自己免疫性膵炎の診断・治療
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目次
- 自己免疫性膵炎の概要
- 自己免疫性膵炎の疫学
- 自己免疫性膵炎の分類(1型・2型)
- 自己免疫性膵炎の症状
- 自己免疫性膵炎の検査・診断基準
- A.診断項目
- I.膵腫大| a.びまん性腫大(diffuse) b.限局性腫大(segmental/focal) II.主膵管の不整狭細像| a.ERP b.MRCP III.血清学的所見| 高 IgG4 血症(≧135 mg/dl) IV.病理所見| a.以下の①~④の所見のうち,3つ以上を認める。 b.以下の①~④の所見のうち,2つを認める。 c.⑤を認める。 ①高度のリンパ球,形質細胞の浸潤と,線維化 ②強拡1視野当たり10個を超えるIgG4陽性形質細胞浸潤 ③花筵状線維化(storiform fibrosis) ④閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis) ⑤EUS―FNAで腫瘍細胞を認めない。 V.膵外病変| a.臨床的病変:臨床所見および画像所見において,膵外胆管の硬化性胆管炎,硬化性涙腺炎・唾液腺炎(Mikulicz病),後腹膜線維症あるいは腎病変と診断できる。 b.病理学的病変:硬化性胆管炎,硬化性涙腺炎・唾液腺炎,後腹膜線維症,腎病変の特徴的な病理所見を認める。 VI.ステロイド治療の効果| 専門施設においては,膵癌や胆管癌を除外後に,ステロイドによる治療効果を診断項目に含むこともできる.悪性疾患の鑑別が難しい場合は超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)細胞診は必須で(上記IVc),病理学的な悪性腫瘍の除外診断なく,ステロイド投与による安易な治療的診断は避けるべきである.したがってVIはIVcを包括している。 B.診断
- 自己免疫性膵炎の合併症
- 自己免疫性膵炎の治療
- 自己免疫性膵炎の予後
- 参考文献
自己免疫性膵炎の概要
自己免疫性膵炎(Autoimmune Pancreatitis, AIP)は、自己免疫機序が関与すると考えられる特殊な膵炎である。
1型と2型の2つの亜型に分類されるが、日本においては1型が大部分を占める。
1型自己免疫性膵炎は、IgG4関連疾患(IgG4-related disease)の膵病変 とされており、膵臓の腫大や主膵管の不整狭細像、血中IgG4値の上昇を特徴とする。
本疾患は、しばしば閉塞性黄疸 や膵腫瘤形成を伴い、膵癌との鑑別が重要である。
組織学的には、著明なリンパ球および形質細胞の浸潤、IgG4陽性形質細胞の蓄積、花筵状線維化(storiform fibrosis)、および閉塞性静脈炎を特徴とする。
これらの膵内病変に加えて、涙腺・唾液腺の炎症、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などの膵外病変を合併することが多い。
ステロイド治療が著効する点も特徴的であり、診断後の適切な治療が疾患制御に重要である。
自己免疫性膵炎の疫学
2021年に実施された第5回全国疫学調査によると、自己免疫性膵炎の推計患者数は16,750人(有病率は人口10万人あたり13.3人)で2016年調査から25%増加し、新規診断例は4,210人(年間罹患率は10万人あたり3.4人)と報告されている。2016年の調査(推計13,436人、有病率10.1人、年間罹患率3.1人)でも、2011年の調査と比べていずれも2倍以上に増加していた。
患者数は増加を続けている。
特に1型自己免疫性膵炎は中高年男性に多く(2021年調査ではAIP全体で男女比3.32、診断時平均年齢66.3歳)、2型に比べて日本での発症例が顕著である。
一方、欧米では2型の発症例も報告されており、地域や人種による差異が示唆されている。
自己免疫性膵炎の分類(1型・2型)
自己免疫性膵炎は主に1型(Lymphoplasmacytic Sclerosing Pancreatitis, LPSP)と2型(Idiopathic Duct-centric Pancreatitis, IDCP)の2つに分類される。
それぞれ異なる病態や臨床像を持ち、地域による発生頻度の違いが見られ、日本ではほとんどが1型である。
| 分類 | 1型自己免疫性膵炎(LPSP) | 2型自己免疫性膵炎(IDCP) |
|---|---|---|
| 地域的分布 | 日本ではAIPの大部分を占める | 欧米からの報告が多い |
| 好発年齢・性別 | 中高年男性に多い | 比較的若年層、男女差なし |
