非結核性抗酸菌症の症状・特徴
50代以降のやせ型で、非喫煙女性に多い。
慢性的に持続する咳嗽と、膿性喀痰や血痰がみられる。
悪化した場合に発熱がみられる。
徐々に増悪することが多いが,無症状や、自然軽快することもある。
非結核性抗酸菌による肺炎の約9割がMycobacterium avium とMycobacterium intracellulareで、肺MAC症(M. avium complex)とまとめて呼ばれる。
非結核性抗酸菌は環境常在菌で、ヒト-ヒト感染はない。
非結核性抗酸菌症の検査・診断
診断には胸部画像所見と細菌学的検査陽性を満たす必要がある。
【胸部画像検査】
舌区・中肺野を中心に気管支拡張、空洞形成、小結節陰影の散布を認める。
【細菌検査】
非結核性抗酸菌は環境常在菌のため、2回以上の異なった喀痰検体で培養陽性を確認する。
もしくは、気管支洗浄液で一回以上の培養陽性を確認。
【マイコバクテリウム抗体キット(キャピリア®)】
保険で検査可能な血液検査。診断の補助として検査される。
感度が50~80%程度と低いが、特異度は90%超と高い。
非結核性抗酸菌症の治療
経過観察
抗酸菌だが結核と違い、人ー人感染はなく、症例によって治療を行うか判断する。
進行が緩徐な症例もあり、自覚症状や高齢者、画像所見が乏しいなどの場合は無治療で経過観察も選択肢に入る。
▶︎フォロー方法:3~6ヶ月程度で自覚症状や、胸写・喀痰検査など悪化がないか
抗菌薬
治療期間:菌が陰性化して1~2年間
長期間の治療になるため、治療開始前に一度専門医へ相談した方がよい。
また、治療終了後に再燃する例も多く、終了時にも相談し、自覚症状・胸写・喀痰のフォローを行うこと。
例)①+②+③併用療法が基本
①クラリスロマイシン(クラリス®︎)200mg4T2×朝夕食後
②エタンブトール(エブトール®︎)125mg錠
体重により以下を1日1回朝食後内服
30~40kg:4錠、40~50kg:5錠、50kg~:6錠
副作用)球後視神経炎→眼科に必ず定期受診を
③リファンピシン(リファジン®︎)150mg3Cp1×朝食前(適宜増減、最大600mg)
副作用)肝障害、血小板減少、腎障害、発熱など。薬剤相互作用も多い。
重症例・難治例・手術前治療では上記に以下のアミノグリコシド系抗菌薬のいずれかを短期併用する。
④例)硫酸ストレプトマイシン 15mg/kg/回(最大1,000mg) 週2~3回 筋注
④例)硫酸カナマイシン 15mg/kg/回(最大1,000mg) 週2~3回 筋注
※主な副作用はいずれも聴力障害・腎障害。
外科治療
70歳代以下(目安)で,喀血など症状が強い、空洞や高度気管支拡張がある、抗菌薬治療で改善が乏しいなどでは肺切除術の適応があり、専門医へ紹介すること。
手術前では前述の抗菌薬併用療法は①+②+③+④を検討する。