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【消化器内科医】逆流性食道炎ー症状・診断・治療法をわかりやすく解説!

逆流性食道炎とは、胃酸が食道に逆流することによって、炎症が起こる疾患です。

最近よく聞く病気の一つかもしれませんが、実際にはかなり多くの方がこの病気に悩まされています。

今回は、逆流性食道炎について、原因や症状、診断方法、治療法、予防方法、合併症、食事療法、ストレスとの関係、自然治癒力を高める方法などについて詳しくご紹介していきます。

逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎の仕組み

逆流性食道炎とは、胃酸が食道に逆流して、食道の内壁を刺激することによって引き起こされる炎症のことです。

食道は胃から口につながる筒状の器官であり、胃酸のような消化液が逆流することによって傷つくことがあります。

逆流性食道炎の原因は?

逆流性食道炎の主な原因は、胃酸の逆流です。

胃酸は胃の内側に存在し、消化を助けるために分泌されます。

しかし、食道と胃をつなぐ逆流防止弁が正常に機能しない場合、胃酸が食道に逆流して炎症を引き起こします。

その他にも、食道の筋肉が弱っている場合や、妊娠中や肥満などの状態によって、逆流性食道炎を引き起こすことがあります。

逆流性食道炎の症状は?

逆流性食道炎の主な症状は、胸や胃の部分に痛みや燃えるような感覚が生じることです。

また、食道が刺激されることによって、咳や喉の痛み、のどのつかえ感、嘔吐、吐き気、胃酸の味が口の中に残ることがあります。

逆流性食道炎の診断方法

逆流性食道炎の診断方法には、内視鏡検査、X線検査、食道酸度計測定などがあります。

内視鏡検査は、医師が食道や胃の内部を観察するために、柔軟な管を喉から挿入する検査です。

X線検査は、食道や胃の形状を観察するために放射線を用いた検査です。

食道酸度計測定は、食道内の酸の量を測定する検査で、逆流性食道炎の診断に役立ちます。

逆流性食道炎の治療法

逆流性食道炎の治療法は、薬物療法、外科手術、ライフスタイルの改善、そして食事療法の4つに分類されます。

逆流性食道炎の薬物療法

まず、薬物療法には胃酸分泌抑制薬、プロトンポンプ阻害剤、制酸剤、粘膜保護剤などがあります。

これらの薬剤は胃酸の分泌を抑え、胃酸が逆流して食道にダメージを与えることを防ぐことができます。

胃酸分泌抑制薬は逆流性食道炎で一番基本的な薬で、効果も一番期待できます。

市販の薬では「ガスター10」などです。病院では効果がもっとしっかりした薬を処方してもらうことができます。

逆流性食道炎に対する外科手術

次に、外科手術にはNissen法、Toupet法、Hill法などがあります。

これらの手術は、胃と食道の接続部分を狭くすることで、逆流を防ぎます。

しかし、手術は合併症が発生する可能性があるため、慎重な選択が必要です。

ライフスタイルの改善

また、ライフスタイルの改善には、禁煙、アルコールの控えめな摂取、適度な運動、適正体重の維持、ストレスを減らすことなどがあります。

これらの方法は逆流性食道炎を予防するために重要です。

最後に、食事療法には、胃酸分泌を刺激するアルコール、カフェイン、酸味のある食品、脂肪の多い食品、スパイスの多い食品、チョコレートなどを避け、食事の時間や量にも注意することが含まれます。

これらの食品を避けることで、逆流性食道炎の症状を軽減することができます。

逆流性食道炎の治療には、上記の方法を組み合わせた総合的なアプローチが重要であり、個々の症状に合わせた治療計画が必要です。

逆流性食道炎の予防方法

逆流性食道炎を予防するには、以下の方法が有効です。

食事の改善

食事の改善により、胃酸が逆流しにくくなります。

  • 脂肪分の多い食べ物や辛いもの、アルコール、コーヒーなどを控える
  • 食事の量を少なめにする
  • 食事の前後に水を飲む

姿勢の改善

姿勢の改善により、胃酸が逆流しにくくなります。

  • 寝るときは、上半身を起こした状態にする
  • 寝る前に2時間程度は食事を摂らない
  • 仰向けに寝るのではなく、横向きに寝る

喫煙の禁止

喫煙は、逆流性食道炎のリスクを高めます。

喫煙をやめることで、逆流性食道炎の予防につながります。

運動

適度な運動により、胃腸の働きが改善され、逆流性食道炎のリスクを下げることができます。

ただし、激しい運動は逆効果になることもあるため、無理なく運動するようにしましょう。

逆流性食道炎と関連する合併

逆流性食道炎が放置されると、以下のような合併症が発生することがあります。

食道狭窄症:逆流性食道炎が長期間続くと、食道の内側が炎症で傷ついたり、瘢痕(はんこん)(繊維化した組織)ができたりして、食道が狭くなってしまうことがあります。

食道狭窄症が進行すると、嚥下(えんか)障害(飲み込むことが難しくなる)や嘔吐(おうと)などの症状が現れます。

潰瘍:食道炎症が慢性化すると、食道の内側が潰瘍(かいよう)になることがあります。

潰瘍ができると、食べ物や飲み物が傷口に触れて痛みを感じたり、出血して黒色便(こくしょくべん)になったりすることがあります。

バレット食道:食道炎症が慢性化すると、食道の内側が食道上皮内病変(バレット食道)という状態になることがあります。

バレット食道は、食道の下部の上皮細胞が胃の粘膜に似た細胞に置き換わる病態で、癌になるリスクが高くなります。

以上のような合併症を引き起こさないためにも、逆流性食道炎の症状が現れたら、早期に受診して適切な治療を行うことが大切です。

逆流性食道炎の食事療法

逆流性食道炎の治療においては、食事療法が非常に重要な役割を担います。

一般的に、逆流性食道炎の患者さんには、以下のような食事の注意点が示されます。

  • 脂っこい食べ物や油っぽい食べ物を避ける
  • トマトやオレンジジュース、コーヒーや紅茶、アルコールなどの酸性飲料を避ける
  • 食べ物を十分に噛む
  • 食べ物を食べるときはゆっくりと食べる
  • 食べる量を調整する
  • 夕食はできるだけ早めに食べる
  • 寝る前に食べ物を食べないようにする
  • 寝る前に水を飲みすぎないようにする
  • 寝る前に胃を刺激する運動を避ける(例:腹筋運動など)

また、特定の食品が逆流性食道炎の症状を悪化させる場合があるため、個人差がありますが、自分に合った食事を摂るようにしましょう。

医師や栄養士の指導を受けることも有効です。

逆流性食道炎のまとめ

逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで引き起こされる疾患です。

原因としては、食道括約筋の機能低下、胃の逆流予防策の低下、過度の胃酸分泌などが考えられます。

症状は、胸焼け、咳、のどの痛み、背中の痛みなどで、診断には内視鏡検査やバリウム検査、24時間持続食道pHモニタリングなどがあります。

治療法には、薬物療法、内視鏡的治療、手術治療などがあり、予防法には、食生活の改善、禁煙、運動、ストレス管理などがあります。

逆流性食道炎は重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の治療が必要です。

また、食事療法や自然治癒力を高める方法なども併用することで、より効果的な治療が期待できます。

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