| 症状 | 軽度~無症状の腹痛、閉塞性黄疸、糖尿病、膵外病変を伴うことが多い | 急性膵炎に類似した腹痛を伴うことが多い |
| 関連疾患 | 涙腺・唾液腺炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などの膵外病変 | 潰瘍性大腸炎を合併することがある |
| 免疫検査所見 | 血清IgG4が高値になることが多い | 血清IgG4上昇や自己抗体など血液免疫学的異常に乏しい |
| 画像所見 | 膵腫大、膵管の不整狭細像 | 膵腫大、膵管の狭細像 |
| 組織学的特徴 | リンパ球・形質細胞浸潤、IgG4陽性形質細胞浸潤、花筵状線維化 | 好中球上皮病変(GEL) |
| 治療 | ステロイド治療が有効(再燃しやすい) | ステロイド治療が有効で、再燃はまれ |
| 発生頻度 | 日本で主流(IgG4関連疾患に含まれる) | 日本では極めて稀 |
自己免疫性膵炎の症状
自己免疫性膵炎では、通常の膵炎で見られるような強度の腹痛はほとんどなく、心窩部不快感や軽度の痛み程度にとどまることが多い。
膵頭部腫大に伴い下部胆管が狭窄・閉塞することで、閉塞性黄疸 が高頻度に見られる。
また、糖尿病(膵性糖尿病) の合併が認められる場合があり、AIPと同時に発症した糖尿病では、ステロイド治療で改善する割合が高い。
さらに、涙腺や唾液腺の腫大などの膵外病変 に関連した症状がみられることもある。
自己免疫性膵炎の検査・診断基準
自己免疫性膵炎の診断基準(主に1型を対象)
自己免疫性膵炎臨床診断基準 2018から引用
A.診断項目
I.膵腫大| a.びまん性腫大(diffuse)
b.限局性腫大(segmental/focal)
II.主膵管の不整狭細像| a.ERP
b.MRCP
III.血清学的所見| 高 IgG4 血症(≧135 mg/dl)
IV.病理所見| a.以下の①~④の所見のうち,3つ以上を認める。
b.以下の①~④の所見のうち,2つを認める。
c.⑤を認める。
①高度のリンパ球,形質細胞の浸潤と,線維化
②強拡1視野当たり10個を超えるIgG4陽性形質細胞浸潤
③花筵状線維化(storiform fibrosis)
④閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)
⑤EUS―FNAで腫瘍細胞を認めない。
V.膵外病変| a.臨床的病変:臨床所見および画像所見において,膵外胆管の硬化性胆管炎,硬化性涙腺炎・唾液腺炎(Mikulicz病),後腹膜線維症あるいは腎病変と診断できる。
b.病理学的病変:硬化性胆管炎,硬化性涙腺炎・唾液腺炎,後腹膜線維症,腎病変の特徴的な病理所見を認める。
VI.ステロイド治療の効果| 専門施設においては,膵癌や胆管癌を除外後に,ステロイドによる治療効果を診断項目に含むこともできる.悪性疾患の鑑別が難しい場合は超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)細胞診は必須で(上記IVc),病理学的な悪性腫瘍の除外診断なく,ステロイド投与による安易な治療的診断は避けるべきである.したがってVIはIVcを包括している。
B.診断
I.確診| ①びまん型:Ia+<III/IVb/V(a/b)>
②限局型:Ib+IIa+<III/IVb/V(a/b)>の2つ以上
またはIb+IIa+<III/IVb/V(a/b)>+VI
またはIb+IIb+<III/V(a/b)>+IVb+VI
③病理組織学的確診:IVa
II.準確診| 限局型:Ib+IIa+<III/IVb/V(a/b)>
またはIb+IIb+<III/V(a/b)>+IVc
またはIb+<III/IVb/V(a/b)>+VI
III.疑診*| びまん型:Ia+II(a/b)+VI
限局型:Ib+II(a/b)+VI
*疑診:わが国では極めてまれな2型の可能性もある。
+:かつ、/:または
血液検査
- 肝胆道系酵素・ビリルビンの上昇 : 肝胆道系酵素は約60~82%、総ビリルビンは約39~62%で上昇する。
- 膵酵素の上昇 : アミラーゼ・リパーゼなどの膵酵素上昇は約36~64%にみられるが、急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪に比べると頻度は低い。
- 血清IgG4 上昇: 血清IgG4値≧135 mg/dLを高値とし、約68~92%の症例で認められる。単一の血清マーカーとしては最も診断的価値が高く、膵癌との鑑別では感度80%、特異度98%と報告されている。ただし、膵癌・胆管癌の一部や他疾患(アトピー性皮膚炎、天疱瘡、喘息など)でも高値を示すことがあり、疾患特異的ではない。
