症候群の診断は、症状に基づいて行われます。
症状が2週間以上継続し、腸の機能に問題があると考えられる場合、過敏性腸症候群の可能性があります。
過敏性腸症候群の診断には、体格検査、病歴取得、症状の詳細な聴取が含まれます。
また、便検査、血液検査、大腸内視鏡検査、X線検査などの検査が必要になる場合があります。
これらの検査は、過敏性腸症候群の症状が他の疾患によるものでないかを確認するために行われます。
過敏性腸症候群の食事療法
過敏性腸症候群の治療には、薬物療法、食事療法、ストレス管理、代替療法などがあります。
食事記録の取得
過敏性腸症候群の食事療法を始める前に、食事記録を作成することが重要です。
食べたものや飲んだもの、症状がどの程度出たかなどを記録しましょう。
調子が何回も悪くなる食事を記録で見つけたら、それを避けることで症状が出るのを抑えられるかもしれません。
食べ合わせや、その時の体調なども影響するので、気になることも一緒に書いておきましょう。
食物繊維の摂取
食物繊維は、腸内環境を改善し、便通を促進するために重要です。
野菜や果物、穀物、海藻などが食物繊維の豊富な食品です。
過敏性腸症候群の患者さんには、特に水溶性食物繊維が有効です。
水溶性食物繊維を含む食品には、オートミール、野菜、果物、豆類などがあります。
食物繊維を継続して摂るのがむずかしいときは、食物繊維のサプリを使ってみるのもアリです。
ただし、大量の食物繊維を一度に摂ると、膨張して腹痛を引き起こすことがあるため、適量を摂取するようにしましょう。
また、調子が非常に悪い時は、食物繊維をとるともっと悪くなることがあります。
そういう時は、食物繊維が少ない食事を心がけましょう。
食物繊維が多い野菜や果物を食べる場合には、よく噛んでから食べるようにすることも、消化が楽になるので大切です。
脂肪の種類に注意
食事に含まれる脂肪の種類によって、IBSの症状に影響が出ることがあります。
特に、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸は、IBSの症状を悪化させることがあるため、できるだけ避けるようにしましょう。
代わりに、不飽和脂肪酸を含む食品を選ぶことが望ましいです。
不飽和脂肪酸を含む食品には、魚、ナッツ、種子、オリーブ油などがあります。
乳製品の摂取
乳製品は、消化不良を引き起こす可能性があるため、過敏性腸症候群の人には注意が必要です。
しかし、乳製品を完全に避ける必要はありません。
乳糖不耐症である場合は、ラクトースを含まない乳製品を選択することができます。
また、低脂肪乳製品を選ぶこともおすすめです。
食物アレルギーのチェックを行う
過敏性腸症候群は、食物アレルギーが原因の場合もあります。
そのため、自分がアレルギー反応を起こしやすい食品がある場合には、避けることが必要です。
例えば、乳製品、小麦粉、大豆製品、卵、ナッツ、魚介類などがアレルギーの原因となることがあります。
食物アレルギーを持っている場合には、かかりつけの医師に相談し、アレルギーを起こす食品を避けるようにしましょう。
血液検査で、どの食品に対してアレルギーがあるのかをある程度調べることができます。
保険(3割負担)でできるので、ぜひやってみましょう。
ただ、アレルギーによるお腹の不調は好酸球性胃腸炎という別の病気かもしれませんが、知っている医師はまだ多くないので消化器内科を受診した方がいいでしょう。
水分補給をしっかり行う
水分補給は、腸内環境を整えるためにも大切です。
過敏性腸症候群の場合、水分不足によって便秘や下痢の症状が悪化することがあります。
水分補給は、水以外にも、スープやジュース、お茶などからも摂取することができます。
ただし、糖分の多いジュースや炭酸飲料、アルコールは、摂りすぎると症状を悪化させることがあるので、適量にとどめるようにしましょう。
FODMAP(フォドマップ)とは
一部の研究によれば、FODMAP(低分子炭水化物)制限食が過敏性腸症候群の症状の改善に役立つ場合があることが示されています。
FODMAPは、果糖、ラクトース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ポリオールなど、消化吸収されにくい炭水化物のグループです。
