はじめまして、レジドクター運営者のDr.ゆうです。
消化器内科医にとって、消化器病専門医と並んで「必須ライセンス」と言えるのが消化器内視鏡専門医です。
これから受験を考えている専攻医の先生方に、まず最初にお伝えしなければならないことがあります。
2026年度(令和8年度)から、受験資格と申請スケジュールが抜本的に変更されます。
これを知らずに「例年通り冬頃に準備すればいいや」と考えていると、最悪の場合、受験資格を得られない(門前払いされる)可能性があります。
この記事では、学会発表の最新情報に基づき、2026年度の変更点、そして合格への最短ルートを解説します。
2026年専門医試験の申請基準と注意点
【要確認】2026年度からの「3つの変更点」
2026年以降の申請から、新専門医制度との整合性を取るためにルールが厳格化されました。特に注意すべきは以下の点です。
スケジュールの大幅な前倒し(春申請・秋試験へ)
従来は「冬申請・夏試験」でしたが、2026年からは申請・試験ともに時期が早まります。異動シーズンと重なるため注意が必要です。
- 申請エントリー期間:2026年4月1日~6月末
- 申請書類提出:2026年4月1日~7月末
「専攻医カリキュラム登録システム」の登録必須化
受験資格を得るにはシステムへの登録が必須です。最も注意すべきは、「システム登録後の実績(4月1日以降)」しかカウントされないという点です。
※3月中にシステム登録を済ませないと、4月以降どれだけ検査をしても実績がゼロになります。(2015年以前の医師免許取得者も登録必須)
診療実績のカウント方法の変更(選択制)
実績の数え方が、以下の2パターンから有利な方を選択できるようになります。
- パターンa(件数ベース):上部1,000件 + 下部300件
- パターンb(点数ベース):上部1点、下部5点とし、合計1,000点以上
(下部検査数が少なくても、bパターンならクリアできる可能性があります)
2026年度の専門医試験申請基準
では学会公式ページ記載の申請基準を確認しましょう。(学会ページhttps://www.jges.net/specialist/sennmonniから下記引用)
- 以下の3項目を全て満たすこと。今回は2021年4月から2026年3月までの業績が有効。
ご入会前の業績はカウント不可となります。
① 本学会の学術集会(総会・支部例会)への出席回数が直近5年間で5回以上あり、そのうち、総会1回以上および支部例会2回以上あること。
② 本会の学会発表(総会・支部例会)あるいは本学会誌への論文投稿が筆頭者として直近5年以内で1回以上あること。
③ 所属する支部セミナーへの出席が直近5年以内で1回以上あること。(※2026年度申請分のみ救済措置として、2021年~2023年の間に学会セミナーを受講された方は、必須セミナーの項目条件をクリアしたこととする) - 専攻医研修カリキュラム登録システムへの登録と研修の修了 (登録必須)
施設の認定期間外または指導施設・指導連携施設以外で施行したものについては診療実績として認められません。 - 内視鏡診療実績については、下記a)またはb)パターンから選択可能とする。※選択方式については、医師免許取得年で区別せず共通とする。内視鏡診療実績についても、「専攻医カリキュラム登録システム」への登録後(4月1日以降)の実績のみ有効とする。
a) 指導施設・指導連携施設での実績 【上部1,000件、下部300件】
b) 指導施設・指導連携施設での実績 ① 診断:上部消化管 1点 / 1回、 ② 診断:下部消化管 5点 / 1回 ※①と②を合計して1,000点以上
《a) b)共通事項》
※治療内視鏡については、20例を選び、1例ごとに症例詳記を添付すること。
また、①切除術(ポリペクトミー・EMR・ESD)、②止血術、③狭窄拡張術・ステント挿入の3手技を必ず含むこと。部位は上部消化管・下部消化管どちらでも可だが、「専攻医カリキュラム登録システム」への登録後(4月1日以降)、指導施設または指導連携施設で施行したものに限る。
専攻医研修カリキュラム登録システムへの登録と研修の修了 (登録必須)
研修開始時期(カウント開始時期)については基本領域研修2年目以降とし、基本領域研修1年目修了時の3月中に「専攻医カリキュラム登録システム」への登録後、
4月1日より研修開始とし3年以上の研修修了後(達成率100%)に受験資格発生とする。
2015年以前医師免許取得者については「専攻医カリキュラム登録システム」への登録後、4月1日より研修開始とし達成率100%となった時点で申請可能とする。
2026年度(令和8年度)試験日程詳細
制度変更を踏まえた、現時点で判明しているスケジュールは以下の通りです。
| 2026年4月1日~6月末 | エントリー期間 |
| 2026年4月1日~7月末 | 申請書提出期間 |
| 2026年8月~(予定) | 受験会場予約期間 |
| 2026年11月29日(日) | 専門医試験 |
| 2027年1月下旬 | 試験結果発表 |
| 2027年2月中旬~ | 認定証送付 |
| 2027年4月1日 | 認定日(認定日初回のみ2月1日) |
試験の半年ほど前にエントリー期間・申請書提出期間があるため、申請し忘れがないようにリマインダーを設定しておきましょう。
また、受験会場の申し込みが8月からありますが、早いもの順なため、自分の希望受験場所を確実に予約しておきましょう。遠方の試験会場になってしまうと、試験直前に移動時間を要して体力を消費してしまう可能性があります。