- 免疫異常 :抗核抗体(ANA )は約40~64%、リウマトイド因子(RF) は約25%で陽性となる。IgG4関連腎臓病を合併する例では、低補体血症を高率に認める。
画像検査
腹部超音波検査
- びまん性膵腫大
膵全体が腫大し、「ソーセージ様(sausage-like)」と表現される形状を示す。
エコーパターンでは、低エコー像を示し、内部に散在する高エコースポットを認めることがある。
主膵管の拡張を伴わないことが多い。
CT検査
- 膵腫大
びまん型 : 膵全体が腫大し、低吸収域を示す。
限局型 : 腫瘤様病変を形成する場合があり、膵癌との鑑別が必要。 - 被膜様構造
膵病変全体を取り囲むような帯状低吸収域を認めることがある。線維化を反映した特徴的な所見。 - 胆管狭窄
膵頭部病変では膵内(下部)胆管の狭窄を伴い、閉塞性黄疸を呈することが多い。 - 漸増性増強パターン
線維化が進行した部位では、造影CTで遅延性に増強効果を示す。
典型的な例では、正常膵実質と比較して低吸収を示し、時間経過とともに増強される。
MRI検査
- T1強調像
膵腫大は低信号を示す。 - T2強調像
膵腫大は高信号を示す場合が多い。 - 被膜様構造
CTと同様に、膵辺縁部の低信号帯として認められる。 - MRCP
主膵管の狭細像や、検出できない区間(スキップを伴うことがある)を認める。病変部より上流の主膵管には異常な拡張を認めない。ただし、ERCPに比べ解像度は低い。 - 主膵管貫通像(duct-penetrating sign)
T2強調像やMRCPで、病変内を主膵管が貫通する像がみられることがある。膵癌ではほとんどみられず、鑑別に有用。 - 造影MRI
CTと同様、遅延性増強パターンを認める。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
- 膵管狭細像
主膵管にびまん性または限局性の不整狭細像を認める。狭細部より上流の主膵管には著しい拡張を認めないことが多く、狭細部からの分枝の派生や非連続性の複数の狭細像(skip lesions)は膵癌との鑑別に有用である。
膵癌との鑑別では、びまん性狭細像が特徴的。 - 胆管狭窄
約80%で胆管狭窄を認め、下部(膵内)胆管が最も多い。肝門部や肝内胆管に狭窄を認める場合は、原発性硬化性胆管炎や胆管癌との鑑別を要する。
超音波内視鏡(EUS)
- 膵腫大
膵全体が低エコーで均一なびまん性腫大を示す。
実質内に線状や網状(亀甲状)の高エコー像を認め、膵辺縁に低エコー帯を伴うことがある。線状・網状の高エコー像や膵管貫通像は膵癌との鑑別に有用である。 - 組織採取
EUSガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)による組織採取は悪性腫瘍との鑑別に有用。
FDG-PET検査
- FDGの集積
高率にFDGの異常集積を認める。
膵癌との鑑別 : びまん性や多発性の集積、涙腺・唾液腺、肺門リンパ節など膵外病変への集積が鑑別に役立つ。
ステロイド治療後には集積が低下する。なお、本邦ではAIPに対するFDG-PETは保険適用外である。
病理学的診断
- 1型(LPSP) :
著明なリンパ球と形質細胞の浸潤。
IgG4陽性形質細胞浸潤(強拡1視野あたり10個超)は特徴的だが特異的ではなく、花筵状線維化や閉塞性静脈炎を含めて総合的に評価する。 - 2型(IDCP) :
好中球の膵管上皮への浸潤(granulocytic epithelial lesion; GEL)が特徴的。
診断的治療目的のステロイド
専門施設において、膵癌や胆管癌を除外したうえで行う。悪性疾患との鑑別が難しい場合はEUS-FNAによる病理学的な除外が必須であり、安易な診断的治療は厳に慎むべきである。
評価は画像で評価可能な病変を対象とし、通常1~2週で画像上の改善がみられる。2週間以内に効果が不十分な場合は膵癌の可能性を考え、再精査する。なお、ステロイドへの反応は膵癌を否定するものではなく、悪性リンパ腫でもステロイドで改善することがある。
自己免疫性膵炎の合併症
主な膵外病変
硬化性胆管炎
胆管の狭窄による閉塞性黄疸や胆管炎を引き起こす。
下部胆管では膵頭部癌や総胆管癌、肝門部や肝内胆管病変では胆管癌や原発性硬化性胆管炎との鑑別が重要となる。
胆管造影や病理組織像が診断に有用であり、IgG4関連疾患の膵外病変が認められる場合は、IgG4関連硬化性胆管炎の可能性が高い。
涙腺・唾液腺病変
涙腺や唾液腺の対称性腫大を認めるが、乾燥症状(口渇感や眼球乾燥)は軽度。
シェーグレン症候群との鑑別が重要であり、本疾患ではほとんどの例で抗SS-A抗体・抗SS-B抗体は陰性である。
