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心房粗動(AFL)|症状・診断・治療

10秒サマリー

  • **病態:**右心房内を電気信号が大きく旋回(リエントリー)することで生じる頻拍。
  • **心電図:基線が「のこぎりの刃」のように規則正しく揺れる鋸歯状波(F波)**が特徴。
  • リスク:心房細動と同様に、心内血栓による脳梗塞のリスクがある。
  • **治療:**カテーテルアブレーションによる根治率が極めて高く(90%以上)、第一選択となる。

概要・疫学

心房粗動(AFL)は、心房内を電気が規則正しく回るリエントリー性頻拍である。最も頻度が高いのは、右心房の三尖弁輪周囲を反時計方向に旋回する「通常型(典型例)」である。心房の興奮回数は毎分250〜350回に達するが、房室結節でのフィルター作用により、心室には2:1や3:1といった一定の比率で伝導することが多い。

心房細動(AF)と合併しやすく、治療方針も共通点が多いが、AFLはAFに比べて規則正しく、かつアブレーションによる根治が容易であるという特徴がある。

症状・身体所見

  • **動悸:**規則正しい、あるいは伝導比率が変わる際の不規則な動悸。
  • **全身倦怠感・息切れ:**頻脈が持続することによる心拍出量の低下(頻脈誘発性心筋症の原因にもなる)。
  • **身体所見:**頸動脈の拍動が非常に速く、かつ規則正しく見えることがある。

初期検査・診断の進め方

診断は12誘導心電図での鋸歯状波の同定が決め手となる。

1. 12誘導心電図のポイント

  • **F波(鋸歯状波):**II、III、aVF誘導で下向きののこぎり刃状波形(通常型)を確認する。
  • **伝導比:**2:1伝導の場合、心拍数がちょうど150回/分程度で固定されることが多い。この場合、F波がQRSやT波に隠れて見えにくくなるため注意が必要である。

2. 鑑別診断

  • **心房細動(AF):**基線の揺れが不規則。
  • **発作性上室頻拍(PSVT):**P波の形態や出現タイミングが異なる。迷走神経刺激(バルサルバ法等)により、一過性に房室ブロックを増強させるとF波が顕在化し、鑑別しやすくなる。

専門医へのコンサル基準

  • 心電図でAFLを確認した全例(アブレーションで根治が期待できるため)。
  • 頻脈に伴う心不全症状や血圧低下を認める場合(至急)。

治療法・具体的な処方例

治療の3本柱は「血栓塞栓症の予防」「レートコントロール」「根治(アブレーション)」である。

1. 抗凝固療法

心房細動と同様の基準(CHADS2スコア等)でDOAC等の適応を判断する。AFL単独でも脳塞栓症のリスクはAFと同等と考えるべきである。

2. レートコントロール(急性期・慢性期)

房室結節の伝導を抑制して心拍数を下げる。

  • **β遮断薬:**ビソプロロール(メインテート)0.625mg〜5mg 1日1回。
  • **Ca拮抗薬:**ベラパミル(ワソラン)120mg〜240mg 1日3回分割。

3. カテーテルアブレーション(第一選択)

通常型AFLの場合、下大静脈と三尖弁輪の間の解剖学的狭部(イストムス)を焼灼することでリエントリー回路を遮断する。成功率は95%以上と極めて高く、再発も少ないため、薬物療法よりも優先して推奨される(クラスI)。

resi Dr.の眼(Pitfalls・匙加減)

  • **「150回/分の規則正しい頻脈」を見たらAFLを疑え:**QRSがnarrowで規則正しい場合、PSVTと誤認しやすいが、成人で150回前後なら2:1伝導のAFLである確率が高い。
  • **IC群薬による「1:1伝導」の恐怖:**AFの停止目的でIC群抗不整脈薬(フレカイニド等)を使用すると、心房回数が減少し、房室結節がすべての刺激を通してしまい、1:1伝導(心拍数200回以上)に移行して血行動態が悪化することがある。これを防ぐためにβ遮断薬の併用が必須である。
  • **AFLが治るとAFが出る?:**AFLのアブレーションに成功しても、背景に心房の変性がある症例では、後にAFを発症するリスクが残る。術後も定期的な心電図チェックが必要。

予後・患者説明のポイント

「心臓の中を電気がグルグル回っている状態です。アブレーションというカテーテル治療でほぼ確実に根治でき、将来の脳梗塞のリスクも減らせます」と前向きに説明する。

参考文献

  • 不整脈薬物治療ガイドライン(2020年改訂版)
  • 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン(2022年改訂版)
  • 2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療

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