概要
慢性硬膜下血腫は、軽微な頭部外傷後に硬膜下に血腫が貯留し、徐々に増大することで脳を圧迫し症状を呈する疾患である。
特に高齢者に多く、緩徐に進行する神経症状が特徴である。頭部CTで特徴的な三日月状の血腫を確認し、診断する。
疫学
- 高齢者に多く、特に75歳以上の男性に多発する。
- 軽微な頭部外傷後の3週間~3か月後に発症することが多い。
- 両側性に発症することもあり、全体の約10%を占める。
- 抗血栓療法を受けている患者やアルコール摂取者でリスクが高い。
身体所見・症状
- 頭痛:比較的初期に認められる。
- 認知機能障害:物忘れや性格変化がみられる。
- 神経巣症状:
片麻痺、運動障害
失語、構語障害
歩行障害
意識障害(進行例)
検査・診断
画像検査
頭部CT
- 硬膜下に三日月状の血腫が認められる。
- 等吸収~低吸収域が多く、内部に層構造や分画を認める場合がある。
- 正中偏位を伴うことが多い。
MRI
- T1強調画像で高信号、T2強調画像でも高信号域を呈する。
- CTよりも診断しやすい。
血液検査
- 肝機能障害や抗血栓薬の影響により、凝固異常がみられることがある。
合併症
- 再発:
術後5~10%で血腫の再貯留を認め、再手術が必要になる。 - 再発リスク因子:
残存血腫量が多い
頭部打撲を繰り返す
抗血栓薬服用中 - 脳ヘルニア:
血腫の増大による圧迫で不可逆的な神経損傷を引き起こす。
治療法
保存的治療
- 経過観察:無症状で血腫が小さい場合。
- 薬物療法:五苓散、柴苓湯の内服が有効な場合がある。
五苓散7.5g3×毎食前
外科的治療
穿頭血腫ドレナージ術(局所麻酔下)
- 頭皮を3cm程度切開。
- 頭蓋骨に1.5cm程度の穴を開ける。
- チューブを挿入し、血腫を除去。
- 術後1~2日間、ドレナージを継続。
- CTで血腫の減少を確認後、ドレナージチューブを抜去。
予後
- 手術によって神経症状は劇的に改善することが多い。
- 早期手術治療を行えば予後は良好。
- 再発の可能性があるため、術後も定期的な画像フォローが必要。
専門医へのコンサルト
- 頭部外傷後に緩徐進行性の神経症状を認める場合は、脳神経外科へのコンサルトが望ましい。
- 高齢者や抗血栓薬服用者では特に慎重に評価する。
帰してはいけない患者
- 頭部打撲後に麻痺や意識障害が徐々に進行している場合。
- CTで血腫による正中偏位や脳室圧排を認める場合。
メタディスクリプション
慢性硬膜下血腫は、高齢者に多くみられる頭部外傷後の遅発性出血。
緩徐に進行する神経症状が特徴で、頭部CTで診断し、穿頭血腫ドレナージ術で治療する。
予後は良好だが、再発に注意が必要。