消化吸収が難しく、腸内細菌が分解して発酵し、水素ガスやメタンガスを発生させます。これが腸内の圧力を高め、過敏性腸症候群の症状を引き起こす原因となります。
FODMAP制限食では、これらのFODMAPが多く含まれる食品を制限することで、腸内細菌のバランスを整え、症状の改善を図ります。
FODMAPが多い食品の例を挙げます。
FODMAP制限食は、過敏性腸症候群の症状を改善することが報告されています。
制限食を行うことで、消化吸収が難しいFODMAPを含む食品を避けることができ、腸内環境の変化を防ぐことができます。
これによって、過敏性腸症候群の症状が改善し、腸内環境が安定化されることが期待されます。
ただし、制限食を行うことで、栄養バランスが偏ることがあるため、専門医や管理栄養士の指導のもとで実施することが望ましいです。
実行する場合は以下の注意点に気をつけてください。
- 実施前に医師や管理栄養士に相談すること
- 食品アレルギーがある場合は適切に処理すること
- 制限食を長期間行う場合は、栄養バランスが偏らないように注意すること
- 制限食を行っても症状が改善しない場合は、医師に相談すること
ストレス管理
ストレスは、過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあります。
ストレスを減らすためには、ストレス管理法を取り入れることが必要です。
例えば、瞑想、ヨガ、深呼吸、ストレッチングなどが効果的です。
薬物療法
過敏性腸症候群の治療には、以下のような薬が使用される場合があります。
整腸剤(プロバイオティクス)
乳酸菌など知られる整腸剤(プロバイオティクス)で腸内環境を整えます。
過敏性腸症候群の人は、腸内細菌が乱れていることが多いです。
そこで、善玉菌を薬やサプリで補充することで症状の改善を試みます。
副作用が出にくい方法なので、気軽に試すことができます。
その分効果も実感しにくい場合があるので、気長に試してみましょう。
また、自分にあった菌を補充することが重要で、しばらく飲んでみても改善しない場合は他の整腸剤に変えることも考えましょう。
ちなみに、高い整腸剤が必ずよく効くわけでもないので、自分にあったものを探しましょうね。
便秘薬・下剤
便秘型の過敏性腸症候群の人は便秘薬を使用するとスッキリするかもしれません。
刺激性の便秘薬は、飲むと排便があるので効果を実感しやすいですが飲み続けると、腸がダメになり、もっと便秘が悪化するので使用は控えましょう。
酸化マグネシウムなどの、便を柔らかくする薬が安心して使用できます。
消泡剤
お腹にガスがたまっておなかが張る人に合っています。
市販薬ならガスピタン®︎などですね。
おなかのなかのガスを減らしてくれます。
根本的に治してくれるわけではないので、続ける必要があります。
過敏性腸症候群用の薬
病院に行くと、腸の動きを調整する薬や、抗うつ薬や漢方などが処方されることがあります。
自分での治療に限界を感じたら、無理をせずに病院を受診してみましょう。
過敏性腸症候群がなかなか治らない人は早めに病院を受診しよう
過敏性腸症候群の症状は、人によって異なり、治療法も患者によって異なる場合があります。
症状が軽い場合は、ライフスタイルの改善、食事療法、ストレス管理などで症状を改善することができます。
しかし、過敏性腸症候群の症状が重く、薬やライフスタイルの改善で改善しない場合は、早めに病院を受診することが必要です。
過敏性腸症候群の治療には、複数の治療法があります。
治療法は、患者の症状、症状の程度、患者の年齢、健康状態、アレルギーの有無などによって異なります。
病院で受けられる治療法の種類は多岐にわたり、医師と相談することで最適な治療法を選ぶことができます。
過敏性腸症候群には気長に付き合おう
過敏性腸症候群は根本的に治すのがむずかしい状態です。
無理のない範囲で継続して食事療法を行いましょう。
たど、ストレスをかかえないことも治療では大切なので、あまり神経質にやりすぎない、ということも覚えておいて下さい。
そして、症状が強い、なかなか治らないなどあれば迷わず病院を受診しましょう。
実は進行した大腸癌だった、、、という方も実際に時々いらっしゃいます。
一度も受診したことがない人は、ぜひ受診してみて下さい。