病変は無痛性で持続するが、ステロイド治療により改善する。
腎病変
尿細管間質性腎炎が主体であり、尿所見の異常は軽度で、低補体血症を高率に認める。
造影CTで腎皮質の多発性造影不良域を認めることが特徴的。
腎機能は通常、正常または軽度低下にとどまるが、高度低下例に進展することがある。
後腹膜線維症
後腹膜腔での尿管や大動脈周囲の軟部組織病変を特徴とする。
尿管狭窄による水腎症や大動脈壁の肥厚、動脈瘤を呈することがある。
ステロイド治療により改善することが多いが、治療中に動脈瘤が破裂した例もあるため、動脈瘤の形態や経時的変化に注意し、外科的治療を考慮する。
呼吸器病変
肺門・縦隔リンパ節腫大、気管・気管支壁や気管支血管束の肥厚、間質性肺疾患、炎症性偽腫瘍、胸膜病変など多彩な病変を示す。
他の間質性肺疾患や腫瘍との鑑別が必要であり、肺癌を否定できない場合は外科的切除も考慮される。
炎症性腸疾患(2型)
2型自己免疫性膵炎では、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併することがある。これはIgG4関連の膵外病変ではない。
膵外および膵内分泌機能障害
約80%の症例で膵外分泌機能低下(消化酵素不足)、約70%で膵内分泌機能障害(糖尿病)を認める。
ステロイド治療により一部の症例で改善する(外分泌機能で38〜50%、内分泌機能で25〜45%と報告)。AIPと同時に発症した糖尿病は改善率が高い一方、AIP発症前からの糖尿病では悪化することが多い。
長期的なリスク
長期間の経過で膵石を形成する例がある。
膵癌の合併 が報告されており(AIP患者での膵癌発生率は0〜4.8%)、膵癌との鑑別が重要となる。
自己免疫性膵炎の治療
自己免疫性膵炎の治療は主にステロイド療法を中心に行われるが、軽症例の中には自然軽快する例も報告されている。
閉塞性黄疸などの症状がある例や、症状を伴う膵外病変がある例では、治療介入が必要となる。
ステロイド治療
閉塞性黄疸、腹痛・背部痛などの症状、症状を伴う膵外病変を有する症例が適応である。
また、閉塞性黄疸を伴う場合は胆道ドレナージで、糖尿病を伴う場合は血糖管理を行ったうえでステロイド治療を開始する。
初期治療(寛解導入)
薬剤と用量:プレドニゾロン(PSL)0.6 mg/kg/日を経口投与。
治療期間:2~4週間継続投与し、その後血液検査や画像所見、症状の改善を確認しながら、1~2週間ごとに5 mgずつ減量し、2~3か月かけて維持量まで減量する。
投与例:体重50 kgの場合、プレドニゾロン1日30 mgから開始する。
ステロイドの副作用対策として、消化性潰瘍の予防(胃酸分泌抑制薬)や、ステロイド性骨粗鬆症の評価と予防を必要に応じて行う。
維持療法
寛解導入後、再燃予防のためプレドニゾロン5 mg/日以上(5 mg/日前後)で維持し、完全寛解後おおむね3年間継続することが推奨される。
3年以降も継続するかどうかは、疾患活動性とステロイドの有害事象を考慮して個別に判断する。
減量の注意点:短期間でのステロイド中止は再燃の予測因子とされるため、慎重に漸減する。
画像検査や血液検査を定期的に行い、疾患活動性を確認する。
再燃例への対応
再燃時には、ステロイドの再投与または増量を行う。
欧米ではステロイド抵抗性・依存性の症例に免疫抑制薬やリツキシマブの併用が行われているが、日本ではこれらはIgG4関連疾患に対して保険適用外であり、慎重な判断が必要である。
なお、2025年11月に抗CD19抗体イネビリズマブ(ユプリズナ®)が「IgG4関連疾患の再燃抑制」の効能・効果で承認された。IgG4関連疾患に係る効能・効果での国内初の承認である。再燃そのものの治療ではなく再燃抑制を目的とした薬剤で、承認の根拠となった国際共同第III相試験(MITIGATE試験)は、ステロイドで治療中の活動性(初発または再燃)IgG4関連疾患患者を対象としていた。Infusion reaction、感染症、B型肝炎ウイルスの再活性化などに注意が必要である。本剤は2020年改訂ガイドラインの発表後に承認されたため、同ガイドラインには記載がない。
難治例の治療
ステロイド抵抗性または依存性の症例に対し、欧米では免疫抑制薬(アザチオプリンなど)やリツキシマブ(抗CD20抗体)が用いられるが、日本ではいずれもIgG4関連疾患に対して保険適用外であり、臨床研究法の基準に従う必要がある。
ただし、重篤な感染症、infusion reaction、B型肝炎ウイルスの再活性化などのリスクがあるため、適切な管理下での使用が求められる。
補助療法
膵内外分泌機能障害:膵酵素補充薬(消化酵素剤)やインスリン療法を必要に応じて行う。