合格率の推移と難化傾向
直近の合格率の遷移をみてみましょう。合格率は「合格数÷受験数×100%」としています。
| 申請年度 | 合格率 | 申請数 | 書類審査通過数 | 受験数 | 合格数 | 不合格数 |
| 2025 | 85.6% | 839 | 831 | 825 | 766 | 59 |
| 2024 | 96% | 918 | 907 | 897 | 861 | 36 |
| 2023 | 98.1% | 966 | 955 | 940 | 880 | 60 |
| 2022 | 87.2% | 1236 | 1036 | 1228 | 1071 | 165 |
| 2020/2021(*) | 75.2% | 1643 | 1639 | 1519 | 1143 | 376 |
2020年より以前は合格率が70%台でしたが、近年は85〜98%と合格率が増加しています。
しかし、2026年度からは申請基準が厳しくなり試験概要の転換期のため、合格率がどうなるかは未知数です。
【問題集・参考書選び】専門医取得の最短ルート
どの専門医試験でも同じですが、やはり過去問に取り組むのが一番確実です。そして、それと合わせて、確認用のしっかりした資料を手元に用意しておくのが鉄板の対策となります。
消化器内視鏡学会の専門医試験対策「専用」の教材は学会公式の過去問以外にないので、以下に紹介する問題集・参考書をどれだけやりこめるかで、合否の確率が変わってくるといえます。
「日本消化器内視鏡学会専門医学術試験問題 解答と解説 第5版」と最新の過去問取得方法
第5版は2021年出版とやや古めですが、学会公認の唯一の問題集です。そして、これ以外に専門医試験対策の問題集がないことから、この問題集は必須のものとなります。
各領域で漏れなく万遍なく掲載問題を編集・配分されており、典型的な疾患、所見等の写真については、解説文に説明を加えており、鑑別診断のパターン認識の勉強に役立つようにも配慮されています。
ちなみに第4版は2016年出版とさすがに古すぎるため、不要と思われます。
また、それ以降の過去問については学会ホームページから閲覧する方法があります。
学会ホームページの「専門医学術試験問題とその解説」のページから最新学会誌に掲載された問題は閲覧できますが、以前の号のものはできません。
しかし、Kalibを利用して学会誌のバックナンバーを見れば最近の過去問も見ることができます。時間のあるうちに数年分は取得しておきましょう。
Kalibの閲覧方法は「KaLib閲覧方法 和文誌電子書籍版/日本消化器内視鏡学会HP」に紹介してあります。
<2024/6/3発売>消化器内視鏡ハンドブック 改訂3版
消化器内視鏡学会公式の参考書で、試験対策のテキストとしてはこれが大本命です。2024年に7年ぶりに大幅改訂されています。
試験以外ではなかなか勉強する機会のない、内視鏡機器についてもしっかり解説されています。
診断・治療についても学会公式のものをフルカラーで見やすく解説してあります。この、「学会公式」というのが試験においては非常に大事です。この本に書いてあることが正解になります。
あやふやな知識や領域は、この参考書でしっかり固めておきましょう。
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<2025/3/24発売>消化器診療 最新ガイドライン 第5版 (ガイドライン(診療指針)シリーズ)
トレンド対策として最新のガイドラインには目を通しておきたいところですが、消化器関連のガイドラインは多数あり、全て収集するだけでも大変です。
この本は、消化器関連の主なガイドラインを集めて、それぞれの要点や改訂点をわかりやすく解説してくれています。
2025年3月24日発売と新しく、試験対策にもちょうどよい参考書となっています。
もちろん、試験終了後の実臨床でも使えるため、持っておいて損はない1冊でしょう。
<2024/10/21>美しい画像で見る内視鏡アトラス 上部・下部
内視鏡学会専門医試験では、画像診断の知識も必要になってきます。すでに他のアトラスを持っている方はそれで問題ないと思いますが、まだ持っていないという方は、手に入れておきましょう。
現在いくつかアトラスが各社から出版されていますが、最新のものはこのアトラスです。
本のタイトル通り美しく説得力のある画像が多数掲載されており、解説も最新のため、今回アトラスを検討中の方はこのシリーズにするのがおすすめです。
時間のある時にパラパラめくって画像診断の知識を深めましょう。
【Dr.ゆうのキャリア論】新専門医取得後の「次の一手」
制度が複雑化し、専門医取得のハードルは年々上がっています。だからこそ、苦労して取得した「消化器内視鏡専門医」の資格は、あなたの市場価値を大きく高めます。
私自身、専門医取得後にフリーランスへ転向し、時給単価を上げながら、家族との時間を確保する働き方を実現しました。
「まだ転職は先」という先生も、今のうちに「自分のエリアで、内視鏡専門医がいくらで募集されているか」を知っておくことは、将来の医局人事に対する強力な保険になります。
レジドクターでは、私自身の経験をもとに、「医師にとって本当に使いやすい転職サイト」をデータベース化しています。
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