閉塞性黄疸合併例:ステロイド治療の開始前に、胆道ドレナージで黄疸を管理することが推奨される。
副作用への対策
ステロイド治療中は、以下の副作用リスクに注意する:
骨粗鬆症:骨折リスクを評価し、必要に応じてビスホスホネートなどの骨粗鬆症治療薬を導入する。
消化性潰瘍:必要に応じて胃酸分泌抑制薬(PPIなど)を併用する。
高血糖:糖尿病管理を徹底する。
治療後のフォローアップ
3年間の維持療法の後も、継続的な経過観察が推奨される。
血液検査や画像診断を定期的に行い、再燃や新たな膵外病変の発生を早期に把握することが重要である。
再燃リスクを最小限にするため、治療終了後も患者教育を行い、早期受診を促す。
自己免疫性膵炎の予後
自己免疫性膵炎はステロイド治療により短期的には良好な予後が期待できる。
しかし、高率に再燃が認められるため、長期的な経過観察が重要である。
また、一部の症例では膵石灰化や膵萎縮を生じ、慢性膵炎に移行することがある。
これにより膵外分泌機能不全や糖尿病が進行し、膵の機能的予後に影響を及ぼすことがある。
悪性腫瘍との関連については、自己免疫性膵炎に膵癌を併発した症例の報告があるものの、両者に科学的な因果関係を示す根拠は十分ではない。
ただし、慢性膵炎への移行例を含めて、悪性疾患の発症リスクを考慮した注意深い経過観察が求められる。
1型自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患の膵病変であり、IgG4関連疾患は指定難病(告示番号300) に指定されている(2型はIgG4関連疾患に含まれない)。
診断確定後には重症度を判定し、基準を満たす場合は医療費助成の申請を検討する。
参考文献
- Okazaki K, Kawa S, Kamisawa T, et al. Amendment of the Japanese consensus guidelines for autoimmune pancreatitis, 2020. J Gastroenterol. 2022;57:225–245. doi:10.1007/s00535-022-01857-9. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8938398/
- 日本膵臓学会・厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「IgG4関連疾患の診断基準ならびに診療指針の確立を目指す研究」班. 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018. 膵臓. 2018;33:902–913.(研究班報告書: https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182051/201811064A_upload/201811064A0007.pdf )
- Masamune A, Kikuta K, Hamada S, et al. Nationwide epidemiological survey of autoimmune pancreatitis in Japan in 2016. J Gastroenterol. 2020;55:462–470. doi:10.1007/s00535-019-01658-7. https://pure.fujita-hu.ac.jp/en/publications/nationwide-epidemiological-survey-of-autoimmune-pancreatitis-in-j/
- 医薬品医療機器総合機構. ユプリズナ点滴静注100mg 審議結果報告書・審査報告書(IgG4関連疾患の再燃抑制). https://www.pmda.go.jp/drugs/2025/P20251224003/400315000_30300AMX00255000_A100_1.pdf
- Masamune A, Sano T, Takikawa T, et al. Nationwide epidemiological survey of autoimmune pancreatitis in Japan in 2021. J Gastroenterol. 2026;61:1502–1511. doi:10.1007/s00535-026-02438-w
- 難病情報センター. IgG4関連疾患(指定難病300). https://www.nanbyou.or.jp/entry/4504
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